第312話「お疲れさん」
翌朝……
村長以下、喜びに満ちあふれる大勢の村民に、これまた大歓声で見送られ、
リオネルとジェロームは、ワレバットへの帰途についた。
天気は今日も快晴。
頭上に広がった大空には雲ひとつない。
さわやかな風が、ほおをなでる。
リオネルとジェロームを乗せた馬車は、村道から街道へ入り、ワレバットへと走る。
御者台に座り、御者役を務めるのはリオネル、
隣には、ジェロームが座っていた。
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
元気に馬車を牽ひく馬のひずめが、車輪の音が、のんびり響く。
いつもながら、とても平和で牧歌的だ。
砦のオーク討伐、農地復興と仕事が万事上手く行き、
ふたりは晴れやかな笑みを浮かべている。
ワレバットに戻り、冒険者ギルド総本部にて、依頼完遂の報告を行い、
オークの討伐褒賞金とともに、受け取るのが楽しみでならない。
既にふたりは、農地復興の作業料、金貨300枚を村長から受け取っていた。
話し合いの結果、リオネルが200枚、ジェロームが100枚を受け取る事となった。
自分の働きの割に、100枚では受け取りが多すぎると、ジェロームは固辞した。
だが、リオネルは、将来への『期待料』だと言い、金額を変更しなかった。
馬車に揺られながら、ジェロームが呼びかける。
先ほどからずっと、リオネルの手綱さばきを観察していた。
「おい、リオネル」
「何だ、ジェローム」
ジェロームは満面の笑みを浮かべている。
「すっごい達成感だよ! 何度ありがとうって言われたか、数えきれない! 今回、この依頼を受けて良かった! お前が俺を導いてくれて本当に感謝してる!」
「そうか。ジェロームが前向きになってくれたなら、俺は嬉しいよ」
「ああ、前向きになってる! そして、燃えてるぜ! お前のようにいろいろ出来るようになりたいもの! 御者の練習だって、絶対にやるからな! 乗馬の練習もガンガンやって、今より、もっと上手くなるんだ! 何せ、元騎士だからな!」
「おう! 頑張れ!」
「ああ、頑張る! でも俺達さ、幸先良いって言うか、絶好調だな!」
「うん、確かに出だしは良いな。だが……」
「だが? 何だよ、リオネル」
「ああ、勝って兜の緒を締めよ、油断大敵、好事魔多しだ」
リオネルが告げたのは、慢心を戒めることわざばかり。
ジェロームは、うんうんと、笑顔で頷く。
「了解! 注意を少しでも怠れば、思わぬ失敗を招く。だから、十分に気をつけるべきであるという戒めか!」
「おお、その通りだ」
同意したリオネルに、ジェロームは問う。
「あはは、でもさ、リオネルは、そんなにことわざ好きなのか?」
「まあな! それに俺はぼっちの時、ひとりごとって言うか、ことわざを自問自答して、気持ちを引き締めているんだ。リスク軽減の為にな」
「おお! ことわざを自分に言い聞かせ、気持ちを引き締めてリスク軽減か! そりゃいい! 成る程! 納得だ! 俺も真似しよう!」
リオネルが、自身を引き締める独特の方法を聞き、ジェロームはまたも同意し、
試してみようと決めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朝早く村を出たので、午後早めにワレバットに到着したリオネルとジェローム。
一旦、リオネルの自宅へ戻り、荷物を降ろし、風呂に入ってさっぱり。
それから再び、馬車に乗り、レンタル馬車屋へ。
差額の使用料金を支払い、馬車を返却すると、冒険者ギルド総本部へ。
早速、依頼完遂の報告をし、報奨金の精算、支払い手続きをして貰うのだ。
リオネルとジェロームはギルドの食堂で、遅い昼食をようやく摂り、
1階フロアの受付へ。
受付の職員へリオネルがランクAの所属登録証を見せ、来訪の趣旨を告げると、
やがて業務担当の職員がやって来て、応接室へ案内してくれた。
リオネルは村長の完遂確認サインが記載された依頼書を職員へ渡す。
サイン入りの依頼書を念入りに見た職員はにっこり。
だが、オークどもの首魁が最強上位種オークキングで、
準最強上位種オークジェネラルまでも呼び出されたと聞き、
笑顔だった職員は大いにびっくりしてしまった。
良きタイミングと感じたリオネルは、村からの直接依頼で、農地の復興も行い、
料金は金貨300枚で、既に受け取ったと告げておく。
確認が全て終わったので、褒賞金が支払われる事に。
リオネルに依頼の完遂金、金貨800枚が。
そしてオークキング以下の討伐報奨金他1200枚余りが合わせて支払われ、
計2,000枚プラスアルファを受け取った。
続いてジェロームが、オーク上位種他の討伐報奨金、金貨400枚余りを受け取った。
かさばらないよう、報奨金支払いの新システムを活用。
手持ち用の現金だけ受け取り、残りは所属登録証にプールしたのは言うまでもない。
受け取りを終えたふたりは、職員から礼を言われ、礼も言い返し、
再び1階受付へ。
「ようやく、終わったな、お疲れさん、ジェローム」
「ばっちりだな、お疲れさん、リオネル。たくさん金も貰ったし、夕飯の食い物とか買い物して、帰って、休もうぜ」
顔を見合わせ、拳を合わせるフィストバンプをしたふたりは、
ゆうゆうと、冒険者ギルド総本部本館から出て行ったのである。
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