第199話「将来の為、俺が一緒のうちに、少しでも経験を積ませ、更に成長させてやりたい!」
オークカーネル以下のオーク軍団を一蹴したリオネル。
魔力感知――索敵で探っても周囲に他の敵の気配はない。
今度こそは構わないだろう! とばかりに、
後方のミリアンとカミーユ、モーリスとゴーチェの4人が駆け寄って来た。
リオネルも振り返って手を振った。
4人はリオネルの周りを祝うかのように取り囲む。
「リオさん、すっご~い! あんなに大きなオークを一発でぶっとばしちゃったあ!」とミリアン。
「そうっす! 姉さんの言う通りっすよ! 一体、どんなパワーしてるんすかあ!」
と、カミーユ。
「おおおっ! さ、さすがに驚いたぜっ! 恐れ入ったぜぇ! あんなパワー、俺は今まで見た事ねぇ! オークカーネルを一発の拳だけで殴殺する奴がいるとはな! ……とんでもないぜっ!」と、ゴーチェ。
しかし、モーリスだけは驚きながらも、極めて冷静に、リオネルの行動を見ていた。
「うむ、今、リオ君が使ったのは、破邪聖煌拳をベースにした必殺奥義だな。リオ君はまたひとつ階段を昇ったか。それと、その奥義を敢えて使わずに、課題とした属性魔法を魔法杖に込めて試したとは……極めて冷静沈着で、クレバーだ。うんうん、結構、結構……」
と何度も満足したように頷き、誰にも聞こえぬよう、つぶやいていたからだ。
4人から称えられる中で、『内なる声』が、リオネルの心へ「ささやいて」来る。
オークジェネラル、そしてオークキング……
更に上位2種と戦い、圧倒的な勝利を収めれば、
お前は、オークには無敵となるギフトスキル
『オークハンター』を習得出来ると……
迷宮の地下6階層に出現する上位種は、オークカーネルまで。
このフロアにおける自分のオーク戦は、とりあえず、めどがついた。
だから、リオネルは「次にやるべき事へ」切り替える。
それは……
ミリアンとカミーユの、対オーク戦の訓練である、
「ミリアン、カミーユ」
「はい! リオさん」
「何すか、リオさん」
「今まで告げていなかったが……お前達が移住するキャナール村の隣村で、俺はオークカーネルを首魁とした、オークどもと戦った」
「そうだったんだ……」
「リオさんは以前、オークカーネルと戦っていたんでっすね」
「ああ、その時は魔法や作戦を使い何とか勝てた。だが今回は以前よりもずっと楽に勝てた。一回戦ったから、相手の持つ力量を見極め、戦う事が出来たんだ」
「一回、戦って、リオさんは相手の……オークカーネルのレベルを知っていたのね」
「それで、余裕を持った戦い方をしたっすね」
「これからお前達も、キャナール村へ移住したら、村周辺でオークどもと戦う可能性がある」
「オークどもと、戦う……私達が」
「そうっす! キャナール村で、俺と姉さんだけで戦う可能性があるっすよね!」
「ああ! だから、このフロアでオークどもとたっぷり戦い、後々遭遇した時に、臆さず戦えるようにしておくんだ。しっかりと経験値を積んでおくんだ」
「うん! 分かった! このフロアでたっぷり戦い、しっかり経験値を積むわ!」
「ばっち来いっす! 格上の相手でも、勇気を出して、挑戦してみるっす!」
「偉いぞ、良く言った! 俺がしっかりフォローするからな」
「わお! リオさん頼もしい♡」
「リオさん! 頼りにするっす!」
「おう! お前達はひとりずつ交代で俺と組み、オークと戦う。その後は、様子を見て姉弟で組み、戦って貰う」
「リオさんを信じてる! 私達を導いて♡」
「俺達、リオさんに付き従うっす!」
今後、3人が移住するキャナール村へ、また違う場所で、オークが襲って来る事は大いにありうる。
リオネルは、自分と別れた後の事も見越し、そのような提案をしたのである。
そんなリオネルとミリアンとカミーユを見て……
モーリスは再び、満足そうに頷いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルの指示で、フォーメーションが少し変わった。
先導するケルベロスは変わらないが……
前衛はリオネルと、ミリアン、カミーユが3人並ぶ形となる。
やがて……
リオネルの魔力感知……索敵に反応があった。
索敵レベルが著しく上がった今のリオネルには、1kmで存在のみ、
500mまで接近すれば正体と内訳を、そして300まで接近すれば、悪意の有無を捕捉する事が可能だ。
リオネルの眼差しが鋭くなる。
「ミリアン、カミーユ、敵だ!」
「うわ、早速?」
「リオさん!」
「落ち着け。距離はまだ約500mある! 敵の内訳は上位種のオークオフィサー、オークソルジャーが各1体、ノーマルタイプオークが10体、……さっきのオークカーネルよりも敵が脆弱で、小群だ」
ここでカミーユが、「はいっ!」と手を挙げる。
「さ、さすがっす! リオさん! お、俺! シ、『シスターファースト』で! ね、姉さんに! せ、先手を譲るっすう!」
弟の物言いを聞き、ミリアンが呆れる。
「カ、カミーユ! あ、あんた! 『シスターファースト』って、単にビビっているだけでしょ!」
「ね、姉さんこそっ! 怖がっているっすよ!」
苦笑したリオネルが姉弟の間に入る。
「まあまあまあ。じゃあ、『シスターファースト』でミリアンから行こう。作戦は、まず俺が威圧で、奴らの動きを止める。俺が合図をしたら、ミリアンの魔法『冷気』により、ダメ押しで奴らを戦闘不能にする」
「はい!」
「その上で、俺が『安全確認』を兼ね、奴らに突撃し、倒す。ここで、ミリアンが接近し、奴らを倒す。初めてのオーク戦で直接の物理攻撃が生理的に困難なら、少し離れた場所から、遠距離攻撃。魔法でも魔法杖でもOKだ」
「OK! ありがとリオさんっ♡ おそましい好色オークが苦手な女子の気持ちを、よ~く分かってくれてるね♡」
リオネルの指示を、当のミリアンは勿論、
以前「話をしっかり聞け」と怒られたカミーユも熱心に聞いていた。
ミリアンもカミーユも着実に成長している。
将来の為、俺が一緒のうちに、少しでも経験を積ませ、更に成長させてやりたい!
目を輝かせ、自分の話に聞き入る双子の姉弟を見つめながら、
リオネルは改めて決意していたのである。
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