第221話「応用しよう」
全員が注目する中、ブレーズは抜刀術の『居合』ではなく、
「すらっ!」と、最初から愛用の剣を抜き放った。
果たして、ブレーズはどのようにして岩石タイプのゴーレムを倒すのか?
「ふっ」と不敵に且つ冷たく笑ったブレーズは、
「しゅっ!」と軽く剣をひと振りした。
既に魔力をまとっている剣から、
まっすぐにひとすじの水流が高速で放たれ、岩石ゴーレムへ向かい突き進んだ。
ど・しゅっ!
何と!
水流が、岩石ゴーレムを貫いた。
これは魔法で硬化した、超高圧の水!?
その水を凄まじい速さで放出し、敵を撃ち抜いた!!
更にブレーズは迷宮の床をダン!と蹴り、これまた凄まじい速度でダッシュ!
はっ!
と岩石ゴーレムを一刀両断。
たっ!
と返す剣でもう一体も一刀両断。
「うっわあ! ブレーズ様! 魔法で撃ち出した水が、敵を貫くなんて、ものすご!」
自分より遥かに上級の水属性魔法を目の当たりにして、大いに驚くミリアン。
そして、カミーユもただただ驚愕。
「さすが剣聖! 魔法も剣も神速っすう! ねえ、リオさん」
「あ、ああ……そうだな」
カミーユから同意を求められ、曖昧に肯定したリオネルだが……
「見事だ!」と感嘆しながらも、実は、しっかりとブレーズの攻撃を観察していた。
否!
チートスキル『見よう見まね』により習得し、数回のレベルアップを経て、著しく能力が上がった『大鷲の目』は、しっかり、ブレーズの高圧水攻撃、そして硬い岩石を一刀両断にした魔法剣の剣筋、そして秘密を見極めていたのだ。
しかし、ゴーレムは疑似生命体。
倒した3体のうち、1体がブレーズにより一刀両断にされても、
いまだに動いていた。
上半身だけのゴーレムが手を伸ばし、ブレーズの足をつかもうとする。
しかし、さすがはブレーズ。
殺気を感じたのか、ぱっと飛び退り、余裕をもって、
伸びて来たゴーレムの腕を避けた。
そして、
「ふふふ、いけませんねぇ、おいたは……め、です」
と、不敵に笑い
ど・しゅっ!
ど・しゅっ!
ど・しゅっ!
ど・しゅっ!
と容赦なく硬質化した水流を撃ち込んだ。
刻まれた真理の魔法文字が破壊されたのだろう。
ゴーレムはとどめを刺され、動かなくなった。
「ふう、やれやれです」
例によって飄々としたブレーズ。
微笑みながら、リオネル達が見守る位置まで戻って来たのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ブレーズの働きにより、襲って来たゴーレムが全滅。
全て戦闘不能となり、安全が確保。
こうなると、戻って来たブレーズへ、
向上心に燃えるミリアンとカミーユが駆け寄り、質問攻め。
リオネルも加わり、ブレーズの話を聞きながら、いくつか質問をする。
そんなこんなで、話を聞き、確認しながら……
リオネルは、対オーガ戦、対ゴーレム戦において、
ブレーズが見せてくれた奥義各種を心の中で整理する。
まずは、東方の剣技『居合』の流れを組む、特異な抜刀術。
この抜刀術を成立させる為の、身体の構え、足さばきも重要なのは言うまでもない。
次に、傷口を瞬時に凍結させる、水の精霊ウンディーネに祝福された特異な魔法剣。
この魔法剣に関して、ブレーズは詳しい説明をしなかった。
「魔力を込め、斬った」という、
リオネルの問いかけに同意したシンプルな答えのみ。
秘すべき奥義の一端に違いない。
次に岩石製ゴーレムを貫き、
更にあっさり切り捨てたのは、『水斬剣』という魔法剣だそうだ。
これは刀身に、魔法で生成した超高圧の水をまとい、絶対に刃こぼれしない、
無敵の刃とするもの。
こちらの水斬剣は、リオネルはギルドの図書館において、
記載された文献を目にした事があった。
当然、目の当たりにするのは初めてである。
そして最後にゴーレムを貫いた高圧の水流。
これも水斬剣とほぼ同じロジックだろいう。
長きに亘って、ぽとん! ぽとん!と、硬い岩をもうがつ水滴の力。
魔法で超高圧化した水流を超高速で放ち、岩石製のゴーレムを、
あっさり貫き、または撃ち砕いたのである。
これらの奥義を目を皿のようにして、リオネルは凝視したにのだが……
残念ながら、チートスキル『見よう見まね』は発動しなかった。
判定の基準は不明だが……
以前告げられたように、到達レベルに達していない。
そう考えるしかない。
以前も経験したが、やはり、甘くはなかった。
もしも、こんなに簡単に、ブレーズの奥義を簡単に習得出来たら、
「どこまでご都合主義なんだよ! 俺の能力は」とリオネルは苦笑する。
否、今でも充分すぎるくらい『超ご都合主義的な話』じゃね~か!
という突っ込みはさておき。
ふっと、リオネルは微笑んだ。
ブレーズが見せた奥義を現状の武技、魔法を全ては無理なのだが、
「ある程度、応用させる事は出来そう」だから。
難度が低いものから、手間がかからないものから、
まさにトライアルアンドエラー、いろいろ試していけば良い。
残骸となったゴーレムを、通行の邪魔にならぬよう片付け……
一行は更に地下8階層を探索する。
聞いていた通り、パワー系が集うフロアだけの事はあった。
魔物同士で戦った跡なのか、迷宮の通路は、ところどころ破損しており、
ひどい場所では、壁がなくなってもいた。
「ふん! 脳キン野郎どもが!」
ゴーチェが口汚くののしる。
誰かがクスリと笑う声がした。
そして、何故か全員がゴーチェに同意しなかった。
「お前が言うな!」と、他のメンバーが思ったかは定かではない……
さてさて
……一行が、なおも進むと、再び敵の反応があった。
またも初見の敵らしい。
魔獣ケルベロスが報告を入れて来る。
『主よ、敵だ』
『ああ、俺も感じている。コイツら、先ほどのゴーレムに近い反応だな』
『うむ、あたらずとも遠からず、というところだ。距離は500m。敵はガーゴイルが10体、レベルは40』
『成る程、今度の敵はガーゴイルか』
『うむ、この迷宮に出現するガーゴイルは、憑依ではなく、ゴーレムと同じ原理で動いておる。奴らのスペックは理解しているな?』
『ああ、大丈夫だ』
『……うむ、奴らは岩石の彫像だ。先ほど、『押しかけクールダンディ』が見せた奥義の応用でもやってみる事だな』
『『押しかけクールダンディ』の応用か、了解! テスト可能なものを試しててみるよ』
ケルベロスへ、答えたリオネルは、
「敵襲です! 相手はレベル40のガーゴイル10体。距離は約500m!」
と、全員へお約束の警報を発したのである。
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