第253話「絶対に愚かであってはいけない。 しかし、賢すぎてもいけない」
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⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!
本日『2月18日』は、『6時から20時まで』段階的に『第6話まで更新する』予定です。
何卒宜しくお願い致します。
「きゃはははははは!! 全属性魔法使用者のくせに、だっさあ!!」
思い切り高笑いし、侮蔑する若い女子の声が、
無人のはずの農地に、大きく響いた。
「え!? ええっと!? ……あれれ!?」
声のした方をリオネルが見やれば……
栗色の肩までの髪、褐色の肌をした、身長150cmくらいの、
10代前半とおぼしき少女が居た。
更にリオネルが見やれば、
複雑な刺繍が施された、茶色の革鎧をまとう、
可憐で愛くるしい顔立ちの少女である。
何と!
少女は、リオネルが生成したばかりの岩壁に座って、笑っていた。
足がかりのない10mの高さの壁に!?である。
リオネルは大いに驚いた。
3つの意味で。
ひとつは、張り巡らせていたリオネルの索敵に捕捉されず、
少女がいきなり足がかりのない10mの高さの壁に現れた事。
もうひとつは、リオネルをいきなり全属性魔法使用者だと言い切った事。
そして最後のひとつは、放つ超強力な波動から、
少女が、『人間ではない事』も判明したからだ。
再び、少女はリオネルを侮蔑する。
「本当にだっさ! 何、その転移魔法の手並み? それでも創世神様に選ばれし者? 全属性魔法使用者の称号が大いに泣くわよ!」
「はあ、確かにおっしゃる通りですね」
苦笑したリオネルが同意して答えると、少女は少し驚いた顔をする。
「へえ? ここまで言われて、あんた、怒らないんだ?」
「まあ、おっしゃる通りですから。俺、凄く不器用ですし」
人間ではない少女に『殺気』は感じない。
そして、少し離れた場所で巡回していた魔獣ケルベロスとアスプだが、
いきなり現れた少女の気配にびっくりし、慌てて駆け寄ろうとした。
『大丈夫、心配するな』
と念話で制止したリオネル。
するとケルベロスも、いきなり現れた少女の気配に気付き、
ひどく驚いた反応を示す。
『そ、そ、その反応はっ!!?? ま、まさかっ!!?? ティエラ様っっ
!!??』
「え? ティエラ様って? 様? この子が?」
「うふふふ! 眷属のケルベロスが先にばらしちゃったか。私の名前!」
少女――ティエラはそう言うと、「くるり」と、空中で一回転して、
これまた開拓したばかりの農地へと、降り立った。
リオネルは少女の『身の軽さ』に驚くとともに、彼女が発した言葉が気になる。
「眷属!? ケルベロスが!?」
「ええ、冥界の魔獣ケルベロスは、我が地の一族、すなわち私ティエラの眷属よ!」
「!!!」
驚くリオネルに対し、ティエラは更に言う。
「あんたは人間族の全属性魔法使用者! リオネル・ロートレック! いえ、本名はリオネル・ディドロだっけ?」
ティエラは、リオネルの名前と本名も知っていた。
更に驚いたリオネルは改めて名乗る。
大きな声で、はきはきと。
そうした方が良いと、直感的に思ったからだ。
「は、はいっ! 俺は、リオネル・ロートレックです! 本名は、おっしゃる通り、リオネル・ディドロですっ!」
「うふふ、私は精霊ティエラ! 高貴なる4界王のひとり、地界王アマイモンの娘よ!」
にっこり笑ったティエラも大きな声で名乗った。
そして右手をびしっ! と突き出し、リオネルへVサインを送ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルへVサインを送る地界王アマイモンの愛娘ティエラ。
そういえば、とリオネルは思い出す。
……古の英雄、リオネルと邂逅したソヴァール王国建国の開祖、
アリスティド・ソヴァールの亡霊は高貴なる4界王の会いたがっていた。
地界王アマイモンに、アリスティドが邂逅した際、
愛娘ティエラにも邂逅した事はあるかもしれない。
出来れば、アリスティドをこの場に呼んであげたかった。
しかし現在のリオネルのレベルでは、到底無理。
申し訳ありません!
リオネルは心の中で謝った。
いずれ、またと思いながら。
さてさて!
何となく予想は付くのだが……
改めて、リオネルは尋ねてみる事にした。
「あの~、ティエラ様」
「なあに?」
「どうして、未熟な俺なんかの下へ出向いて頂いたのですか?」
「うふふ、わざわざそんな遠回しな尋ね方して、あんたには分かっているでしょ?」
ティエラは、いたずらっぽく笑い、尋ねて来た。
対して、リオネルは無難な答えを戻す。
内なる声がささやいたのだ。
以前交わした、魔獣ケルベロスとの『会話』を思い出せと。
『ふむ……我との会話で、主は話術のスキルも上げておけ。高位の魔族と話す事に備えてな』
『いずれ高位の魔族どもは、全属性魔法使用者たる主の前に数多、現れるだろう。邪悪な人間も含め、誘惑、甘言などに惑わされないよう、自身の剛毅さを高め、話術を巧みに行えるようにも備えておくのだぞ!』
高位の魔族……
地界王アマイモンの愛娘、精霊ティエラは、まさに高位の魔族である。
否、最上級精霊のひとりと言えるであろう。
ここは慎重に、そして臆さずに、言葉を交わすべき……なのだ。
「はあ、分かりはしませんけど、予想くらいは」
「予想? じゃあ、言ってみなさいよ」
「ティエラ様とお父上が管理する様々な地属性魔法……」
「うんうん!」
「その様々な地属性魔法を使う、未熟な人間の『がきんちょ』に対する、単なる好奇心……ですか?」
「単なる好奇心かあ……ぶっぶ~! あたらずととも、遠からず……ね!」
リオネルはケルベロスとの会話で認識していた。
邪悪な存在ではない、教師然として接してくる相手……
に対しては、絶対に愚かであってはいけない。
しかし、賢すぎてもいけないと。
では、どうするのか?
正解の半分だけを答え、完全な答えを相手から教授して貰うのが賢明なのだ。
そして、相手に対し誠実に、且つ礼儀正しく接するのは、当然である。
軽く息を吐き、ティエラは言う。
「リオネル、教えてあげる! 私がわざわざ出向いたのは、全属性魔法使用者たる、あんたへ、我が地の魔法を極めて貰いたいからよ」
「成る程……俺に地の魔法を極めて貰いたいから、ですか」
「うふふ、そうよ!」
「ティエラ様」
「うふふ、なあに?」
「正直に言いますよ」
「うんうん、正直結構! 遠慮せず、私へ言ってごらんなさい」
「はい! 俺は転移魔法を始め、地の属性魔法を極めたい、いえ! 全属性魔法使用者として、全ての属性魔法、いえ! 属性魔法だけでなく! あらゆる魔法の全てを極めたいと思っています!」
リオネルは、ティエラへ正直に、
自分の心に嘘偽りなく、はっきりと決意を述べたのである。
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