第202話「姉弟でオークを圧倒!」
カミーユは、姉から散々責められる通り、
思慮深さに欠け、むこうみずな部分もある。
大事な話も、聞き流してしまう時も多々あった。
だが!
リオネルは、カミーユを絶対に見捨てない。
以前、リオネルは実感を込めて言った。
カミーユは昔の自分のようだと。
勇気がなく、自分自身と向き合えてなかった事に大きなシンパシーを感じたのだ。
しかし今や、カミーユは変わりつつある。
そして、少しづつではあるが、確実に前進している。
今回も、前方の敵に集中し過ぎる可愛い『弟』に対し、
リオネルは何度だって注意する。
「カミーユ、シーフとして、後方メンバーへの通達を頼むぞ」
「うっわあ! またやっちまった! はいっ! リオさん! そうだったっすう! 姉さあん! 師匠ぉ! ゴーチェ様あ! 敵っすうう! 上位種を含めたオークが! 合わせて20体くらい来るっすよう!」
カミーユの慌てふためく声を聞き、
苦笑するミリアン、モーリス、そしてゴーチェだが、
気持ちを引き締め、戦闘準備をする。
やがて……
オークの群れが現れた。
カミーユが予告した通り上位種オークオフィサー、オークソルジャーを各1体を含んだ20体余りの群れである。
リオネルが叫ぶ。
「よし! カミーユ! さっきのミリアンと同じ作戦を取るぞ。打合せ通りにやるんだっ!」
焦ると頭が真っ白になってしまうカミーユ。
混乱して、作戦が思い出せない。
「はいっすう! ええっと、ええっと……」
しかし、リオネルはそれを見越して、対策を取っていた。
「言葉や理屈で思い出すな! カミーユ! 先ほど、俺とミリアンが戦ったシーンを思い出せっ。絶対、姉に負けたくないと、目を皿のようにして、しっかりと、お前の心へ刻んだろう!」
「そ、そうだったっす! リオさんっ! 大感謝っすう!」
……そうだ!
カミーユの脳裏に、先ほどリオネルと姉ミリアンがコンビを組んで戦ったシーンが、リフレイン!!
……はっきりと思い起こされた。
まずはリオネルがスキルを使った!
先ほどと同じく、
まずは万能スキル『威圧』レベル補正プラス25威圧のスキルを発動させ、
わずかの時間差で、特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40を放ったのだ。
ここで、ミリアンは得意の水属性魔法を使ったが、
カミーユも魔法杖を振りかざし、杖に込められた攻撃魔法『風弾』を3発、4発とオークの群れへぶち込んだ。
しかし、これは威嚇に近いものである。
風弾が命中しないオークどもも、リオネルのスキルで迷宮の床へ伏した。
先ほどまでは行かないが、オークどもの放つ波動――活動の波動も低下して行く。
「よし! カミーユ! 俺がノーマルタイプを倒す。お前はオークオフィサーとオークソルジャーの上位種を倒してみろ。俺のスキルで動けないから、一方的にダメージを与えられるはずだ」
「了解っすう!」
「俺が突撃して、戦い、問題がなければ、合図として、右手を挙げる。そうしたら、カミーユも続いてくれ。もしも魔法杖で風弾を撃つ場合は、発射前にひと声かけてくれ」
「了解っすう!」
「よし、行くぞ!」
だん!
と迷宮の床を蹴った、リオネル。
弾むような走法で、あっという間に、
倒れ伏し、折り重なるオークどもに近付いた。
ここで、またリオネル自身も課題への挑戦を。
再び、倒れ伏すオークどもを蹴り飛ばして息の根を止める。
……蹴りの威力の再々確認。
そして今度は、先ほどとは違い、
至近距離から攻撃魔法『風矢』を飛ばし、オーク複数へ風の矢を降り注がせ、
一度にとどめを刺す。
そう!
