第209話「能ある魔獣は、牙と爪、そして魔力とスキルを隠す」
勝利、成長の余韻に浸るリオネル。
テイムしたアスプ6体は既に移動し、先導役として、一行の先を探索している。
モーリスは、付近に吐き散らかされたアスプの毒を、
解毒の魔法で浄化してから、ミリアンとカミーユを呼んだ。
ミリアンとカミーユは、リオネルとモーリスの傍へ来て、勝利を大いに喜ぶ。
「やったあ! リオさん! 毒が平気な上に、戦わずして、アスプをテイム! すっご~い!」
「リオさん! 本当に何でもありっすね! 凄すぎるっすという言葉が既にお約束っすう!」
と、ここで、最後方に陣取っていたブレーズの副官ゴーチェがすっ飛んで来た。
「すっく!」と元気に立つリオネルをしげしげと眺めた。
「おいおい、リオネル君、さっきバトル中に、アスプの毒を浴びただろ? 身体は、大丈夫なのかよ?」
対してリオネルは笑顔で応える。
「はい、ゴーチェ様、毒を浴びたけど、全然大丈夫ですよ」
「む~、何だよ、大丈夫って、全く不可解だ」
「全く不可解?」
「ああ、いくら予防のポーションを飲んでいたって、まともにアスプの毒息を浴びたら、少しは身体に痺れが出るはずなんだ」
「いや、大丈夫みたいですね」
「むう~」
大いに首を傾げるゴーチェ。
と、そこへモーリスがにこにこしながら割って入る。
「おお、そうですなあ。ゴーチェ様のおっしゃる通りだ。では念の為、私がリオ君へ解毒の魔法をかけておこうかあ」
と、モーリスが「しれっ」と『解毒の魔法』を発動した。
解毒の効果を含む魔力の波動に包まれたリオネルはにっこり。
「ありがとうございま~す! 何か身体が軽くなった気がしま~す。気分も良いですよお~」
満面の笑みを浮かべるリオネルだが、ゴーチェはしかめっ面のままだ。
「何だよ、わざとらしい! セリフが棒読みじゃね~か。どこかの三文芝居かっつ~の! その上、襲って来たアスプまで手なずけやがって……リオネル君は魔物をテイム出来たのかよ?」
「はあ、そうみたいですね」
「なんだよ、そうみたいって? 今までテイムとか、リオネル君に、そんな気配は全然なかったじゃね~か! ウチの資料にも全くね~し!」
腹ペコの子豚のように、ぶーぶー不満を吐くゴーチェ。
そんなゴーチェを見て、ミリアンとカミーユも何故か笑顔なのである。
リオネルが習得した破邪魔法奥義『破邪霊鎧』の効果効能を
師匠のモーリスから聞いていた。
また、師がこの地下7階層でリオネルにつきっきりの理由も聞いていたのだ。
納得、満足という感情が顔へ出ているのだ。
「おいおい、にこにこ平和な顔してさ、ミリアンちゃんとカミーユ君はこの状況が、おかしいとは思わね~のかよぉ」
「全然! 私、素敵な先輩男子は、まあリオさんの事なんですけどぉ、少しくらい、ミステリアスな感じが良いんですも~ん♡」
「俺も、尊敬する先輩男子、まあリオさんの事なんっすけど、底知れない器を持つ方が望ましいっす」
「泥に杭」という双子姉弟に、ゴーチェは更に渋い顔だ。
「まあ……仕方ねえか」
ここまでやりとりをして、ようやくゴーチェは諦めたらしい。
追及を「ここまでにしといてやらあ」と、
まるで『はぐれ者』のように言い捨てたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
結果的に、襲って来たアスプをリオネルがテイムする形でバトルは終わり……
探索は再開された。
公式地図新版発行の為、迷宮内の探索依頼を受けたリオネル達は地下7階層各所を丹念に調べて行く。
依頼を受けた時、エステルからの付帯説明で、この7階層フロアまでは破損が少ないが……
パワー上位系が跋扈する地下8階、9階層は探索者とのバトル、または魔物同士、
内輪で戦う事も頻発。
ところどころが破壊されているとも言う。
今日の探索が終わったら、また一旦地下5階層へ戻ろう。
そう決めたリオネルは魔力感知――索敵の感度をあげた。
敵の気配は多々ある。
現在の状況でリオネルが気にするのは、こちらへ接近する気配のみ。
そして『味方の気配』にも注意する……
各々、違う位置に居るケルベロスとアスプ6体の気配だ。
彼らには、よほどの場合を除き戦いをしないよう命じてあった。
何故ならば、魔法学校の授業、ギルドの講座、両方で召喚術の際に習っていた。
命令を厳守させる事が召喚対象の忠誠心、また術者の制御力、
それぞれの向上につながると、何度も教授されたからである。
しばらくして……リオネル達一行に向かい、進んで来る小群があった。
すかさずケルベロスから、連絡が入る。
『主……また初見の敵だ。それゆえ我が、敵の名を伝えてやろう』
『ああ、ケル。頼むよ』
『うむ! 頭にとさかを持つ8本脚のトカゲ、バジリスク3体……レベルは40だ。アスプ同様、奴らのスペックは、主には知識としてあるだろう?』
『ああ、バジリスクは名の通った奴だからな。毒と石化には特に注意するよ』
『ふむ……奴らにはユニークな弱点もある。主は昨夜、元『坊主』から聞いたはずだ』
『元『坊主』って……ああ、モーリスさんの事かい』
『うむ、そうだ。そもそも、破邪魔法の奥義『破邪霊鎧』を習得した主には、バジリスクとの戦いなど、遊ぶのも同然だろう。レベル40の補正もある。恐れる事は全くない』
『了解。ケルの意見はありがたく聞くよ。ただ俺はけして驕らず誇らず、油断大敵、勝って兜の緒を締めよで行くぜ』
『ははは、良いだろう。謙虚で控えめなのは良き事だ。能ある鷹……否、能ある魔獣は、牙と爪、そして魔力とスキルを隠すとも言うしな』
『うわ! なっげ~な。何、それ?』
『魔界のことわざだ。常識として憶えておけ』
『ははは、了解! 憶えとくよ……おおっと! 敵が……バジリスクが接近して来た。じゃあ、戦うぞ』
『ふむ、後で報告を聞こう』
『了解!』
リオネルは念話で短くケルベロスへ返し、後方へ振り向いた。
そして、
「全員! 聞いてくれ! 敵襲だ! 相手はバジリスク3体!」
と、大きな声で叫んだのである。
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