第233話「興味がある事」
リオネル達一行は、帰路も敵を倒しつつ進み……
無事、地下5階層へ戻った。
途中でケルベロスを異界へ帰還させ、アスプ6体を呼び戻し回収したのは言うまでもない。
という事で……
ケガもなく、無事地下5階層の街中を歩く一行。
冒険者の数も、昨日より気持ち増えているかもしれない。
ブレーズとゴーチェを見知った冒険者達が、挨拶をして来る。
そんな冒険者達へ手を挙げ、応えながら……
ブレーズとゴーチェはいつもの居酒屋へ、
リオネル達一行を連れて行く。
「毎回ごちそうになるのもいかがなものか」と思い、
リオネルは、断りを入れた。
しかしブレーズからあっさりと却下された。
ゴーチェも主に追随し、同意した。
ふたりは引き続き、「リオネルを貴族家の婿養子に誘いたい」意向はあるらしい。
だが、無理やりにという気持ちは希薄になっているようだ。
そんな波動が、リオネルに感じられる。
戦いをともにし、ブレーズ、ゴーチェとも心の距離が縮まっているとも。
リオネルの『サトリ』の能力、心を読む読心の精度も、
索敵と同様、著しく上がっているらしい。
しかし、敢えて好意的な、ふたりの心の中をのぞく必要はないとも思う。
という事で、今夜の食事会はリラックスムードである。
残る探索は地下10階層のみであるからだ。
依頼されている、ギルド総本部発行の公式地図の確認は、
地下9階層まで、全て完了していた。
明日は、この地下5階層から出発。
6階層へ降り、敵を倒しながら、7階層、8階層、9階層を通過し、
各フロアの階段から地下10階層へ、綿密な探索なしで、直行出来る。
但し、リスクはなくなったわけではない。
「探索に要する時間が短くなっただけ」である。
敵と戦い、心身に危険が及ぶ可能性は間違いなくあるのだ。
転移魔法の罠、テレポーターで9階層へ飛ばされたリオネルは、
自身を引き合いに出し、全員の気持ちを引き締める。
「皆さん、油断は禁物! 勝って兜の緒を締めよ! です! 今日の俺みたいなアクシデントもあります。最後まで気を抜かず頑張りましょう!」
リオネルの言葉を聞き、
全員が「もっともだ!」と気を引き締める
リオネルの著しい成長を実感。
上機嫌のモーリスが笑顔で言う。
「明日は地下10階層で、建国の英雄、ソヴァール王国の開祖、アリスティド・ソヴァール様の記念碑が見れる! 本当に楽しみだ!」
ミリアンとカミーユが、モーリスへ尋ねる。
「あれ? 師匠は英雄の迷宮、最下層に行った事、ないんだ?」
「アリスティド様の記念碑を見た事はないっすか?」
補足しよう。
建国の英雄アリスティド・ソヴァールが死して、既に約1,000年が経過した……
そのアリスティドの記念碑が地下10階層に設置されているのだ。
1,000年前アリスティドが亡くなった直後……
残された遺児、つまり現ソヴァール王家の祖と、
円卓の騎士と謳われた忠実な配下達が改めて、かつて開祖が修行した迷宮を冒険。
全員が無事、最下層に到達すると、ミスリル製の記念碑を立てた。
その記念碑へ、アリスティドの普段のモットーであり、亡くなる間際に言い残した『遺言』を刻んだのである。
それは、
力なき正義は悪。
正義なき力もまた悪。
というシンプルな言葉であった。
地下10階層へ到達した冒険者達は、
ありし日のアリスティドへ想いをめぐらせ、
その石碑へ祈りをささげる事が慣例となっていた。
……業務担当のエステルから聞いた話では、
約1,000年の間、今までに限られた10名に満たない者が、
記念碑の前で、アリスティドの亡霊に会い、
ありがたい啓示を賜ったというのである。
しかし、500年ほどアリスティドの亡霊は出現せず、
半ば伝説と化していたが……
少し前、アリスティドの亡霊に会ったのが、
ワレバットの統治者で冒険者ギルドの総マスターである、
ローランド・コルドウェル伯爵なのだ。
話を戻そう。
ミリアンとカミーユから尋ねられたモーリスは残念そうに首を振った。
「ああ、残念ながら、私は最下層10階到達は果たした事はない。当時の私も含め、一緒に組んだクランメンバーが、力不足だったという事もあったからなあ……」
遠い目をして記憶をたぐるモーリス。
「今回は元々強いリオ君が覚醒し、本格化した事。そしてブレーズ様、ゴーチェ様が同行した事も大きい。ミリアンとカミーユも頑張ってついて来たからな」
と微笑んだ。
対してミリアンとカミーユは、
「確かに! 本来ならば、この迷宮の地下6階層以降は、中級もしくはランカー向きだものねえ」
「そうっす! 半人前の俺と姉さんは皆さんに守られながら、何とかここまでたどりついたって感じっす!」
ふたりは、ローランドが開祖の亡霊と邂逅した際、
同行していたブレーズに尋ねる。
「ブレーズ様、ローランド様が開祖様とお会いした際、どんな感じでしたか?」
「そうそう! そしてローランド様がどのようなお言葉を賜ったのか、ぜひお聞きしたいっす」
「こらこら、ミリアン、カミーユ、ブレーズ様にぶしつけだぞ」
と、モーリスがたしなめるが、
「ははは、構いません。では差し障りのないレベルで少しお話しましょうか」
と言葉を戻し、ブレーズは姿勢を正した。
ローランドが開祖アリスティドの亡霊と邂逅した際、どうだったのか?
とても興味がある話である。
ミリアンとカミーユ、リオネルとモーリスは勿論、
その時、同行していなかったゴーチェも、大きく身を乗り出したのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス刊
宜しければ、第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
HJノベルス様公式サイトでは試し読みが可能です。
お気軽にどうぞ!
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス刊)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
またこちらの「Gファンタジー」様公式HP内にも特設サイトがあります。
コミカライズ版第1話の試し読みが出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版がご愛読可能です!
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、他作品のご紹介を。
新作を公開しました。!
⛤『騎士をやめて花嫁修業しろと言われた私は、公爵家お嬢さま御付きの騎士メイドとなりました!』
そして下記の作品も宜しくお願い致します。
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
他の作品もありますので、何卒宜しくお願い致します。




