第210話「モーリスの㊙特技」
「了解」
リオネルは念話で短くケルベロスへ返し、後方へ振り向いた。
そして、
「全員! 聞いてくれ! 敵襲だ! 相手はバジリスク3体!」
と、大きな声で叫んだ。
同時に新たな『仲間』となったアスプ達へも指示を送る。
敵襲の気配を感じ、6体がこちらへ向かって来ようとしたからだ。
リオネルは、
『悪いが加勢は無用! 引き続き周囲の警戒を続け、敵を追い払え』
と念話で指示を出しておく。
さてさて!
新たな敵の出現にモーリス以下4人に緊張が走る。
ミリアンとカミーユ、そしてゴーチェが顔を引き締める中、
モーリスだけは、すぐ自らを落ち着かせると、再びリオネルのサポートを申し出る。
柔らかな笑みを浮かべ、背後から声をかける。
「リオ君、バジリスクに対しては、先ほどのアスプと同じ作戦で行くぞ。君が敢えて毒を受けた後、先ほど詠唱した言霊、支配の代わりに、私が例の『声』を出そう」
「おお! 例の声……そうですね、宜しくお願いしますっ!」
「うむ、任せておけ! 子供の頃から鍛えた、少々自信がある特技さ。但し、先ほど教えた言霊同様、試した事はない。『上手く行ったらお慰み』だな、はははは」
モーリスの笑い声に、リオネルも釣られ笑う。
心が軽くなり、リラックスする。
「ははは、モーリスさん、人生、トライアルアンドエラーですね」
「うむ! そうだな! リオ君!」
背後からモーリスの声を聞きながら、リオネルは体内魔力を上げ、身構えた。
そして、軽く息を吐く。
リオネルは、先ほどのアスプ戦同様、リオネルは敢えてバジリスクの毒息攻撃を受ける。
但し、石化攻撃、毒息攻撃の両方を一度に受けるのはまずい。
石化攻撃はバジリスクの視線……
魔力が宿る冷たい『瞳』に心が囚われると発動してしまうという。
なので、敢えて敵の視認を避け、放つ波動の気配で行動を読む。
……やがて、バジリスク3体が現れた。
全員が身構えた。
既に皆、戦闘態勢へ入っていた。
リオネルは奴らの『冷たい視線』を感じる。
だが、石化を防ぐ為、敢えて目を合わさない。
しかし、バジリスクが放つ波動で位置がはっきり分かる。
そして波動には感情も含まれている。
だから『意思』も読み取れる。
奴らがこれから何を思い、どう行動するのか、先読み……が出来るのだ。
おお!
遠くの位置確認の索敵だけでなく、近くの敵の気配もしっかり把握出来る!
魔力感知って本当に使えるぞ!
念話の『読心能力』と合わせて使えば、最強レベルの能力じゃないか!
リオネルの様子をうかがっていたバジリスクだが……
石化が効かないと判断し、凄まじい速度で迷宮の床を走り、リオネルへ接近。
かあああああああっっっっ!!!
と吠え、毒の息を一斉に吐きかけて来た。
くう!
どうだっ!
頼むぞっ!
破邪魔法奥義!
『破邪霊鎧』よ!!
先ほどのアスプほどではないが……
猛毒をまともに受けるとあって、リオネルは緊張し、武者震いした。
果たして、…………………………………………………………
実際は短いのだが、今のリオネルにはひどく長く感じる時間が過ぎた……
………………おお! 何ともないぞっ!
良しっ!! 大丈夫!!
少し「ぴりっ」とは来たが、殆どダメージはない!!
バジリスク3体は、殆ど毒が効いていないリオネルに、少し戸惑ったようである。
放つ波動が乱れ、わずかなスキが生じた。
今だ!
「毒が無効!」の報告をモーリスさんへ!
そして、モーリスさんが子供の頃から鍛えたという『特技』を行使するチャンスだ。
リオネルはさっと右手を挙げ、「毒は無効」の報告、
そして「くいっ」と前方へ動かしたのは、モーリスが使う特技の催促。
「よし! 了解だ、リオ君!」
リオネルの『合図』を見て、頷き、返事を戻したモーリス。
思い切り大きく息を吸い込み、
「コケコッコー!!!」
何と、何と!
勇ましく雄鶏の鳴き真似をしたのだ。
モーリス曰はく「子供の頃から、鍛えた」というだけの事はある。
本物とうりふたつ、否! 本物以上の力強さであった。
そうモーリスの特技とは、いくつもの動物の鳴き真似、形態模写だったのである。
リオネルが冒険者ギルド総本部の図書館で読んだ、
古文書の写しにはこう、記されていた。
『小さな王バジリスクは、時を作る雄鶏の声を大いに怖れ、即座に逃げ出す』と……
モーリスは更に鳴き真似を連発する。
「コケコッコー!!!」
「コケコッコー!!!」
「コケコッコー!!!」
異変が起こっていた。
何と!
言い伝えられた伝承は、正真正銘の『本物』であったのだ!
少し古文書の記載はオーバーだったのかもしれない。
バジリスクどもは即座には逃げ出さなかった。
しかし、モーリスが真似した雄鶏そっくりの声に反応、固まってしまって動かない、否! 動けないのだ。
一方!
完全に想定外のシーンを見せられ、ミリアンとカミーユ、そしてゴーチェまでが呆然としていた。
にやっと笑ったモーリスは更にダメ押し。
これも古文書にあった記載。
バジリスクが嫌うイタチの発する威嚇の鳴き真似を行う。
「キッキッキーッ」「キッキッキーッ」「キッキッキーッ」
とこれまた何度も、小刻みな甲高いイタチの鳴き声を発したのである。
バジリスクどもは、完全に固まり動けなくなった。
ここが勝負どころ!だと、モーリスが叫ぶ。
「よし! リオ君! 奴らへ、とどめだ!」
「了解!」
リオネルは魔法杖を使うふりをして、火属性魔法『火壁』を行使した。
度重なるレベルアップで、『火壁』の規模、威力も数倍パワーアップしていた。
動けなくなったバジリスクの周囲を、
迷宮通路の天井まで吹き上げる凄まじい猛炎が取り囲み……
彼らをあっという間に、焼き尽くしてしまったのである。
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