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第280話「師匠たるリオネルの指示に従うのは当たり前だ」

「リオネル! 頼む! いろいろ手ほどきをしてくれ! 俺は誰にも認められるくらい、強くなりたいんだ!」


切々と、リオネルへ訴えるジェロームの目は「ぎらぎら」と輝いていた。


ジェロームの表情もひどく真剣である。


これは何か『特別な理由』がありそうだ。

じっくりと、話を聞いた方が良い。


幸い、自分の家だから、余計な邪魔者が入らず、

ジェロームとふたりきりで話す事が出来るだろう。


「分かった! まずはジェロームの特性等を聞いた上で、いろいろ相談しよう」


OKしたリオネルは、召喚魔法で、ケルベロスを呼び出す。


召喚(サモン)!」


と、短く叫び、召喚魔法を発動すると、


リオネルの少し前の地に輝く『魔法陣』が浮かび上がった。


「うおん!」


そして現れた魔法陣の中から、一体の灰色狼風の巨大な犬が飛び出して来た。

体長は軽く2m、体高は1mを超えている。


「うわ! こいつか! そうやって、召喚するのか!?」


こいつか!


というのは理由がある。


ジェロームは、リオネルが救出に現れた際、ともに現れた従士ケルことケルベロスを目の当たりしていたからだ。


にっこり笑ったリオネル。


ケルベロスを召喚した理由を告げる。


「ああ、召喚した。邪魔者が入らないよう、家の玄関前で見張って貰う。ケル、少し小さくなれ」


玄関先で見張って貰うケルベロス。

狼のような大きすぎる番犬に怯えた近所の人から通報されては、かなわない。


「うおん!」


ケルベロスは体長1m、体高は30㎝の半分ほどになった。


「よし、頼むぞ」


呆気に取られているジェローム。


ケルベロスに関して、リオネルからは、

『使い魔』……のようなものと説明を受けていたからだ。 


リオネルは、ケルベロスに巨大な肉塊を与えた。

ケルベロスに働かせ、自分だけ食事というのが嫌なのである。


リオネルから与えられた肉塊を、がつがつとかじり始めるケルベロス。


「さあ、ジェローム、行こう。メシだ、メシ」


「あ、ああ……」


小さくなり、無心に肉をかじるケルベロスを、

再び呆然と眺めていたジェローム。


リオネルに促され、大きく息を吐き、家の中へ入ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


リオネルとジェロームは、居間のテーブルに、テイクアウトして来た料理と飲み物を並べて行く。


準備が出来たところで、ふたりは椅子に座り、改めて互いを(いた)わる。

偶然にも邂逅した事を祝い、無事に過ごせた事を歓ぶ。


「今日はお疲れ!」

「お疲れさん!」


ふたりは乾杯をし、エールをくいっと飲んだ。


冷えたエールが身体に心地よかった。

ちなみに、ソヴァール王国において、アルコールは16歳以上からOK。

何の問題もない。


ふたりとも腹が減っている。

しばらくは互いに無言で「がつがつ」料理を食べた。


頃合いを見て、話はリオネルから切り出した。


「さっきのジェロームの頼みだけど……基本的にはOKだ」


「ありがたい! 恩に着るぞ!」


「ただ、ランクAといっても、俺だってまだまだ修行中の身だし、ともに高め合おう」


「わ、分かった! リオネル、お前は俺の目標たる高みの存在だが、そう言って貰えると嬉しい!」


「うん! その上でいろいろと聞きたい」


「いろいろと?」


「ああ、俺はジェロームの事をほとんど知らない。まず自分がどういうタイプで、どういう戦い方をするのか話してくれ」


「そ、そうか」


「ああ、ジェロームの事をしっかり把握しないと、適切なアドバイス、指導は出来ないからな」


「成る程」


「あ、念の為、奥義とか秘する技とか、隠しておきたい事象に関して、話す必要はないからな」


「わ、分かった……え、ええっと……どう話せば良いのかな?」


ジェロームはまだ、いろいろな意味で、経験が浅いようだ。

冒険者という生業(なりわい)に慣れていないらしい。


「……う~ん。そうだな……じゃあ、冒険者クランの役割分担に置き換え、話して行くか」


「た、頼む」


「じゃあ、クランの並び順から行こうか」


「よ、よし、クランの並び順だな」


「ああ、まず最初はシーフ。偵察及び斥候役だ。魔物、人間含め、敵の動向を察知したり、見つからないように工夫する。また罠の発見、解除、宝箱の捜索、開かない鍵の解錠などを担当する」


「ま、まあ、その役回りは、俺ではないな」


「次に盾役(タンク)。クランの中でも重要な立ち位置だ。丈夫な鎧等の重装備に身を固め、最前線で敵の攻撃を受け止める。攻撃、反撃をするのも当然構わないが、後衛に攻撃が及ばないように防御するのが一番の役目だ」


「な、成る程! 盾役(タンク)か! 聞いた事があるし、以前組んだ冒険者からも、似合いだと言われた事がある! 騎士として訓練を積んだ俺は盾役が適任かもしれん」


「そうか。次に攻撃役(アタッカー)だ。いくつか種類があるが、大まかには物理系、魔法系だな」


「攻撃役こそ、俺の本領! でも物理系? 魔法系って何だ?」


「うん、物理系攻撃役は、魔法などを使わず、剣やメイスなど、物理攻撃で敵にダメージを与えるタイプだ」


「あはは、もろ俺だな、物理系は」


「もうひとつの魔法系は、その逆。魔法を使った攻撃で敵へダメージを与える事を得意とするタイプだ」


「ああ、俺は魔法を使えないから、違うと思う」


「そうか。次は回復役(ヒーラー)だ。回復系の魔法で味方の体力を回復したり、傷を治癒する事を得意とするタイプだ。毒や呪文封じなどの状態異常の回復も担当する」


「ああ、それは俺の仕事じゃない。今話した通り、魔法は使えないから、絶対違う」


「……最後は後方支援役(バファー)。クランの後方に位置し、味方をサポートする役回りだ。魔法を始め、様々な方法で、味方を強化、もしくは敵を弱体化して、戦局を有利にするのが仕事だ」


「違うな。俺はやはり、前衛に居て、敵とは、ま正面から戦いたい!」


「そうか!」


リオネルの話をひと通り聞いたジェローム。


ぽん!と手を叩く。


「うん! よし! 分かった! じゃあ、リオネル。俺は盾役もしくは物理系攻撃役だ。適性があると思うし、俺自身がやってみたいぞ」


「そうか、分かった!」


ジェローム・アルナルディは、盾役もしくは物理系攻撃役が希望。


リオネルは、そう認識した。


「ジェローム、ひとつ約束だ」


「約束?」


「お互いに高め合うとは言ったが、修行中は、手ほどきを役の師匠たる俺の指示に従って欲しい……約束だぞ」


「リオネルの指示に従う……約束」


「……ああ、俺は平民でお前は貴族の子だ。それに同じ18歳。身分が下で同年齢の俺から、言う事を聞けと言われ、不愉快になるかもしれないけど、我慢してくれ」


リオネルは最後に念を押した。


マウントを取るつもりはないが、

冒険者としてまだ経験の浅いジェロームに、好き勝手に行動され、

死なれるのは勿論、負傷するのも、まずいからである。


「了解。約束する。こちらから無理に手ほどきをお願いしたのだから、俺は弟子だ。師匠たるリオネルの指示に従うのは当たり前だ」


最後に告げたリオネルの『念押し』に対し、

ジェロームは大きく、頷いたのである。

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