第27話「ゴブリン渓谷へ!」
「分からない、う~ん、全く分からない。ナタリーさん、なぜ急に元気がなくなったんだろ?」
リオネルが王都を旅立つと聞き、ナタリーはひどく落ち込んでいた。
宿へ帰り、リオネルはアンセルムの手伝いをしながら、ず~っとず~っと考えたが……
仕事上の接点しかないナタリーが、単なるいち冒険者の自分が原因で悩むなど、全く思い当たらない。
全然想像がつかない。
もう一度だけ、もしや!と、都合の良い『妄想』をする。
自分が王都を旅立つのが寂しいとか?
まさか!
俺の事を気に入っている?
『好意』を持ってくれている?
あんな美人が?
引く手あまたの麗しき人が?
こんなにさえない自分を?
男子としての魅力など全くナッシングの自分を?
ありえない!
全くありえない!
俺の事、どう思います? とか、聞くわけにもいかないし。
という事は、やっぱり原因は不明。
結論!
いくら考えても解明不可能、ダメな時は、無理に答えを出さない。
大怪我や命にかかわるヤバイ案件でなければ、とりあえず先送りで十分。
リオネルは、「すぱっ」と切り替えて眠りにつく。
何故か、この夜はぐっすりと眠れた。
翌朝、悩む事をやめたリオネルは気持ちよく起床。
アンセルムの作った美味い朝食を食べ、出発した。
念の為、テントと寝袋等、キャンプ用品一式、1週間分の食料と水も収納の腕輪へ入れておく。
少し迷ったが……
昨夜リオネルは、アンセルムへ『ゴブリン渓谷討伐依頼』受諾の件を告げた。
数日泊まり込みになるかもしれないと伝える。
リオネルが単独で行くと聞き、アンセルムはとても心配した。
当然アンセルムはゴブリン渓谷の様子を知っている。
まだランクDになったばかりのリオネルが単身で行くのが無謀だといさめたのだ。
だがリオネルは、ゴブリンに対し、大きな優位性のある特技を会得したと話した。
ギフトスキル『ゴブリンハンター』の事だが、詳しくは言えない。
全てを話す事になるかもしれないからだ。
アンセルムを信じたいが、能力の秘匿は自分の絶対的ルールとして決めた事だ。
アンセルムを説得する為、証拠に、ここしばらくゴブリンとの戦いでかすり傷も負っていないとも告げる。
散々やり取りした後、アンセルムは渋々納得し、送り出してくれたのである。
さてさて!
リオネルは王都の正門を出て軽快に駆ける。
狼の能力を得て、疲れない速度で走る事にも、もう慣れた。
さてさて!
ゴブリン渓谷までは、約20㎞の距離である。
まずは渓谷手前の勝手知ったる手前の森の中『狩場』まで行く。
時速30㎞でゆったり?走り、狩場に約30分強で到着した。
犬、狼の能力から得た持久力のお陰で、リオネルの息は全く乱れていない。
ここで、ひと休憩。
静かに辺りを窺う。
周囲にゴブリンを含め、敵の気配はなかった。
もてる能力をフルに使い、広範囲に索敵をしながら、用心して進んでは来たが…
ここから渓谷までは、更に更に慎重に、警戒しながら進んで行く。
リオネルはリスのように木や岩の陰を身を隠すのに上手く利用しながら、歩くのも猫のように足音を立てない。
徐々にゴブリンの気配が感じられて来る。
渓谷に近づくにつれ、どんどん多くなって来る。
ゴブリンが放つ波動は……空腹の怒りと暴力への渇望に満ちていた。
本来夜行性のゴブリンだが……
腹が減ったら何とやら、本能には素直に従う。
奴らは『朝食』の人間を捕食する為、街道へ出るのだろう。
リオネルは小さく独り言を、
「ゴブリンが街道で好き放題に暴れ、人間を喰らう……それも今日で終わりだ」
渓谷の地形は……購入した地図を念入りに見て、暗記してある。
改めてイメージしておく。
先制攻撃をかける為にベストポジションを取る為だ。
やがて、森が途切れ……
大きな岩がゴロゴロしている地形となる。
ゴブリン渓谷に近づいたのである。
リオネルは慎重に隠れながら、ゴブリン渓谷に出た。
目の前の現場を改めて確認する。
まずは依頼遂行開始の為、冒険者ギルドが設置した、渓谷の入り口に立つ柱を探す。
柱には、魔法水晶が埋め込まれているはずだ。
魔法水晶を埋め込んだ柱はすぐに見つかった。
リオネルは、静かに柱へ近づき、埋め込まれた魔法水晶へ自分の所属登録証をかざした。
ぴ!とわずかな音を立て、魔法水晶は反応。
これで、リオネルが倒したゴブリンは当該依頼の討伐対象としてカウントされる事となった。
気配を殺したまま、岩陰からそっと見れば、渓谷は、とんでもない数のゴブリン達で満ちていた。
しかし、不安はない。
ゴブリンはもう戦い慣れた相手だ。
既に、たっぷりとバトルを行い、ギフトスキル『ゴブリンハンター』の効能効果は実験、実証済みである。
「よし、行くか。まずは作戦本部となる大岩を探そう」
リオネルは不敵に笑うと、ゴブリンに気取られないよう、そっと歩き出していたのである。
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