第385話「じゃあ、腕輪へ入るか? 快適に寝られる上に、安全だぞ」
高貴なる4界王のひとり、火界王パイモンから、
極大魔法を含む、大いなる火の加護、そして強靭なファイアドレイクを、
忠実なる従士として得たリオネル。
今の時点で、現状に満足したのだろう。
『では、さらばだ、リオネル。また、会おうぞ』
空中高く浮かんでいたパイモンはすっと、煙のように消え去った。
こうしてリオネルは、高貴なる4界王全てと邂逅した。
修行に励もうと、決意を新たにする一方、
気になるのは、英雄の迷宮最下層で邂逅した、ソヴァール王国建国の開祖、
アリスティド・ソヴァールである。
4界王と出会ったら、『英霊召喚』を行使し、同席させるよう言われていたが……
リオネルの現時点での実力では、アリスティドを召喚する事は不可能なのだ。
英雄の迷宮でアリスティドに邂逅し、30回以上、英霊召喚へ挑んでいるが……
いまだに成功した事がない。
補正が50あるとはいえ、リオネルの現レベルは24……
やはりレベル88のアリスティドを呼び出すには、レベルが低すぎる。
ちなみに、鳥の王ジズは推定レべル90オーバーなのは確実だが、
こちらは空気界王オリエンスの加護により、召喚レベルの縛りが解消されているとしか、考えられない。
「ごめんなさい、アリスティド・ソヴァール様。貴方の英霊召喚が可能となったら、必ず高貴なる4界王様にお引き合わせ致します」
手を合わせ、謝罪するリオネル。
そんなこんなで、パイモンと別れてから……
擬態したファイアドレイク……火とかげサラマンダーを連れたリオネルは、
「避難させていた」ピクシーのジャンを、収納の腕輪から、出した。
『リ、リオネル様! ファ、ファイアドレイクは!? た、た、戦ったの!? あ、あれ? サラマンダーが居る!』
尋ねるジャンに対し、リオネルは笑顔。
『ああ、いろいろあって戦った。それで結局、仲間になった』
『な、仲間に?』
『ああ、こいつがそうだ』
リオネルはジャンが浮かぶ反対側に浮かぶサラマンダーを指さした。
『え? こいつ? この小さなサラマンダーが? でっかいファイアドレイク……なの?』
『ああ、そうだ。擬態しているんだよ』
『擬態……って』
『こいつを街道へ送って来たのは、俺にけしかけたのは、こいつの元の主、火界王パイモン様だったんだ』
『え? 高貴なる4界王のひとり火界王パイモン様!? ひえええっ!! お、おいら、びっくりだよ!』
『ああ、いろいろあった後、俺はパイモン様から火の加護を授かり、こいつを与えられた。これから一緒に旅をする。ちょうど、この原野と周囲は無人だ。皆に、紹介しよう』
微笑んだリオネルはそう言い、ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟、鳥の王ジズ、
凍竜、アスプ6体、鋼鉄、岩石のゴーレムを各1体、
召喚または収納の腕輪から、次々に呼び出した。
そして、ジャンに話した事と同じ経緯を語り、ファイアドレイクを紹介するとともに、「ついでとばかり」たっぷりと連携の訓練を行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
迷宮都市フォルミーカから、さほど遠くない原野において、
連携訓練を行ったリオネル。
訓練終了後、ピクシーのジャン以外は、異界へ帰還。
もしくは収納の腕輪へ搬入。
街道へ転移し、旅を続ける。
転移したのは、次の目的地から約3kmの地点。
そこからゆっくり15分ほど歩き、リオネルは遂に遂に!
迷宮都市フォルミーカへ到着したのである。
時間は午後5時少し過ぎ……
これまでリオネルが旅して来た街同様、正門には、屈強な門番が数名、
入場者のチェックを行っていた。
入場を希望する旅人はこれまた他の街同様、修行中らしき若い騎士、商人、郵便配達人、巡礼の親子など、様々な職業かつ出で立ちの者が、数列に別れ、並んでいる。
やはり人数が多くて目立つのが、革鎧に身を固めた冒険者だ。
右肩にジャンを座らせた革鎧姿のリオネルも、その列のひとつに並ぶ。
すかさずジャンが話しかけて来る。
ピクシーたるジャンの姿は、常人には見えないし、会話は心と心で話す念話。
話していても、周囲の者が訝しがる事はない。
『リオネル様』
『何だい?』
『おいら、生まれてから一度も、迷宮に潜った事がない。魔物は怖いし、暗くて狭い場所は苦手なんだ』
『そうか。もしも迷宮が苦手だったら、さっきみたいにするか?』
『さっきみたいって?』
『ああ、収納の腕輪さ』
リオネルが言うと、ジャンは、
『リオネル様の空間魔法って、収納の腕輪かあ……』
と言い、更に話を続ける。
『おいら、収納の腕輪に入ったら、眠くなって寝ちゃった。さっき外へ出して貰った時、目が覚めた。魔法のせいか分からないけど、気分が良くて、爽快な目覚めだったよ』
と、にっこり。
それではと、リオネル。
『だったら迷宮探索中は、ジャンは腕輪へ入るか? 快適に寝られる上に、安全だぞ』
ジャンの安全を考えたリオネルの提案。
しかし、ジャンは首を振る。
『いやいや、入らない。おいら、リオネル様の為に働く。自分の役目を果たすよ』
……そうこうしているうちに、リオネルの順番が来た。
リオネルは冒険者ギルドの所属登録証を提示する。
燦然と輝くランクAの文字を見た門番は、18歳のリオネルを見直し、
「ほう」と感嘆のため息を吐いたのである。
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