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第330話「貴方にも、今私が使ったのと同じ、大地の力を授けた」

『はあ~い、リオ! 地の魔法をガンガン使ってくれて、嬉しいわあ』


と聞き覚えのある声が、リオネルの心に響いた。


響いたのは、心と心の会話……念話である。


そしてこの声は、忘れるわけがない!

忘れられるはずもない!


すかさずリオネルも念話へ切り替える。


『ティエラ様!』


すると!

リオネルが地の魔法で生成したばかりの岩壁の上に、栗色の肩までの髪、褐色の肌をした、身長150cmくらいの、10代前半とおぼしき少女が立っていた。


複雑な刺繍(ししゅう)が施された、茶色の革鎧をまとう、

可憐で愛くるしい顔立ちの少女である。


そう!

現れた可憐な少女は、人間ではない!


高貴なる4界王のひとり地界王アマイモンの愛娘、

地の最上級精霊のティエラであった。


とある村の農地にて、転移魔法の訓練中に邂逅して以来、久々の再会である。


ティエラはニコニコ笑い、手をぶんぶん打ち振る。


『やっほ~! おっひさあ! リオ!』


相変わらずティエラは明るく朗らかだ。

花にたとえるならば、真夏に太陽の光をいっぱいに浴び、

咲き誇るひまわり、そのものだ。


ティエラの笑顔を見て、リオネルは気持ちが明るくなり、活力も湧いて来る。


しかしリオネルは冷静に言う。


『いやいや、ティエラ様。おひさは良いですけど、高い岩壁の上に立って、そんなに大きく手を振ったら周囲に目立ちますって』


リオネルの懸念は(もっと)もである。


しかし、ティエラが気にする様子はない。


『あはは! だいじょうぶい!』


『いやあ、だいじょうぶいじゃないっすよ! ティエラ様はえらく目立ちますって! みんなびっくりしますよ』


『い~の、い~の、ノープロブレム! リオにしか、私の姿が見えないように、上位隠形の魔法を行使しているから。他の人間に私の姿は見えないも~ん』


何と!

ティエラは上位隠形の魔法を使い、自身の姿をリオネルにしか見えないようにしていたのだ。


『成る程! 任意の相手のみ、姿が見える上位隠形の魔法ですか? ティエラ様はさすがですね。俺もいずれ習得したいですよ』


『うふふ、コツさえ分かれば、リオなら速攻で習得出来るわ! 今度教えてあげるね!』


上位隠形の魔法はいろいろ役に立ちそうだ。

リオネルの向学心が刺激される。


『そうですか! ぜひ!』


『でもさ! リオ! 今は貴方が請け負っている仕事を遂行するのが先でしょ?』


『今、請け負っている……この果樹園の復興ですか?』


『ええ! この果樹園を私の加護で蘇えらせ、活力を与える方が先!』


『え? 果樹園をティエラ様の加護で蘇えらせ、活力を与える方が先って! そんな事が出来るんですか?』


『楽勝だって! 私の父、アマイモンは植物の繁茂も司るのよ』


『成る程!』


『だから! アマイモンの娘で地母神を目指す見習いの私でも、この果樹園の復活くらいは造作もないわ』


願ってもない話である。

ゴブリンどもに荒らされた木々の世話をし、雑草を除き、肥料をやり、水を与え、

外敵が入って来ないように防ぐまでは人間の手で行える。


しかし、それ以上の効果効能を与える事は出来ないからだ。


『ティエラ様! それ、ぜひお願い致します! もしも果樹園が復活し、果実が実れば、このレサン村は立ち直り、再び歩き出す事が出来るんです』


身を乗り出して、ティエラにせがむリオネル。


そんなリオネルを見て、ティエラは微笑む。


『リオ』


『は、はい』


『私ティエラには分かる。……貴方の優しい気持ちが、深い思いやりが伝わって来るわ』


『………………』


『貴方の切なる願いは、果樹園を復興させ村民達を救うだけじゃない。……大好きだった亡き兄を想い、レサン村を守ろうと頑張って来たあの娘エリーゼの為、そしてその兄の面影を重ねられ、エリーゼに慕われる貴方の親友ジェロームの為……ね』

 

『………………』


『ふたりの仲が上手く行かないかと、さりげなくいろいろとフォローしてたわよね』


『………………』


『裏方として、ふたりの仲を取り持つなんて、余計なおせっかいかと迷う気持ちも貴方にはある』


『………………』


『でも! エリーゼとジェローム、寄り添うふたつの魂の距離がもっともっと縮まって欲しいんでしょ?』


『………………』


ティエラ様の指摘に対し、リオネルは無言で返した。


対して、更に柔らかく微笑むティエラ。


『うふふ♡ 沈黙は肯定の(あかし)……可愛いリオ、貴方の願いを叶えましょう』


『………………』


『……我が愛しき大地の子らよ!』


『………………』


『地の管轄者ティエラが大いなる加護を与えよう! 汝らに、(めぐみ)よ、あれ!』


汝らに、(めぐみ)よ、あれ!


ティエラがそう言った瞬間!!

果樹園全体が眩い白光に包まれる!!


な、何だっ!!??

な、何が起こったのぉ!!??


おおおおっ!!??

ああああっ!!??


まばゆい白光に包まれ、あちこちから驚き戸惑う声、小さな悲鳴が上がる中、

リオネルの心へ、ティエラの声が聞こえて来る……


『リオ、これでこの果樹園は地の加護を得て、以前の数倍、力強く蘇える!』


リオネルには分かる。

果樹園は不可思議な力強い魔力で包まれている。

ティエラは、リオネルの願いを聞き入れ叶え、地の加護を授けてくれたのだ。


レサン村の村民達が真摯に世話をすれば、彼らの暮らしを支えてくれるに違いない。


『ティエラ様! ありがとうございます!』


リオネルが礼を言うと、ティエラはいたずらっぽく笑う。


『うふふ、果樹園はだいじょうぶい! 但し! エリーゼとジェロームが上手く行くかどうかは、分からないよ♡』


縁結びの確約は出来ないというティエラ。

しかし、リオネルは首を振る。


『いえ、充分です。陰ながらやれる事はしましたし、後はふたり次第ですよ』


『そうね! 最後は本人同士の問題……だものね!』


『です!』


『リオ、この後、農地の復興も行うんでしょ?』


『はい』


『貴方は、今までいくつもの農地を見事に復興させた。だからご褒美をあげたわ♡』


『ご褒美ですか?』


『うん! 貴方にも、今私が使ったのと同じ、大地の力を授けた。ぜひ役立てて頂戴……また会いましょうね』


果樹園とリオネルに大いなる加護を与え……ティエラは去った。

発光が収まると、彼女の姿は消えていたのである。

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