第380話「やっぱり送った奴の意思…… 俺に対する足止めかよ」
ぐはあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!
身構えながら、つらつら考えるリオネルへ向かい、
ファイアドレイクは凄まじい咆哮を放った。
結構なプレッシャーが、リオネルの心身を襲う。
しかし、リオネルはものともしない。
普段の訓練時に、ケルベロス、オルトロス、ジズの咆哮を聞き、
耐性が出来ていたからだ。
そして、リオネルは肉眼で、背に翼が生えた巨大なファイアドレイクを見ても、
全然平気だ。
これも同じ。
リオネルは、ケルベロス、オルトロス、ジズの本来の姿も目の当たりにしている。
なので、視覚的な恐怖も感じない。
臆さないリオネルは、冷静に考える。
まずは、肩にしがみつき震えているジャンを安全な場所へ移そうと。
『おい、ジャン。お前を、俺の空間魔法で避難させるぞ』
『へ!?』
『ごめんな! 説明は後だ』
搬入!
リオネルが念じると、ジャンの姿は煙のように消えた。
収納の腕輪へ吸い込まれたのだ。
これで心置きなく、戦える。
リオネルは、既に呼吸法を使い、体内魔力を充分に上げている。
すぐに魔法を行使出来るように。
もしかして、こいつ、例の原野に棲むファイアドレイクか?
そのファイアドレイクを、何者かが転移魔法で送ったのか?
こいつ自身が飛べるのに、転移魔法でわざわざ?
それも俺だけで、他者が居ない時、この街道へはかったように?
送って来たのか?
ファイアドレイクと俺は何のかかわりもないし。
凄く不自然じゃないのか?
リオネルは、ピンと来た。
もしや……
俺に対する足止めか?
気になったリオネルは、現在地から約10km離れた原野を探ってみた。
案の定、先ほどまで魔力感知で認識していたファイアドレイクの気配はない。
リオネルの想像は当たっているようだ。
よし!
やっぱり!
こいつが例の奴か。
じゃあ、元居た場所……原野へ送り返してやる!
被害を被る人間の気配もないしな。
こんな奴、やっぱり受け取り拒否!
つまり、返品だ!
それに俺は親切だから、一緒に返しに行ってやるよ!
お前の発送主の下へ!
今までリオネルは、転移魔法で大きな物体を送る訓練も重ねており、
ほとんど成功していた。
但し、ファイアドレイクは体長20m以上、体高10m以上、
ここまで、大きな『荷物』は送った事がない。
しかし、リオネルに不安はない。
人々が往来する街道に、怖ろしいファイアドレイクを置いて、
自分だけ移動する選択肢は完全にナシからだ!
やがて体内魔力は充分に満ちた。
転移先の座標良し!
人間なし!
『転移!』
瞬間!!!
すいっと、リオネルとファイアドレイクの巨体は、
先ほどのジャン同様、街道上から煙のように消え去っていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
約3秒後、リオネルとファイアドレイクの姿は、
街道から約10km離れた『原野』へ現れた。
同時に、リオネルは後方100mへ後退。
距離を取った。
改めてファイアドレイクの様子をうかがう。
現れた街道上から、リオネルの転移魔法で送られたファイアドレイクだが、
不思議な事に、リオネルへ襲いかかる気配はない。
ぐはあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!
ただただ、リオネルを脅すように咆哮するだけだ。
成る程。
こいつ、自分の意思で人間の街道上へ送られたんじゃないな。
それに、俺にも襲いかかって来ないところを見ると、尚更だ。
やっぱり送った奴の意思……
俺に対する足止めかよ。
まあ、良いや。
せっかくだから、ファイアドレイクの姿をしっかりと見せて貰おう。
リオネルがたぐる記憶を、ここで補足しよう。
ファイアドレイクの名前の由来は、
火の息と、全身が火炎に包まれている。その姿に由来している。
一説によれば、ファイアドレイクは、
熱い雲と冷たい雲の交わりによって生まれる火属性の魔族だという。
自在に空を飛び、降下する際に、地上が昼間のように明るくなるとも伝えられる。
ファイアドレイクの武器は、当然、灼熱の火の息だ。
最も恐ろしいのは、巨大な翼の風圧と、
全身から湧き出る猛炎で巻き起こす特殊攻撃『炎の嵐』だという。
そして!
ファイアドレイクの中でも上位に在る者は、
高貴なる4界王のひとり、パイモンの眷属だと、古文書には記載されていた。
という事は、俺を足止めしたのは、火界王パイモンか?
つらつら考えるリオネル。
と、その瞬間!
『その通り。地、風、水、3つの精霊に加護を受けた、偉大なる全属性魔法使用者! リオネル・ロートレックよ!』
リオネルの心に、まるで考えを読み取るが如く、聞き覚えのない男性の声が響いた。
更に!
ぴいいいいいいいいん!!!
リオネルの前の大気が、異音をたて、
ぱきぱきぱきぱきぱきぱき!
と不自然に裂け、現世とは全く違う、異質な空間が現れた。
その空間からは、何と!
眩く輝く蒼い光球が出現。
この光球は……
現世と違う異界から、人外が現れる際に使う、『異界門』である。
そして、いつの間にか……
原野には、荘厳なオーケストラの演奏が、大音量で鳴り響いていたのである。
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