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第271話「深い心の絆を結び、未来へ向け、着実に歩んで行く」

キャナール村へ帰って来たリオネル達4人。


なんやかんやで、会話が盛り上がったところで、


「パトリスが、あれだけ熱く語ったんだ。私達の新居を見て回ろう」


と、モーリスが提案。

リオネルも付き合い、4人で新居内を見て回る。


先述したが、室内は全て板張り。

間取りは、30畳くらいの大きな居間、厨房。

クローゼット付きの個室が3つ、こちらも12畳以上ある。

更に客室がふたつもあるという、『村の中』では、だいぶ豪華なものだ。


各部屋は全て、すぐに生活が始められるよう、家具も配置されている。

パトリス達村民は、相当頑張って、この新居を整えてくれたに違いない。


モーリスが微笑む。


「リオ君は、今夜、客室に泊まって貰おう」


「了解です」


一方、ミリアンとカミーユも、探索気分で新居を見て回っている。


「わお! 素敵な家! 今回は、もう住むのが決まっているけれど、ワレバットで、住む家を探した時の事を思い出すね」と、ミリアン。


「でも、姉さん。ワレバットの家に比べると、地味っていうか、飾り気のないっていうっすか、質素な造りっすねえ」と、カミーユ。


カミーユの言う通り、これまで住んでいたワレバットの賃貸住宅に比べると、

素朴で簡素なのは否めない。

家具や調度品も、地味で荒削りのものが多い。


しかし分相応だと、モーリスは言う。


「カミーユ、私はこのような家の方が落ち着くし、先ほどのパトリスの話も聞き、感動したんだ」


更にモーリスは、


「私も、パトリスが、私達が暮らしやすいよう、一生懸命に考え、せっかく用意してくれたこの家を愛し、末永く住みたいよ」


と、しみじみ言った。


ミリアンも大きく頷き、


「そうよ、カミーユ、師匠の言う通り! それに今、私達だけだからまだ良いけど、パトリスさんが居る時にそんな事、絶対に言っちゃダメ!」


「へ?」


「へ、じゃないわ! もしも言ったら、私と師匠で容赦なく、空気読み人知らずの、あんたを、ぶっ飛ばすからね」


と自分の可愛い拳に、息を「は~」と吹きかけた。


空気を読まず、やばいと、顔をひきつらせるカミーユ。


「うっわ! 姉さん、反省するっす! 勘弁っす!」


しかし、「噂をすれば影」である。


扉が「どんどん!」と叩かれ、


「お~い! モーリスう!」


と、パトリスの呼ぶ声が聞こえた。


先ほどパトリスが言った「すぐ昼飯の用意をさせるから、一緒に食べよう」

という約束の履行に違いない。


ここは、挽回しようと、カミーユがダッシュ。


気配を確認、覗き穴から確認すれば、

パトリスと十代の少年少女10人ほどもいくつも包みを抱え、立っていた。

この包みが多分、昼飯なのだろう。


確認を終え、万が一の場合を考えたカミーユは、

扉を閉めたまま、パトリスへ声をかける。


クランの危機管理を担う、シーフ職ならではの最終確認だ。


「パトリスさん! この人達は、どういう御用っすか?」


「あははは、カミーユ君。この子達はね、君達とぜひ昼飯を食べたいと願ったから、荷物持ちも兼ね、連れて来たよ。以前来た時、会った事もあるはずだ」


これで、安全を確保。

カミーユの最終確認は無事、終了した。


「今、開けまっす」


大きく頷いたカミーユは、新居の扉を開けたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


広い居間だが、パトリスと10人の少年少女が入り、とてもにぎやかとなる。


持って来た、いくつもの包みは、やはり『差し入れの昼飯』であった。


食器に盛った料理をそのまま包んで来たものと、スープは金属製のバケツになみなみと、20本もの水筒で、温かい紅茶も大量に持って来た。

万全の態勢である。


早速、居間の大テーブルへ料理と飲み物が並べられる。


新居の厨房にある食器棚からも、数多の食器が出された。


メニューは、黒パン、豚のゆで肉、数種のチーズ、豆とウサギ肉を煮込んだスープ。

各種野菜のサラダである。

栗の燻製、ドライフルーツ、くるみのハチミツ漬け、野菜の酢漬けも持ち込まれた。


パトリス、モーリスの両司祭が、創世神様への感謝の祈りを捧げ、昼食が始まった。


差し入れの昼飯を運んで来た少年、少女達は、以前リオネル達が来訪した際、

知り合い、親しくなったらしく、ミリアンとカミーユへ積極的に話しかけて行く。

ミリアンとカミーユも自然に受け答えをする。

若者同士、いろいろと話題はあるだろう。


モーリスとパトリスは、親友同士ふたりで話し込み……


残されたリオネルはといえば、少し離れた場所でぽつねん。


ミリアンとカミーユが、キャナール村の少年少女達と、

楽しそうに話すのをじっと見つめている。


実はリオネル、敢えて気を利かせ、同世代の話の輪に入るのを避けていた。


なぜなら、自分抜きで、

ミリアンとカミーユが村の少年少女達と、しっかりと懇親する為である。


見た目は、以前の『ぼっち』に戻ってしまったが……

今のリオネルは、辛そうにうつむいたりはしない。

村の同世代と語り合うミリアンとカミーユを、微笑みながら見守っていた。


「ミリアンとカミーユは、他人と上手く折り合う事が出来なかった」

とモーリスからは聞いた。

だが、今や、孤児の双子姉弟は完全に変わった。


リオネルはそう思う。

自分も、コミュ障だったから尚更だ。


キャナール村の近い年齢の仲間達と、

ミリアンとカミーユは、間違いなく、深い心の絆を結ぶ。


そして、未来へ向け、着実に歩んで行く。


パトリスとモーリスを助けながら、今後、若い世代が中心となり、

キャナール村をぐいぐいと牽引(けんいん)して行くに違いない。


リオネルは、確信し、大きく頷いていたのである。

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