第203話「またも心を削られた!」
英雄の迷宮地下6階層を探索するリオネル達だが……
ここまで来て、ほとんど触れていない。
なので、気になっている方も居るやもしれない。
そう迷宮の探索には『お約束』の宝箱である。
実は、地下4階層くらいまでに、リオネル達は宝箱をいくつか、開けていた。
迷宮の片隅に「ぽつん」と置き捨てられたようにあったモノ。
魔物を倒した後に出現したモノ等々、様々なパターンで得る事が出来た。
しかし……ショック、100倍! スカの空っぽ! ……が殆どで、
もしも『戦利品』が入っていたとしても、
「お宝だあ! 取ったど~!」とは到底言えないような、
中古っぽい汚れた棍棒、廃材で作られたような安っぽい魔法杖、
果てはすぐ廃棄処分にした、異臭がする毒々しい色のポーション、
賞味期限を過ぎたような薬草など……『価値のあるお宝』は『皆無』であった。
この結果では、「すんばらしい、お宝ゲットだぜ!」を夢見て、
シーフ職となったカミーユは収まらない。
師モーリスへ、モノ凄い剣幕で食ってかかる。
「なんすか! 師匠! 苦労して、宝箱を開けたのに! 中身が空っぽの、スカとか! ありえないっす! それに入っていても、しょーもない『お宝』どもばっかりっす! 確か! 英雄の迷宮は! 結構良いお宝が発見出来るぞ! ってフレコミでしたっすよね!」
「カミーユ! 私は言っただろう!」
「何がっすか!」
「浅い層ではロクなものが出ないぞと」
「はあ、確かに聞きましたけど……さすがに! これでは酷すぎるっす!」
「だからあ! お前は人の話を良く聞かないと言われるんだ! 地下6階層からが、価値のあるお宝入りの宝箱が、ゲット出来る可能性が高い! ……と言っただろが!」
ここで、リオネルが間に入った。
「まあ、まあ……カミーユ。空っぽのスカが出るのはモーリスさんのせいではないよ。お前と俺が罠を外し、宝箱を開けるシーフ職トレーニングの一環だと、考えようよ」
「俺とリオさんのシーフ職トレーニングの一環すか? 分かったっす! じゃあ6階層から期待っすね!」
という会話が、ここまでに何度かあり……
6階層でとあるオークどもを倒したら……ようやく出たのだ。
その宝箱は今までと違う外観であった。
これまでの罠も過激ではない木製のモノから……
頑丈そうな鉄製の仕様で、ヤバそうな罠が仕掛けられている雰囲気である。
……補足しよう。
この世界の罠見極め、解除、宝箱の鍵解除、開放の『方法』も昔と違い、大きく様変わりした。
そもそも!
宝箱を開けるまでは下記の『手順』である。
この『手順』は昔も今も変わらない。
まず……
宝箱に仕掛けられている罠の有無、施錠されている鍵の仕様を見極める。
次に罠があった場合、発動させずに解除。
施錠されている鍵をピックなどの道具を使い解錠、開放し、中身を得る。
この手順はほぼ変わらないのだが……
昔は豊富な知識に裏付けされた視認、長年の経験と実績、そして最後に決め手となるのは天性の勘が大きかった。
いわゆる『職人技』というモノだ。
また魔法を使い、上記の作業をする魔法使いも居た。
『見極め』で罠の有無と種類を見極め、
『解錠』『開放』の魔法を使い、一連の作業を行うのだ。
ワレバット冒険者ギルド本部において、
シーフ職・基礎と応用の講座を、リオネルとカミーユは受講したのだが……
更にリオネルは応用のオプション講座『シーフ魔法』を受講し、訓練の末、
『見極め』『解錠』『開放』
の3つの魔法を習得していたのである。
また……
『罠』についても触れておこう。
仕掛けられている罠は多種多様だ。
まずは物理的ダメージを与えるモノ……
石のつぶて、ガレキや、巨大な岩が落ちて来るヤバイ仕様もある。
次に毒を含む針、同じく有毒性のガスや霧が噴き出すモノ。
次に呪いタイプ。
睡眠、麻痺、石化など迷宮では危険なモノばかりだ。
また生命力、魔力の吸収でダメージを与える呪いもある。
変わったところでは、魔物を呼び寄せる『警報的な異音が鳴る』モノ。
幻と言われる飛翔魔法、転移魔法が込められていて、
作動する本当にヤバイ、モノもある。
そして少し前から、もしもシーフの技能がなくとも、
魔法『見極め』『解錠』『開放』を行使可能な魔道具が高値で販売されていた。
魔法の精度はピンキリだし、値段も同様だが……
これで正式なシーフ不在のクランでも、宝箱を『処理』出来るようになったのである。
さてさて、話を戻そう。
英雄の迷宮、地下6階層で遂に出た!
