表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

196/758

第196話「教師ケルベロス」

翌日朝、地下6階層への出入り口……


「おっはあ!」


と、前夜交わした約束通り、 身長2mの巨躯を持つ好漢、

サブマスター、ブレーズの副官、ゴーチエ・バラデュールが「にこやかな」表情で、

手をぶんぶん振っていた。


「おはようございます!」

「おはようございます! ゴーチェ様!」


ゴーチェの同行も、やむなしと割り切った、

モーリスとリオネルは大きな声であいさつしたが……


「おはようございます」

「おはようございまっす」


ごり押しのゴーチェに、渋い表情のミリアンとカミーユは、

ややトーンを抑えてあいさつした。


挨拶した後、姉弟は肩をすくめ、小さな声で話し合う。


「何が、おっはあよ……ゴーチェ様、呆れた粘着おじさんだわ……」

「姉さん、これ(から)め手っす」


「搦め手?」

「そうっす。俺達におごりで、連日ガンガン食わせ、ギルドの正式依頼という形にした上、強引に押せ押せで来たっす。これじゃあ、絶対にゴーチェ様の同行を断れないっすよ」


「うっわ、大人の策略う」

「ホント、ずるがしこいっす」


そんなミリアンとカミーユの会話が、聴力がビルドアップしたリオネルの耳へ入って来る。


しかし……リオネルは少し別の見方をしていた。


姉弟の言う通り、ゴーチェがごちそうしてくれた上、

依頼という形にしてまで同行する目的は、

「自分をどこかの貴族家へ、養子として、入れようとしている」

のは間違いないと思う。


そもそも、今回の方法に関しては、ゴーチェだけでなく、

ブレーズの『指示』もあるに違いない。


だが……ゴーチェは勿論の事、

ローランドとブレーズが強引に『囲い込み』に来ないのは、

リオネルに対し、相当気を遣っているのだとも考えられる。


そして、はっきりと断ったのに何度も何度も誘うのは……

もしもリオネルが旅路の果てに、ソヴァール王国へ戻らなかった場合の、

『保険』もかけているのだ。


万が一、王国から何か『突っ込み』があった場合には、

「やる事はやりました」「リオネルの説得には最善を尽くしました」

そう勧誘の事実関係を作っておき、非難されても問題ないように、理論武装しておくと。


自分がそこまで期待され、望まれるのは花なのだが……

やはり、まだまだ旅を続けて、数多の人々と邂逅(かいこう)したいと、

リオネルは思うのだ。


そんな事を「つらつら」考えるリオネルに、


「じゃあ、並びは昨夜の打合せ通り、俺は殿しんがりに陣取らせて貰うぜ」


守衛が最敬礼する中、ゴーチェは『すまし顔』で、最後方に位置したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


地下第6階層に降りたリオネル達。


ここから先は魔導灯がない。

真っ暗闇である。

冒険者は、照明魔法か、携帯の魔導灯を使うしかない。


という事で、いつものようにリオネルは、出入り口から入った瞬間、

まず照明魔法『魔導光球』を召喚して行先を淡く照らした後……

更に魔獣ケルベロスも召喚。

『先導役』として放った。


但し、一行は、各自が革兜にベルトでつけるタイプの魔導灯は装着している。

なので、自分の行先が見えないという事はない。


さてさて!

ゴーチェが言っていた通り……

昨夜は急きょ参加のゴーチェを交え、5人は作戦会議を行った。


地下6階層はオークオンリーのフロアである。


上位種は、レベル50オーバーといわれるオークの最高位『オークキング』

同じくレベル40オーバーの『オークジェネラル』は出現しないものの……

既にリオネルが戦った、

レベル35オーバーの『オークカーネル』が低確率で出現する。


主には、オークレベル30オーバーの『オークオフィサー』

レベル20オーバーの『オークソルジャー』が出現。


上位種が『ノーマルタイプ』のオークを率いて襲って来るのを、

迎え撃ち、戦うという傾向である。


いろいろ検討した打合せの結果、フォーメーションは、

魔獣ケルベロス、リオネル、カミーユ、ミリアン、モーリス、

最後方の殿しんがりに、ゴーチェである。


カミーユとミリアンは、引き続き前衛を希望したが……

ふたりにとって、オークは未知の相手である。


上位種は尚更であり、『オークカーネル』だとレベルに差がありすぎて危険。

オークサージやオークソルジャーでも荷が重いとリオネルが判断。

相手の構成や状況を確認した上で、戦うという事になったのである。


そもそも地下階層6階以降は中級者レベル推奨であり、

ミリアンとカミーユがリオネルに絶大的な信頼を置いている事もあり、

異論は全く出なかったのである。


またゴーチェの乱入に関しても、リオネルは前向きに考える事にした。


歴戦の騎士であり、勇猛果敢な冒険者でもあるゴーチェは、

『盾役』として、とても有能だとブレーズからは聞いていた。

であれば、後方から敵に襲撃された場合は、

頼もしい『盾』となってくれるだろうと。


さてさて!

リオネル達がしばらく進むと……

先行したケルベロスが、『念話』でリオネルへ連絡をして来る。


低く重い声がリオネルの心に響く。


あるじよ、敵だ。……当然、捕捉しているな?』


『ああ、いきなり出やがった。このフロアでは最強の上位種オークカーネルが……距離は500m先、レベルは、36か。それと上位種のオークオフィサーが2体、オークソルジャーが3体に、ノーマルタイプのオークも30体ほど居る。……放つ波動全てが、ギラギラしている。殺気に満ちていやがるぜ』


『ああ、主よ、その通りだ……どうやら、貴方の索敵が、……魔力感知レベルが上がったようだな?』


『ああ、そうみたいだ……手に取るように捕捉出来るよ』


『ふむ、落ち着いているな。その雰囲気だと、我のアシストは不要のようだ。今の主なら、オークカーネルなど、問題なく勝てるだろう。……存分に戦い、仕留めてみせよ』


『了解!』

 

現在『レベル17』のリオネルにとって、

『レベル60』オーバーの魔獣ケルベロスは『超』が付く『格上』である。


そして、従士でありながら……相変わらず教師然としてふるまうケルベロス。


とても頼もしいと感じながらも、

『超劣等生で罵倒され続けた魔法学校の学生時代』を思い出し、

リオネルはつい、苦笑してしまったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!

《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス刊

宜しければ、第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。

HJノベルス様公式サイトでは試し読みが可能です。

お気軽にどうぞ!


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス刊)

既刊第1巻~5巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。


またこちらの「Gファンタジー」様公式HP内にも特設サイトがあります。

コミカライズ版第1話の試し読みが出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版がご愛読可能です!

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、他作品のご紹介を。


新作を公開しました。!

⛤『騎士をやめて花嫁修業しろと言われた私は、公爵家お嬢さま御付きの騎士メイドとなりました!』


そして下記の作品も宜しくお願い致します。


⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》


⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!


⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》


他の作品もありますので、何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