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第291話「かっこつけるなよ、ジェローム」

「俺とジェロームを入れて、計29名。騎士の一個小隊とほぼ同じだろ?」


驚愕するジェロームに対し、リオネルはしれっと言い、にっこりと笑った。


「た、確かにそうだが! 確かにそうだがあ!!」


ジェロームは驚き、納得しながらも、大きく声を張り上げるしかなかった。


またずっと持ち続けていた、高難度と思われた依頼受諾、

そして遂行に対する不安も、既になくなっていた。


何故ならば、戦力的には、リオネルの言う通りなのだ。


はっきり言って、ゴブリン300体をあっさり屠ったリオネルと灰色狼風の使い魔……ではなく高位の魔族だけでも、騎士一個中隊に、

もしくはそれ以上に匹敵すると思われる。


更に大蛇のような魔獣アスプ6体に、頑健屈強を絵に描いたような2mもの体躯を誇る岩と鋼鉄のゴーレム20体が加われば……

騎士、王国軍混在の精鋭部隊以上かもしれない。


であれば、500体のゴブリンやオークなど、はっきり言って敵ではない。

否!

1,000体居ても、圧勝するに違いない。


そしてそれらの猛者を統括する魔法使いリオネル・ロートレック。

自分の友ながら、底知れぬ大器である。


リオネルならば、数多の戦いをくぐり抜け勝利して来た事も納得出来る。


そして彼が目指すという、次の目的地。

大魔窟と怖れられる隣国アクィラ王国の迷宮都市フォルミーカへ赴いても、

充分すぎるほどやっていけると確信するのだ。


しかし……と、ジェロームは懐疑的となった。


果たして、リオネルには、「自分が必要なのか?」という疑問が湧いたのである。


ジェロームは、少し葛藤した末、尋ねる事とした。


「なあ、リオネル」


「ん?」


「いきなりだけど俺はさ、このクランというか、部隊で必要なのかなって」


「本当にいきなりだな。当然、必要だよ」


即答したリオネル。

だが、ジェロームの疑問は解けない。


「そうかなあ」


「そうだよ。俺はさ、ジェローム。お前と共に強くなり、高みを目指したいんだ」


「え? 共に強くなり、高みを目指したい? だって! お前は今だって、とんでもなく強いだろ? まだ上を目指すのか?」


「当り前さ! まだまだ上を目指す! 俺は今まで自分なんか、ほんの小さな存在だと思う相手に何度も会ったもの」


「自分なんか、ほんの小さな存在だと思う相手って……あ、ああそうか! ローランド様、ブレーズ様、ゴーチェ様とかか、まあそりゃそうだな……」


「ああ、ジェローム。今、お前があげたお3方は確かに強い。でも俺はな、お3方以上に、強い相手にも会っているんだ」


「え、え~っ!? お3方以上って!? 竜殺し、ドラゴンスレイヤーのローランド・コルドウェル伯爵様以上に強いって!!?? そんな人が居るのかあ!!」


「ああ、居る! いや、いらっしゃるだな……俺は妥協せず、自分の限界を目指し、突破したいんだ」


リオネルが告げた強い存在とは、

亡霊と化したソヴァール王国建国の開祖アリスティド・ソヴァール。

そして、地界王アマイモンの愛娘、地の最高級精霊たるティエラである。


「は~……良く分からないけど、リオネルの目標はとんでもなく高いんだな。でもさ、リオネルの目標と俺の存在が、どう関係あるんだ?」


そんなジェロームの質問に、リオネルは答えない。


「ジェローム、お前、初心忘るべからずって言葉を知ってるか?」


質問に対し質問で返したリオネル。

少しむっとしたジェロームであったが、答えを戻す。


「あ、ああ……知ってるよ。何事においても、始めた頃の謙虚で真剣な気持ちを持ち続けていかねばならないという戒めだよな?」


「ああ、ジェローム、その通りさ。お前は騎士の修行をして来て、一人前の騎士になった」


「ま、まあそうだな……一人前じゃなく、半人前くらいだけど」


「謙遜するな。だが、ジェロームは冒険者という新たな世界を知り、初心に戻って、真面目に熱心に講座へ臨んでいる。俺はそんなお前を見ると、自分も慢心しちゃいけないと思うんだ」


「そ、そうか!」


「ああ、それにジェローム。お前は言ったはずだ。いろいろ手ほどきをしてくれ! 俺は誰にも認められるくらい、強くなりたいんだ!ってな」


「確かに……そう言って、リオネルへ修行を頼んだな」


「そしてこうも言った。約束する。こちらから無理に手ほどきをお願いしたのだから、俺は弟子だ。師匠たるリオネルの指示に従うのは当たり前だ……とな」


「むうう……言質(げんち)を取られたか」


「ああ、俺は師匠として、ジェローム。お前に最高のフォローをして、修行を手助けしたい。だから高難度の依頼にも、俺の出来うる最高の布陣で臨む。お前は最高の環境で思い切り修行に臨む。それ以上何があると言うんだ?」


「い、いや……俺が足手まといになるのが嫌なんだ」


足手まといになるのが嫌……

ジェロームの言葉を聞き、リオネルの眉間に不快そうにしわが寄る。


「かっこつけるなよ、ジェローム」


「かっこつける? 俺が?」


「ああ、かっこつけてるよ、ジェローム」


「むう!」


「今のお前は、プライドに生きる騎士ではない。たくさん金を稼ぎ、生き残る事を第一のモットーに据えた冒険者だ。なりふり構わずで行くべきだ」


「なりふり構わずで行け……そうか。俺冒険者になって金を稼ぎ、生き抜くって決めたんだものなあ」


「ああ! それに今のお前では、どこへ行っても誰かに面倒を見て貰う事となる。ならば俺に頼れ。お前と似たような境遇で、同じく実家を追放された俺にな」


「……分かった! リオネル、俺、本当に面倒くさい奴だな……何度も何度も手間をかけさせてすまん!」


リオネルの度重なる説得を聞き入れ……

遂にジェロームは納得し、謝罪したのである。

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