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第395話「はい、良く聞く言葉で、『愛は金で買えない』と言いますが、全くの偽りですね」

「初めまして、ギルドマスター。リオネル・ロートレックです。何卒宜しくお願い致します」


歓迎の言葉に対し、無難に返したリオネルも、曖昧に微笑んだ。


アウグストは応接の長椅子をリオネルへ、勧める。


「まあ、リオネル君。そこへ座ってください。イクセルも補助いすへ座りなさい」


「失礼致します」

「はい、かしこまりました、マスター」


という事で、リオネルとアウグストは、長椅子に向かい合って座る。

秘書のイクセルは、離れた場所に置いた椅子に座った。


アウグストは、鋭い眼差しを投げかけながら、リオネルへ言う。

相変わらず、口元だけに笑みを浮かべている。


「ふむ、リオネル君の名は、当国アクィラは勿論、様々な国の冒険者達から噂で聞きました。若いのにとてつもなく強いと……しかし……」


「しかし?」


「はい、君はいち冒険者なのに、まるで領主のような仕事をしますね。労が多くて、その割に収益は大きくない。あまりにも非効率な仕事だと思いますよ」


「はあ……」


アウグストが言っているのは、以前リオネルが何度も依頼完遂し、

数多の人々の難儀を救った町村支援策の事であろう。


「今朝、冒険者ギルドのデータベースで、リオネル君の依頼完遂、戦闘記録は拝見させて頂きました」


「そうなんですか」


「はい、確かに君の戦歴は素晴らしい。レベル24には見合わない強敵を数多屠っている。そして討伐、依頼完遂に伴う大金も稼いでいる」


どうやら、昨日訪問の申し入れをした後……

訪問を聞いたアウグストは、事前にリオネルのデータベースを、

ひと通り閲覧したに違いない。


「ふむ、リオネル君。君はこのフォルミーカへ、一体何を求めて来たのですかね?」


「何を……ですか?」


「はい。君がこの迷宮へ潜り、得たいのは、金なのか、名誉なのか、まさか、己を鍛えて強くなりたい……とか?」


単刀直入に尋ねるアウグスト。

ここは、どう答えれば良いのだろう?


……リオネルは、『正直』に答える事にした。


「マスターのおっしゃる3点、全てですね」


「ははは、そう来ましたか、欲張りですね、君は」


「ええ、欲張りです。そもそも、ここまで上手くやって来れたのは、加えて、運も良かったんです」


「ほう、運ですか……成る程。確かに運は大事だ」


満足そうに頷くアウグスト。


「ふふふ、話を戻しますが、リオネル君の追い求めるものは、金、名誉、能力ですか。でも私が、優先順位をつけてあげますね」


「優先順位……ですか?」


「はい。二兎を追う者は一兎をも得ずですよ。リオネル君へは、ズバリ言いましょう。その3つの中で、最も大事なモノは、金なのですよ」


アウグストは、きっぱり言い切ると、面白そうに「にっ」と笑ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「マスターのお考えでは、金、名誉、能力のうち、最も大事なモノは、金ですか?」


リオネルが尋ねると、アウグストは大きく頷く。


「はい、リオネル君。金は、世間に存在するほとんどのモノが買えますよ。才能だって、金を惜しまなければ、己に眠る何かを発掘し、見出せるのではと私は思います。まあ……買えないのは、そうですね、自分の命、寿命くらいじゃないですかね」


「成る程。自分の命、寿命以外、金で世間に存在するほとんどのモノが買えますか?」


リオネルがアウグストの言葉を繰り返せば、

アウグストはまたも、きっぱりと言い放つ。


「はい、良く聞く言葉で、『愛は金で買えない』と言いますが、全くの偽りですね」


同意出来ない……と、思ったが、

リオネルは、とりあえず話を聞く事にした。


「そうですか」


「ええ、貧困はね、確実に人間の心を劣化させていくのですよ。金が無ければ、最後には生きるか、死ぬかという状態になる。そんな状況で、愛だのどうだの言っていられますか?」


「……厳しいかもしれませんね」


「はい、男でも女でも、金を持つ相手に目が向きます。金で『愛は潤う』と言った者がいますが、これも違う。潤うのではない、金で、愛を買い育てるのですよ」


「成る程……」


「時は金なりと言いますが、金で時間を買う事は出来る。自分がやる事を金を使って他人にやらせる事が出来ますから」


「はい。確かに」


「リオネル君が最後に言った『運』さえも、金を使えば、そう仕向ける事も出来ると私は思います」


アウグストの考えは、一理あり、正論の部分もある。

だがいかにも極端だし、ケースバイケースだろうと、リオネルは思う。


しかし、ここでリオネルは異を唱え、議論してもあまり意味がない。


そして、アウグストがこのような話をするのは、何か意図があると考えるのだ。


「という事で! リオネル君」


「はい」


「この世で一番大事な金を稼ぐ為、私と君で協力し合い、共存共栄でいきませんか?」


そう言ったアウグストは、再び、面白そうに「にっ」と笑ったのである。

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