第188話「リオネルVSポルターガイスト」
びしゅっ!
ぶん!
ぶわっ!
と大気が唸った。
そして、いきなり! 剣とメイスがいくつも、
リオネル達へ向かって、凄まじい速度で飛んで来た。
しかしリオネルの動体視力、そして俊敏さは半端ではない。
素早く棍棒を抜くと、目まぐるしく左右に動き、または「ぱっ!」と飛び上がり、
飛んで来た剣とメイスを、見事に叩き落とした。
ガラン! ガラン! ガラン! ガラン! ガラン! ガラン!
叩き落とされた武器は、飛ぶ力を失い、迷宮の石造りの床に転がった。
「う、うっわあ! い、いきなり武器が飛んで来たっすう! い、一体! ど、どうしたっすかあ!?」
不死者のフロア地下3階層で、このような攻撃を行うのは、
唯一、と言い切って構わない。
驚き大声で叫ぶカミーユへ、傍らのリオネルと後方のモーリスが同時に叫ぶ。
「「ポルターガイストの投擲攻撃だ!!」」
対して、ミリアンとカミーユの声も重なる。
「「ポルターガイストうう!? 投擲攻撃ぃぃ!?」」
ここで再び、補足しよう。
ポルターガイストとは、姿を見せず大きな物音を立てたり、物体を移動させたりする人外である。
その正体は精霊や亡霊等の諸説あるが、
この世界では『亡霊の一種』か、
姿の見えない、あるいは意図的に姿を消した『人外のいたずら』だと言われている。
ポルターガイストには、起こす音で驚かしたり、荷物を持っていったり、
果ては手あたり次第に、
物を投げつけて来る『投擲』いう性癖がある。
しかし!
リオネル達めがけてポルターガイストどもが投げたのは、
この迷宮で魔物に敗れたか、何らかの理由で斃れた冒険者達の、
『打ち捨てられた武器』であり、明らかに『殺意』があった。
断じて、「驚かせるだけ」とかの、『いたずら』レベルではない。
と、ここで不死者バトルの経験に長けたモーリスの声が飛ぶ。
今回の探索におけるクランリーダーは、一応リオネルだが、
ベテラン冒険者モーリスの経験に基づく指示及びアドバイスは貴重である。
「リオ君! ミリアン! カミーユ! 姿は見えない! だが、私はポルターガイストの! 奴らの気配……魔力の放出をしっかりと感じる! 奴らも亡霊や他の精神体と同じ、魂の残滓、すなわち魔力の塊だ!」
モーリスは武器が飛んで来た方角をじっと見据え、大きく息を吐く。
「……うむ! ポルターガイストは、数十体は居ると思う! 慌てず落ち着いて、奴らの気配を感知し、所在を確かめよ! 投擲攻撃を躱せ! そして、破邪聖煌拳の奥義、触れずして倒す、破魂拳で反撃するのだあ!」
「師匠! そ、そう言われてもぉ! 困っちゃう!」
「師匠! 俺も姉さんと同じっすう! 武器が飛んで来た方向を見てもっ! 何となく、敵が居るとしか分からないっすう!」
戸惑うミリアンとカミーユ。
ここで、棍棒を構えたリオネルが、カミーユをかばうように、
「ずいっ」と、前に出る。
「大丈夫! 任せて! 俺は、奴らの魔力をしっかり感じます!」
リオネルの行使する索敵のギアが上がった。
同時に、
ぶん!
と、虫の羽音のような幻聴が聞こえる。
内なる声が発する、例のファンファーレは鳴らない。
しかし!
どうやら索敵の『魔力感知』……その「感度が上がった」ようである。
見えた!
魔力が……人型をした、魔力の塊がたくさん!
こいつらが!
ポルターガイストかあっ!
「きっ!」と鋭く投げかけたリオネルの眼差し……瞳には、
人型の霊体が数多、はっきりと捉えられている。
勝てる!!
こんな奴らは簡単に倒せる!!
確信に満ちた内なる声が、リオネルの心に響き渡った。
心の内なる声に後押しされ、……リオネルは、勝利を確信する。
肉声には出さず、心で念じる。
まるで、魔法を行使する言霊の詠唱のように。
自分が習得した、『スキル』と『特技』を行使する順番をだ。
よし! ポルターガイストどもの『所在』を見切った!
奴らのレベルはMAXでも、せいぜい『20』から『25』の間!
対して俺は『レベル17』
プラス40の補正がかかったスキルなら、『レベル56』の敵まで効果を発する!
特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40行使!
行動不能にして、ターゲットロックオン!
次いで葬送魔法、『昇天』を連射あ!
そしてぇ、破邪聖煌拳奥義、
『破魂拳』も連射あ!
姿を消し、高速で自在に宙を舞い、投擲攻撃も仕掛ける、
ポルターガイストなのだが……
魔力感知で所在をしっかりと確定され、魂の波動で動きを追われたら、
特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス40の使用もあり、
動きを止める事も可能な、リオネルの敵ではない。
単に「ふわふわ」と空中に浮かぶ、的と化す!
しかも!
空中を飛ぶ敵の『撃墜』は、今のリオネルなら大得意。
対ウィルオウィスプ戦での葬送魔法『昇天』発動で、たっぷりと経験を積んでいたからだ。
加えて、とどめは、先ほどカミーユとともに戦った際に極めた、
モーリス直伝、破邪聖煌拳奥義、
破魂拳の連射である。
「おお! 数十体のポルターガイストの気配が!? つ、つ、次々と消えて行くぞぉ!!……す、す、凄いぞぉっ!! リ、リオ君っっ!!!」
モーリスが驚く通り、出現したポルターガイストは、
リオネルにより、動きを止められた後、次々と撃ち落とされ、
葬送、破邪の効果により、消滅して行き、遂には全滅した……
この間、わずか10分足らず……
全属性魔法使用者として覚醒し、
習得した4大属性全ての魔法を使うまでもなく……
リオネルは襲って来たポルターガイスト数十体全てを、
たったひとりで討伐、一蹴したのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス刊
宜しければ、第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
HJノベルス様公式サイトでは試し読みが可能です。
お気軽にどうぞ!
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス刊)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
またこちらの「Gファンタジー」様公式HP内にも特設サイトがあります。
コミカライズ版第1話の試し読みが出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版がご愛読可能です!
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、他作品のご紹介を。
⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》
⛤『気が付いたら下僕!隙あらば支配!追放大歓迎!実は脱出!マウントポジション大好きな悪役令嬢よ、さようなら!の俺が幸せになるまでの大冒険物語!
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
他の作品もありますので、何卒宜しくお願い致します。