貴重な?お宝が入っている可能性が高い鉄製の宝箱。
シーフ職としてはふたりとも半人前。
リオネルとカミーユの共同作業である。
とりあえず、危険が及ばぬよう、モーリス、ミリアン、ゴーチェに下がって貰う。
それから作業に移った。
……まずは視認による確認。
いきなり触らぬようにして、リオネルとカミーユがそれぞれ宝箱を観察する。
正面、左右の外観において、特に異常はない。
で、あれば鍵穴、背後の『蝶つがい』の確認だ。
背後を見たカミーユが叫ぶ。
「リオさあん、『蝶つがい』に仕掛けはないっすう!」
「分かったあ! 鍵穴は俺が見る」
そう言い、リオネルは「そ~っ」と宝箱の鍵穴をのぞき込む。
あった!
何か、極細の糸が張ってあった。
多分……切れやすい糸を仕掛け、鍵穴へピックを差し込み、切れたら罠が発動する。
と……リオネルは判断した。
「あった! 罠だ! 糸が張ってある!」
「本当っすか!」
リオネルの声を聞き、カミーユが駆け寄って来る。
やはり「そ~っ」と鍵穴をのぞき込んだ。
「あ! 本当っす! リオさんの言う通り、あったっす。うかつにピックを入れると罠が作動するっすよ!」
「カミーユ、罠の種類は分かるか?」
「う~んと……この仕様で、俺の勘っすけど、ダメージが最小で、いしつぶての物理系。毒系だったらまあまあ御の字、最悪で呪い系で石化されちまうっす」
「……俺もそう思うが……魔法で確認しよう。……見極め!」
リオネルが魔法『見極め』を行使した。
しばらく経って、内なる声が伝えて来る。
……目の前の宝箱の罠は……毒系……
猛毒の霧が噴き出し、体力の15%を奪います。
「カミーユ、ビンゴ! 罠は毒系だ。猛毒霧で、体力が奪われる」
「そうっすか! リオさん! そりゃ、ヤバイっすね!」
「ああ! じゃあ、カミーユ、今回は罠の解除と解錠、開放も俺が魔法でやってみよう」
「お願いしまっす!」
という事で、リオネルは作業、………………魔法で罠を解除し、解錠まで成功した!
「よし宝箱を開けるぞ! ……開放!」
……ゆっくりと、宝箱のふたが開いて行く。
果たして!
……しかし! 何と何と何と!!
またも中身はない!!
虚しく『空っぽ』であった。
「あ~あ! なんてこった!!」
嘆くリオネル。
そしてカミーユは、何と何と、リオネルの心の古傷をえぐる禁句を発してしまった。
「わお! また大ハズレっすう!! くそハズレっすう!!」
「くわっ!? お、お!? 大外れぇ!? く、く、くそハズレぇぇ!?」
皆さんは憶えているだろう。
初めてスキルを授かった際、『いじわる司祭』にいじられたリオネルを……
あの時……
「ははははは、どうもこうもない! 残念だが、リオネル君。ぬか喜びだ。こりゃ完全に大ハズレ! いや! くそハズレ! だなっ」
リオネルは心にとてつもない大ダメージを受け、
「がくっ!」と脱力してしまったのであった。
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