第296話「相変わらず人間離れしていやがる! まるで獣のような身体能力だ!」
リオネルとジェロームは顔を見合わせ、拳を軽くタッチ。
いわゆるフィスト・バンプをし、大いに気合を入れると……
砦に向かい、再び歩き出した。
明け方に村を出たので、夜が明け始めたばかり、周囲はまだ暗い。
村道といっても、獣道が広くなったくらい。
周囲はうっそうとした森である。
時々、夜活動する獣や鳥の鳴き声や物音が聞こえて来る。
歩きながら……
リオネルが「ぼそっ」と言う。
「ジェローム」
「お、おう」
「お前、夜目は利くのか?」
補足しよう。
夜目は利くとは……
夜の暗闇の中で物を見る、見分けることが出来る事だ。
暗がりでものを見る能力に長けているさまをいう。
対して、ジェロームは苦笑する。
少し過去の記憶をたぐったらしい。
「い、いや……騎士学校で野戦の訓練……夜襲も相当やったが……残念ながら俺は夜、敵を捕捉するのは今いちだった」
「今いち……そうか。じゃあ、今の状況は訓練にちょうど良い」
「今の状況は訓練にちょうど良い? この夜明け前が?」
「ああ、俺の索敵によれば、現在俺達ふたりが居る3km周囲内に動物のみで敵は居ない。だから、ジェロームが先頭に立ち、周囲の地形を見通しながら進んでみてくれ」
リオネルはとんでもない事を「しれっ」と言った。
当然、ジェロームは驚く。
「え? リオネル? さ、3km周囲内に敵は居ないって!? お、お前、わ、分かるのか!?」
ジェロームの問いに対して、またもリオネルはしれっと。
「ああ、索敵のスキルで、魔力感知を使って分かるよ」
「ま、魔力感知を使って? わ、分かるって!? おいおいおい! 3kmだぞ! そんな先の! 遠距離の広範囲までかあ!?」
「ああ、更に遠くも探れるぞ。敵の捕捉率はだいぶ落ちて、曖昧になるけどな」
「更に遠く!? ……リオネル、お前、ほんと、化け物だな!」
感嘆するジェロームを華麗にスルー。
話題を切り替え、リオネルは言う。
「まあまあ、そういう事で、……早速ジェロームには夜目を鍛える修行をやって貰う。俺の前、先頭に立ち、目を凝らして進むんだ」
今、村道を歩いているのは、リオネルとジェロームのみ。
ジェロームに先頭に立って貰い、周囲をうかがいながら伺いながら、
オークが巣食う砦を目指すのだ。
「りょ、了解!」
「周囲に居るのは普通の動物だけだが……敵だと思って、地形の確認とともに注意して進んでくれ。夜目とともに索敵の訓練にもなる」
「あ、ああ」
「狼とか熊とか、万が一肉食動物が、俺達を襲って来たら、排除する」
「分かった!」
改めて実感する。
リオネルは自分の事を気にかけ、いろいろ考えてくれていると。
オークが巣食う砦までは後、3kmほど……
返事をしたジェロームは、おずおずと前に出て、辺り睥睨しながら、
ゆっくりと歩き出したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
村道から獣道に近い道へ……
ギルドの地図をもとに、リオネルとジェロームは、粛々と進んで行く。
もう夜は完全に明けたが……
先頭に立つジェロームは微笑んで歩いていた。
修行の収穫があったらしい。
夜明け前の道を歩き、周囲が少し見えて来たようだ。
ここでケルベロスが戻って来た。
リオネル曰はく、魔獣アスプ4体は周囲で警戒にあたっているという。
ケルベロスが加わり、更に歩き……
やがて……リオネルとジェロームはオークが巣食う砦が見える森へ到着した。
正門が見える……距離は100mほどだが、森の樹木が陰になり、
リオネル達の姿を上手く隠している。
既に周囲はオークどもの縄張り……テリトリーと認識した方が良いであろう。
改めて視線を向ければ、砦の全景が見えた。
夜行性のオークどもは眠りについたのだろうか、砦は静まり返っている。
どうする?
少し、休むか?
とジェロームが言いだそうとした時。
リオネルは笑顔で言う。
「よし、じゃあ早速取り掛かろう。ちょっち行って来る」
単身で500体のオークどもの『巣』へ突っ込むのに、
リオネルはまるで近場へ散歩へ行くが如くの雰囲気である。
「ジェロームは俺が戻るまで、休憩しながら、戦闘態勢をとり、ここで待機」
「お、おう」
「ケルを護衛で置いて行く。いくらオークが来ても一騎当千だから大丈夫。周囲で待機中のアスプ4体も戦うし、心配するな」
「分かった」
「じゃあな」
リオネルはダン!
と大地を蹴り、駆け出し弾むように走り、あっというまに姿は消えて行く。
相変わらず人間離れしていやがる!
まるで獣のような身体能力だ!
そんなジェロームの心のつぶやきは、
動物の能力を数多習得したリオネルに対し、
まさにあたらずととも遠からず……だったのである。
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