第371話「切々と流れて来る楽団の演奏は、リオネルの心を大きく震わせる」
街道から、転移魔法で跳び、少し歩いた午後5時少し前……
リオネルは、ソヴァール王国と、隣国アクィラ王国との国境付近にある町、
レ・ワイズの正門にて、入場手続きを行っていた。
まあ、入場手続きといっても、煩雑なものではない。
冒険者ギルドの所属登録証を提示し、屈強な門番に身元を確認して貰い、入場税を支払うだけだ。
ちなみに国境を越え、アクィラ王国へ入国する際も同様である。
それくらい冒険者ギルドの所属登録証は、身分証明書としての効力を持っている。
世界各地に支部を持つワールドワイドな組織として、知られているのだ。
しかし、時間が時間。
ギルドマスターへ面会を求めたり、担当者を呼び、情報収集をするには、遅すぎるし、間が悪い。
依頼を完遂した冒険者が押し寄せる『ラッシュタイム』な事もあり、
リオネルは、冒険者ギルドの位置のみ確かめる事にした。
その後に、今夜泊まる宿を探すのだ。
リオネルがレ・ワイズの街中へ入ると、
様式の違う建物が混在した風景が、視界に飛び込んで来る。
行きかう人々の服装も、見慣れないデザインがちらほら見受けられる。
居酒屋からは、生演奏らしい異国情緒たっぷりな聞き慣れない音楽も聞こえて来る。
店内へ入り、食事と音楽を楽しみたい欲求を抑え、リオネルは歩いて行く。
レ・ワイズもいろいろな施設がある中央広場を中心に、数多の通りが放射線状に延びる構造の街だ。
その通りに仕切られるような形で、身分、職業などをベースとした、
様々な特色ある街区が形成されている。
冒険者ギルドの支部も、中央広場の最寄りにあった。
王都オルドル、ワレバットの総本部に比べれば、規模が劣るのは否めないが、
5階建ての本館、3階建ての別棟が2棟、作業棟を擁するレ・ワイズの支部も相当な威容を誇る。
「へえ、思っていたより、凄いな」
国境を越え、フォルミーカへ赴き、大迷宮へ潜るという目的が無ければ、
レ・ワイズでしばらく冒険者として仕事をしても良いと思うくらいだ。
だが、このレ・ワイズは旅の途中で、通り過ぎるだけの街。
人生という旅の中で、出会い、単なる知り合いに過ぎないと存在して、
別れてしまう相手と同じ。
「よし、じゃあ、宿を探そう」
既に旅慣れたリオネルは、泊まる宿の基準は決めている。
高からず、安からず、安全で清潔な宿。
気持ちの良い接客で、放つ波動に邪さがない事。
そして、肝心の予算は分相応に、MAX金貨1枚まで。
宿屋が連なる通りはすぐに見つかった。
通りを歩いたリオネルは、数軒をあたり、
自分の希望に沿った今夜の宿を決めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
宿を決めたリオネルは、再び街中へ。
先ほど、生演奏らしい異国情緒たっぷりな聞き慣れない音楽が流れていた居酒屋へ。
先ほど聞こえていた音楽は流れていなかった。
入り口から、ちら見した限りでは、食事も出来そうな雰囲気の店なので、
期待を持ってイン!
「いらっしゃいませ!」
入店したリオネルの姿を認め、店の若い女子スタッフがすすすっと近づいた。
民族衣装っぽい可愛い制服を着用している。
ふと、もしもミリアンが着たら、似合うかもしれないと思ってしまう。
「ひとりだ」と伝えると、カウンター席へ案内される。
メニューを見て、飲み物はジョッキのエールを。
そして、食べた事のない料理をいくつか頼んだ。
豚肉、魚、じゃがいもを使った料理が多い。
聞けば、アクィラ王国の料理だとスタッフは言う。
まず先に冷えたジョッキのエールが運ばれ、リオネルがのどを潤していると、
片隅のステージに、これまた民族衣装を着用した楽団が登場。
演奏を開始した。
先ほど、生演奏していた楽団らしい。
楽団の奏者が使っているのは、
ホイッスル、フルート、ハープ、バイオリン、バグパイプ、そして数種の打楽器。
切々と流れて来る楽団の演奏は、リオネルの心を大きく震わせる。
そうこうしているうちに、次々と頼んだ料理が運ばれて来た。
リオネルがオーダーしたのは、
ミートボール、レバーソースがかかったチーズオムレツ、サーモンのムニエル、
干しタラの煮込み、そしてポテトサラダなどだ。
料理を待つ間に飲み終わってしまったので、
エールのお代わりを頼み、料理をぱくつく。
お代わりのエールはすぐに運ばれた。
美味い!
どんどん食える!
元々、リオネルは好き嫌いがほとんどない。
あっさりと完食した。
頼んだ料理を全て気に入ったし、レパートリーに加えたいが、
レシピを少し聞きにくい雰囲気である。
まあ、先は長い。
無理をせずとも、アクィラ王国へ入国した後で、また機会があるだろう。
これからどんな人に出会うのだろうか……
そしてフォルミーカでは、どんな事が起こるのだろう……
心地よい音楽に浸りながら、リオネルは遠き地へ思いをはせていたのである。
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