今度は、一度の攻撃で複数の敵を倒す課題がクリアである。
という事で、先ほどより早く、ノーマルタイプオークは全て倒されてしまった。
残ったのは、戦闘不能となったままの、オークオフィサーとオークソルジャー各1体のみだ。
紛らわしいが、先ほどと全く同じ繰り返しである。
ここでまたリオネルは、オークオフィサーとオークソルジャーへ、
ダメ押しの『威圧』と『フリーズハイ』を放っておく。
これまた『可愛い弟』カミーユの安全の為だ。
ここまでして、リオネルは右手を挙げる。
同じく、待機するカミーユに対し、「突撃OK」の合図だ。
最初は混乱し、作戦の進行内容を失念したカミーユも、
リオネルのアシストもあり、今や、完全に思い出していた。
「リオさん! 了解っす! カミーユ! 行くっすよぉ! シールドバッシュなしっす! 魔法杖も使わないっす! 姉さんとほぼ同じっす! 破邪聖煌拳の連発蹴りみで行くっすようっ!」
大声で気合を入れたカミーユは猛ダッシュで、
倒れ伏したままのオークオフィサーとオークソルジャーへ、接近!
どかっ! ばぎっ! がんっ! どごっ!
と、フルボッコの嵐が炸裂!
宣言通り、『連発の蹴り』のみで足蹴にし、肉打つ音を重く響かせた。
結果、カミーユは、姉ミリアンに負けじとばかり、
上位種2体へ、あっという間に、とどめを刺していた。
「やったっすう! 姉さん! 見たっすかあ!」
両手を突き上げ、勝どきをあげるカミーユを見て、
「もう! 全部リオさんあっての勝利じゃない」
と、後方へ控えたミリアンは苦笑していたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はあっ! とうおっ! やあっ! 冷気っ! 氷結う!」
「バッシュ! バッシュ! そして俺の拳! 蹴りを受けてみろっす! そこを、すかさず魔法杖で攻撃! おらおらおらあ! とどめっすう!」
リオネルは、次にミリアンと組んで戦い、再びカミーユと組んで戦うという繰り返しで、地下6階層フロアのオークどもを倒して行く。
少し疲れたかなと、リオネルが感じたら、すかさず回復魔法『全快』でケア。
疲労から、敵に隙を衝かれる事が無いようにした。
ミリアンとカミーユは、
このフロア最強たるオークカーネルにこそパワー負けしたが……
リオネルのバックアップを受けた上で、
破邪聖煌拳、シールドバッシュ、
魔法、魔法杖を、織り交ぜ戦い、何とか倒す事が出来た。
初めてオークカーネルをリオネルが倒した時もそうであったが……
自分の倍あるレベルのとてつもない強敵を倒した事は、
ミリアンとカミーユにとって大きな自信となった。
リオネル、ミリアン、カミーユの3人は、
己が持つ技能を磨きながらオークどもと戦う事で、熟練度を増した。
イコール、単純に強くなるという事ではないが、
戦いに無駄がなくなっているのは確かである。
ミリアンとカミーユと組み、それぞれ10回ほどオークどもと戦い……
「そろそろ、頃合いだ」と判断したリオネル。
自分は一歩下がり、姉弟ふたりを組ませる形で前衛を任せた。
当然、万が一も含め、何かあったら自分が、
そして魔獣ケルベロスも応援に駆け付けられるよう段取りを徹底しておく。
対して、ミリアンとカミーユは期待に良く応えて戦い続け……
リオネルのスキル『威圧』と『フリーズハイ』の援護なしでも、
オークカーネル以外のオークなら、圧倒するまでのレベルに達していた。
こうなると、ちょっと休憩のリオネルはともかく……
後方に位置するモーリス、ゴーチェのベテラン勢は戦う事無く、
事実上、開店休業状態。
苦笑しながら、若者達の戦いぶりを見守るしかなかった。
但し、モーリスは『我が子供達』の成長ぶりを心から喜んでいたのは付け加えておこう。
……ちなみに先導役のケルベロスは、時たま暴れまくり、
リオネルからお呼びがないストレスを、適度に発散していた。
そんなこんなで……
リオネル達は、同時にしっかりと迷宮6階層フロアの探索を行い、
冒険者ギルドから受けた依頼――『英雄の迷宮公式地図の確認』も完遂に向け、
着々と作業を進めて行ったのである。
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