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第383話「確かに……そうです」

ファイアドレイクが悲鳴をあげ、もがいた。


リオネルが行使した地属性の究極支援魔法『大地の束縛』の効果だ。


そのまま、ファイアドレイクは行動不能となり、身体は縛られ、動けない。


しかし、リオネルは攻撃に転じず。


動けないファイアドレイクを見守り、柔らかく微笑んだ。


微笑みながら……リオネルは、つらつらと考える。


授けてくれた地の最上級精霊ティエラは教えてくれた。


『大地の束縛』の効能効果は、高位レべルの相手に対しては、長時間持続しない。


古文書によれば、火竜ファイアドレイクの想定レベルは70以上……


どちらにしても自分の持つスキル『フリーズハイ』はほぼ効果がない。

補正の40があっても、リオネルはレベル24……70には届かない。


そしてもっと重要なのは、パイモンが告げる、

「私が望む落としどころ」という言葉だ。


この言葉が、もしもリオネルの想像通りだとしたら、

リオネルは、ファイアドレイクを倒し、命を奪ってはならない。

致命傷となるような大ダメージを与えてもいけない。


で、あれば!


ファイアドレイクが動けないうちに、身体活動能力が低下するように仕向ける!


普段の修行の成果を試してやる!


「ふっ」と笑ったリオネル。


『絶対零度!』


そう!

リオネルが発動したのは、水属性の極大攻撃魔法『絶対零度』

氷結の数十倍の効果効能を持つ、全ての物体を究極に凍らせる攻撃魔法だ。


『ほう! 絶対零度で、ファイアドレイクを凍らせ、砕け散らせるか?』


『…………………』


『む? 変だぞ』


宙に浮かぶパイモンは首を傾げる。


『これは……絶対零度ではない!』


『…………………』


『冷気の有効範囲が、私の居る場所まで来ない! ファイアドレイクの周囲のみ!? 凍結温度も、全然並みのレベルだ』


『はい、パイモン様。その通りです』


リオネルの魔法で、

ファイアドレイクの周囲の大気温度が、急激に低下した。


しかし!

『完全な絶対零度』ではない。

瞬時に凍結し、砕け散るレベルではないのだ。


もがいていたファイアドレイクの動きが、更に鈍くなって行く。


『これでは絶対零度の劣化バージョン。せいぜい、ファイアドレイクを活動停止……まるで動物の冬眠状態にするのが関の山だ!』


驚き、叫ぶように言うパイモン。


対してリオネルは笑顔。


『はい、上手く行くかどうか、半信半疑でしたが、大丈夫だったようです』


そして、満足そうに大きく頷いていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルがファイアドレイクを冬眠状態にするのを、

厳しい眼差しで見ていたパイモンであったが……


『ははははははははははははは!!!!!』


と、大笑いした。


対して、リオネルは無言である。


『…………………』


『ふふふ、リオネルよ。見事に落としどころを作った。私が望んだ通りだ』


『パイモン様のご希望に応える事が出来て、良かったです』


『うむ、お前は私の出した課題を完璧にクリアした。よって! 火の加護を与えよう!』


『ありがとうございます! 嬉しいです!』


『ふむ。これでお前は4大精霊、全ての加護を受ける事となる。これまで、世に存在した、全属性魔法使用者(オールラウンダー)の中では初めてとなる!』


『初めて……ですか?』


『うむ! 精霊の嗜好、価値観はそれぞれ違う。全ての属性魔法が使用可能な全属性魔法使用者(オールラウンダー)であったとしても、全ての精霊に慕われ、加護を受けられるかは、また別の話なのだ』


『そうなのですか』


『ふふ、人間もそうであろう。全ての人間が折り合い、心の絆を結び、慈しみ合うのがどれほど困難か、お前にも心におぼえがあるだろうよ』


『確かに……そうです』


リオネルは、パイモンの言葉に同意し、自分の父、兄ふたりの事を思い出した。


たとえ血を分けていたとしても、彼らは一方的にリオネルを蔑み、

終いには、追放した。


裏では通じているように感じる精霊もそうなのだろうか?


つらつら考えるリオネル。


『リオネルよ』


『はい』


『お前は授かった属性の極大魔法を使いこなすどころか、見事に複合までして見せた。素晴らしいぞ!』


『ありがとうございます』


『私もお前には火の加護だけでなく、『爆炎』『火炎全無効』という極大魔法を授けよう』


『嬉しいです! 重ね重ねありがとうございます!』


『うむ! 爆炎は全てを焼き尽くし、火炎全無効は、全ての火属性攻撃を無効化する最強の防御魔法だ。極大攻撃魔法「爆炎」さえも退け、無効化するぞ!』


パイモンから、とんでもない魔法を授かったリオネル。


しかし、これで終わりではなかった。


リオネルの想像が当たったのだ。


『更に、このファイアドレイクを従士として授けよう。炎弾を撃ち込み、起こしてやるがよい』


『はい』


リオネルは頷き、冷気で眠っている?ファイアドレイクへ、


ばしゅ! ばしゅ!


と、気付けの炎弾を撃ち込んだのである。

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