第361話「気が付けば、リオネルは全く見覚えのない、知らない街に立っていた」
何と何と!
湖面に踏み入れたリオネルの足は沈まないのだ……
そのまま、ひたひたひたと、マイムの下へ向かい、
リオネルは蒼き湖面を歩いていた。
一方、マイムは得意満面。
えっへん!という擬音が聞こえて来るようだ。
『うふふふ♡ リオネル君、どうお? 私の加護は?』
『はい! 素敵ですね』
『でしょ! うふ、水面を歩いたり走れるだけじゃないわ。水中に潜っても、全然、息が苦しくならないし、とんでもないスピードで泳ぐ事も可能よ』
『へえ! 凄いですね! 素晴らしいです!』
リオネルは素直に喜んだ。
今後、水関係で行く手を阻むものがあっても、楽勝でクリア出来る。
『アリトン様が与える強大な加護には遠く及ばないけれど、こういうのが、水の精霊ウンディーネが与える事の出来る水の加護なのよ』
『ありがとうございます! 感謝して使わせて頂きます』
『うふふふふ♡ でもね! 何度も言うけど、アリトン様がお授けになる水の加護はこんなものじゃない、桁違いなものよ。さあ、リオネル君、私の後について来て!』
『了解っす!』
すい~っと湖面を飛んでゆくマイム。
その後を歩き、ついてゆくリオネル。
ふたりは湖のちょうど真ん中へやって来た。
『じゃあ! この真下、湖底を見て貰えるっかなあ!』
『はい、見ます』
マイムの言葉に従い、リオネルは湖底を見た。
蒼き湖の透明度は極めて高く、底の底まで見通せる。
風もなくさざめく波もないから、ちょうどよい。
『あ!』
リオネルの視界に、街のようなものがはっきりと見えた。
あの街が『水宮城』であろうか?
しかし、何か違和感がある。
上手く言葉では表現出来ないが、リアルさに欠けるのだ。
どうやら……
湖底に街があるのではなく、異界とつながっているのかもしれない。
フォルミーカへの街道脇と、風の精霊の境地『風の谷』がつながっているように。
リオネルは言う。
『マイム様』
『ん? なあに、リオネル君』
『もしかして、あの街が水宮城ですか?』
リオネルが尋ねると、マイムはVサインを突き出す。
『ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン! 大当たりぃぃ!!』
『あはは……』
お約束という感じだから、そこまで褒めたたえなくとも……
と、リオネルは苦笑した。
そして水宮城が現世ではなく、異界にあるのではという推測も伝えない。
異界にある事が『当たり前』と思っておけばよい。
『うふふ、じゃあ行こうか、リオネル君。ちなみにさ、降下、浮上の言霊で、水中と水面を、自在に移動出来るからね♡』
『了解でっす!』
良い事を教えて貰った。
微笑むリオネル。
『よし! じゃあ! 行っくよ~!』
『はい!』
『『降下!!!』』
マイム、リオネルの口から降下の言霊が告げられ……
ふたりの姿は、水中へ消えたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
マイムとリオネルは静かに水中を降下して行く……
同時にリオネルはマイムが授けてくれた『水の加護』を実感していた。
水中でも呼吸が可能だ。
全く苦しくないのだ。
水中は沈黙の世界……
だからこそ、心と心の会話……念話が役に立つ。
マイムが、話しかけて来る。
『リオネル君』
『はい』
『まもなく、水宮城へ到着するよ』
『はい』
『似たような経験をしているかもしれないけど……水宮城へ入る際は、少し感覚が変わるからね』
意味深な事を言うマイム。
『了解です』
やっぱり!
と思う。
風の精霊、シルフのリーアに誘われた『風の谷』でも現世から足を踏み入れる際、
不思議な感覚にとらわれたからだ。
思った通り、水宮城は現世には存在せず、魔法結界か何かに守られた異界にある。
つらつら考えるリオネル。
やがて……
眼下に大きな街が見えて来た。
しかし、街全体が、半透明の白い壁に覆われ、中の様子ははっきりとはしない。
『よし! 水宮城へ入るよ! そのまま降下して!』
瞬間!
不可思議な感覚がリオネルを襲った。
平衡感覚が失われる!
はっきりと言葉で表せない感覚としか言いようがない。
『!!!!』
気が付けば、リオネルは全く見覚えのない、知らない街に立っていた。
周囲には、マイムと同じ、
水色のヴェールをまとった美しい少女……
数多のウンディーネ達が、ふわふわと浮かんでいたのである。
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