第30話「超衝撃の全属性魔法使用者!!」
知能があまり高くないゴブリンでも……
大岩の上にとんでもない『敵』リオネルが陣取っているという認識を、さすがに持った。
「ばらばら」と投石して来たり、木に登って「ぎゃあぎゃあ」咆哮し威嚇して来たり、終いには大岩へ飛び移ろうとして来た。
だが、リオネルは大岩の周囲を防御魔法『風壁』で遮断し、対抗。
投石も侵入も一切許さなかった。
威嚇などは完全に『無視』である。
改めて熟考し、作戦パターンは変更せずと決めた。
風の攻撃魔法『風矢』の連射で敵を多数撃ち倒し、特異スキル『フリーズハイ』でかく乱。
この攻撃で個体数がある程度減ってから、降下して白兵戦。
この繰り返しである。
午前中、この攻撃を10回以上繰り返し、結局3,000体以上のゴブリンを撃破した。
午後も確実に仕留め、余裕があれば巣穴にも突入し、迷宮で戦う訓練もしようと思う。
ゴブリンに対し、一方的に勝利したが、リオネルはけして驕らない。
そして相変わらず慎重だし、焦りもしない。
ゴブリンの数が相当減り、大岩の上へ戻り、リオネルはひと休み。
リラックスして、ウサギの干し肉をかじり、水筒の水を飲む。
しばらく休んでいたら……
体力も、体内魔力も、ほぼ完全に回復していた。
「あと2,000体のゴブリンを倒せば、多分『12』へレベルアップする。何か使えそうなスキルを貰えるかもしれないし、本当に楽しみだ」
リオネルは渓谷に流れる川と河原を見やった。
「今回の討伐で相当の報奨金を稼げる。旅の資金はいくらあっても困らないし、アンセルムさんにお礼もしたい。鉱石だってガンガン採取するぞ!」
ゴブリン渓谷の大岩の上にリオネルはたったひとりのぼっち。
聞かれるのはゴブリンだけ。
ならば、どんな事でも言える。
超劣等生! バカ! ゴミ野郎! 汚物! 恥さらし! 面汚し!
出来損ない! ハンパ者! くそな貴様! 屑のお前! 消えろ!
それ以外にも、いっぱいいっぱい……
人生の負け犬! いくら言っても足りん! この恥さらしめえ!と
散々、貶められ、罵倒された俺が、
終いには、追放された、この俺が!!
ここまで!
これだけ!
……戦えた!!
ゴブリンなんか、怖くない!
戦う事なんか、全然怖くない!
気力がみなぎる!
魔力も、パワーも満ちて来る!!
「……俺、何か変わった! 自分でもそう思う。いや、違うな!! 俺は心身ともに強く!! 強くなったんだ!!!」
「バカにされるたびに、何度も何度も死にたくなった! 生まれてこなきゃ良かったのにと思ったけど……違うんだ!! 絶対に違うんだあ!!!」
リオネルは大きく息を吐く。
晴れやかな笑みが浮かんで来る。
「俺、生まれて来て良かった!! そうだよ!! 18年間生きていて本当に良かったんだ!!!」
「くじけず!! あきらめず!! これからも生きて!! 生きて!! 生き抜いてやる!!」
「自分が生まれて来た本当の意味を突き止めてやる!! 生まれるべくして生まれたと!! 絶対に確信してやる!!!」
「最後には、俺の人生って本当に良かったな!! って、満足して眠るように死んでやるぞぉ!!!」
言いたい事をはっきりと全て吐露して……
リオネルは気合を入れ直す。
またも、「わらわら」とゴブリンどもの新手が現れる。
「よし! 戦闘再開だ! いっくぞぉぉ!!」
雲ひとつない晴天の空の下、リオネルの大きな声がゴブリン渓谷に響いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお! ひょおお!!
シュバッ!
どしゃ!
どっ!
と、リオネルの容赦ない攻撃は繰り返された。
大岩と渓谷と、十数回リオネルは往復した。
そして、遂に遂に!
チャララララ、パッパー!!!
大岩のてっぺんに陣取るリオネルの心の中で、あの独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、内なる声が淡々と告げて来る。
リオネル・ロートレックは、ゴブリン5,000体を倒しました。
レベル12に到達しました。
チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
身体能力、五感が全般的に大幅アップしました。
体内魔力が大幅に増量しました。
魔力回復力が大幅にアップしました。
魔法攻撃力が大幅にアップしました。
物理攻撃力が大幅にアップしました。
対魔法防御力が大幅にアップしました。
対物理防御力が大幅にアップしました。
チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
チートスキル『ボーダーレス』を習得しました。
習得したチートスキル『ボーダーレス』の効果により……
リオネル・ロートレックは全属性魔法使用者となり、
4大属性全ての魔法が習得可能となります。
「ええええええっ!!?? オ、オ、オ、全属性魔法使用者!!?? な、な、な、何だそれぇ!!??」
さすがにリオネルは驚いた。
心が高ぶる。
どきどきが止まらない。
数多の古文書は勿論、様々な資料に記されているこの世界の『常識』がある。
魔法使いは勿論、誰もが知っている『常識』だ。
魔法使いなら誰でも習得出来る、かまどに火を点けるとか、水を出すとか、
洗濯物を乾かすとかいう初歩の『生活魔法』を除き……
得られる真の魔法属性は、ひとりの魔法使いに対して、4大属性のうち、
たったひとつだけである。
つまり『風の魔法使い』であるリオネルは、『火』『水』『地』の『本格的な属性魔法』を習得する事は出来ない。
しかし時たま……
ふたつの属性魔法を行使可能な魔法使いが現れる。
例えば、火と風、『両方の属性魔法』が行使可能であると。
このふたつの属性魔法を使いこなす魔法使いを、『複数属性魔法使用者』と呼び、数万人にひとりの天才だとうたわれる。
加えて言えば、複数属性魔法使用者の中でも、『3つの属性魔法』を使えるのは、超天才と称えられ、数百万人にひとりだと言われている。
更に更に!!
『全属性の魔法が行使可能』な『全属性魔法使用者』は……
数十億人にひとりだけ、つまりひとつの時代にたったひとり、現れるか現れないかという類まれな希少さであり、『神の使徒にも匹敵する』という伝説の存在なのだ。
改めて己の身に起こった事実を認識し……
あまりの超衝撃に、リオネルの身体は、ぶるぶると震えが止まらない……
「お、お、俺が!!?? こ、こ、この俺が!!?? オ、オ、オ、全属性魔法使用者!!?? す、す、全ての属性魔法を!! つ、つ、使いこなせる!!??」
ディドロ家の3男、超劣等生リオネルは……
父ジスランが罵倒したように、くそバカでも、ゴミ野郎でも、ディドロ家の汚物でも、恥さらしでも、面汚しでもなかった。
兄達が散々馬鹿にして、目の前から消えろ! と貶める存在でもなかった。
『人生の負け犬』ではなかったのだ!
それどころか!
とんでもない……超大器!! 超晩成タイプ!!
ひとつの時代を切り開ける可能性を持つ、『超傑物』だったのである。
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