第387話「お客様を連れて来た! 何と何と! ランクAの冒険者だよお! 」
自分の勤める宿へ、宿泊を求める、
20歳すぎくらいの美しい呼び込みの女性。
彼女から、邪な波動は感じられなかった。
念の為リオネルは、肩に座ったピクシーのジャンにも尋ねてみる。
『なあ、ジャン、どうだい、この人は?』
ジャンは呼び込みの女性を見て、にっこり。
リオネルへ、屈託のない笑顔を見せる。
『うん! リオネル様。この人、嘘は言ってないみたいだ。怪しくない、おいらは大丈夫だと思うよ』
『……ああ、俺もそう思う』
リオネルとジャンの会話は、肉声を使わない心と心の会話たる念話。
ジャンの姿も見えないようだから、不審がられる事はない。
リオネルは、改めて女性を見た。
身長は、160㎝半ばくらい。
プラチナブロンドの髪はそう長くなく、肩辺りまで伸び、目は切れ長で瞳はグレー。
鼻筋が通っていて、唇が小さい。
端麗な顔立ちで、やはり美人だ。
意外にも見える腕は筋肉があり、たくましく、鍛えたっぽい。
身のこなしも、隙が無い。
……何か武道の心得があるようだ。
腰からは、鞘に収まった短めの剣を提げている。
これは、護身用だろう。
女性を見て、ジャンがささやいて来る。
『リオネル様、この人、魔法を使わないけど、結構強いよ! まあ、リオネル様には全然及ばないけどさ』
『ああ、そうか、だから見ず知らずの俺を、フォルミーカの街の案内に誘えるんだな』
いろいろと納得したリオネル。
女性に話しかけてみる。
「あの、お姉さんの言う通り、俺、冒険者で、リオネル・ロートレックといいます。お部屋を見せて頂き、宿泊料金等を教えて貰えますか」
リオネルは一礼。
丁寧な物言いをし、問われる前に、自ら冒険者ギルドの所属登録証を見せた。
目を細め、リオネルの所属登録証を、食い入るように見る女性。
すると!
門番同様、女性の態度がガラリと変わる。
目を丸くして驚く。
「わおっ!! 君、ソヴァール王国の人? その若さで、ランクAの冒険者なのお!?」
「はい。ソヴァール王国の出身で、ランクAの冒険者です」
「すっご~い! 私はブレンダ・ビルト。母のダニエラと一緒に、フォルミーカで宿屋をやっているの」
呼び込みの女性は、ブレンダ・ビルトさん。
お母さんのダニエラさんと、このフォルミーカで宿屋を運営しているのか。
いい人そうだけど……もしも話が違うとか、行き違いがあったり、
無茶を言われたり、ヤバイ第三者が出て来たりして危ないようであれば、
すぐにフェードアウトすれば良い。
まあ、ちょうど宿探しもしていたし、何かの縁かも。
「じゃあ、連れてってください」
そう考えたリオネルは、ブレンダについて行く事にした。
「OK! ついて来て!」
Vサインを出すブレンダ。
そして、歩く事、約5分。
ブレンダに連れていかれた宿屋は、地上部分にあった。
2階建ての横長、白壁の建物である。
築10年は過ぎているだろう。
フォルミーカでは、地上より、迷宮に通じる地下街の宿の方が人気がある。
そうガイドブックには記載してあった。
だが、リオネルはこだわらない。
宿は仮住まいのつもりだし、落ち着いたら、一軒屋を探すつもりだからだ。
ブレンダは玄関から入る。
突き当りがカウンターであり、無人。
背後にカーテンがかかっていて、その奥が厨房らしい。
「ただいま! 母さん!」
ブレンダが声を張り上げると……少し間を置き、ブレンダに面影が似た、
恰幅の良い中年女性が、カーテンをかきわけ、現れる。
「ああ、お帰り、ブレンダ」
「お客様を連れて来た! 何と何と! ランクAの冒険者だよお! 部屋を見た上、条件を聞いて決めるってさ!」
「分かった! じゃあ、あんたが案内して、説明してあげて!」
「了解! 母さん!」
やはり、呼び込みをしていたブレンダ・ビルトは、単なるスタッフではなかった。
経営者らしき、恰幅の良い中年女性ダニエラの娘らしい。
「2階が客室になっているのよ」
ブレンダにいざなわれ、リオネルは2階へ上がり、部屋を見せて貰う。
2階は、同じような造りの個室が10室ほどあるらしい。
ブレンダは一番手前の部屋へ、リオネルを案内する。
扉には、1号室と書いた木札が取り付けられていた。
入った部屋は、個室で、約3.60メートル四方、約12㎡強くらい。
置かれているのは、大きめのシングルベッド、
小さなハンガー付きのタンスのみというシンプルな部屋だ。
リオネルが見るに、個室で鍵がかかって、安全。
清潔だし、結構広い。
ブレンダ曰はく、バス、トイレ付、朝夕の2食で銀貨7枚『7千円』だという。
宿へ来る前、ブレンダの言う、
「はあ~い、そこの冒険者さ~ん。ウチの宿へ泊まらない~? 格安、安全、清潔、料理は美味い! そして私みたいな可愛い美人スタッフまで! 3拍子どころか、5拍子そろった良宿だよお!」
格安、安全、清潔、美人スタッフはクリア。
後は料理だけだが、ブレンダの母ダニエラが詰める厨房からは、
とても良い匂いがしていた。
こちらも、多分、大丈夫だろう。
「ブレンダさん」
「はいよっ!」
「じゃあ、とりあえず3泊お願いします」
「まいどっ! ありがとうございまあす!」
リオネルの決定を聞いたブレンダ。
満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに声を張り上げたのである。
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