第17話「新たな敵へ挑もう!②」
草原から街道に戻るまで2㎞。
街道から渓谷へ入る脇道まで3㎞。
林の中を貫く脇道を更に5㎞ほど奥へ歩くと『ゴブリン渓谷』の入り口となる。
敵襲を想定し、気を抜かず、五感を鋭くし、索敵を行いながら、リオネルは歩いて行く。
時々地図を見て、現在位置を確認する。
脇道へ入るまでは特に何もなかった。
しかし脇道へ入って歩く事1㎞。
索敵に気配を感じた。
何かが来る!
ここで訓練した木登りが役に立つ。
リオネルは、身をひるがえすと、速攻で木に登る。
高さは5m、直接地面に飛び降りられる高さだ。
枝の間に、身を潜める。
木登りと隠形の技は、猫とリスの能力から、彼の心身に刻まれていた。
……息と気配を殺して待つと……
眼下をゴブリン5体が通り過ぎる。
リオネルはじっと隙をうかがった。
ゴブリン達は何か特別な目的があるわけではなさそうだ。
やがて好物の昆虫でも見つけたのか、一体がリオネルが隠れる木の下へ来た。
他のゴブリン4体とはだいぶ離れた。
今だ!
リオネルはスキル『フリーズハイ』を3連射。
身体が硬直したゴブリンは、小さな音を立て倒れこんだ。
やった!
確かゴブリンはレベル8の格上。
俺は格下のレベル7で、スキルが有効か半信半疑だったが、上手く効いてくれた。
チラ見すれば、ゴブリンは完全に動きを止めている。
リオネルは素早く、そして猫のように音もなく木から飛び降り、動けないゴブリンをサクスで貫き、とどめを刺したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
だいぶ離れていたとはいえ……
ゴブリンの防衛本能は鋭かった。
仲間に起こった異変を感知し、けたたましく咆哮する。
きゃおおおおおおおおおんんん!!!
殺気に満ちたゴブリンはギロリと眼差しを向け、リオネルを視界に捉えると、襲い掛かって来る。
しかしリオネルにとっては想定内。
試したい事もある。
そう、風の攻撃魔法を試すのだ。
やや魔力を強めにして放ち、威力がどれくらいあるのかを。
きええおおおおおおんんん!!
リオネルの風弾の射程は約200m。
「ビナー、ゲブラー、風弾!」
どしゅ! どしゅ! どしゅ!
ぶちゃつつつ!!
リオネルが放った重い大気の塊が3発命中。
ゴブリンの体躯をあっさり打ち砕いた。
同時にその一体は絶命する。
猿のようなゴブリンは固い表皮を持っていない。
逆に柔らかい。
スライムよりは固いが、人間よりやや上くらいだ。
「よし! 風弾はOK! 次は風矢だ!」
ひょお! ひょお! ひょお!
またもリオネルの双手から繰り出された大気の矢が、本物の音のように音を立てて飛び、ゴブリンを射抜く。
どしゅ! どしゅ! どしゅ!
複数の鋭い大気の矢じりが、ゴブリン一体をあっさり貫いた。
先ほどと同じく絶命する。
きええおおおおおおんんん!?
仲間3体をあっさり倒され、残りのゴブリン2体は戸惑い、動揺した。
同じような咆哮だが、威嚇から助けを求めるものと変わっていた。
少々調子が違うからだ。
あまりグズグズしてはいられない。
ゴブリンは、基本的に群れで行動している。
こいつらの『救援要請』を聞きつけ、近くに居る仲間が駆けつけるかもしれなかった。
リオネルはすかさず、特異スキル『フリーズハイ』を3連続で2回発動した。
最初に倒したゴブリン同様、2体は身体を硬直させ、崩れ落ちる。
ゴブリンの身体はオーガやオークなどに比べとんでもなく安いが売れる。
皮は細工物の原料となり、肉は肥料となるのだ。
魔法で砕いた奴らは売り物にならないから、リオネルは最初に倒したものと合わせ、3体を確保するつもりだ。
その為に、倒し方には注意する必要がある。
リオネルはまず剣で急所をひと刺しして1体へとどめをさすと、もう1体は手甲代わりに装着した小型盾で、シールドバッシュして倒す。
ともにゴブリンの身体を粉々に破損させない配慮だ。
と、その時。
ビルドアップしたリオネルの研ぎ澄まされた魔力感知、五感のうち聴力が、
こちらに向かって来る多くの魔物の気配を捉える。
これも想定内。
リオネルはダメージを少なく倒したゴブリン3体の骸を手早く収納の腕輪へ入れた。
そして事前に確認してあった退路付きのポジション、最寄りの木の上15m、うっそうとした茂みの中へ身を潜めた。
リオネルが上った一帯は木々が密接し、四方へず~っと先までつながっている。
まるで猿みたいな容姿のゴブリンだが……
木登りが上手いとかいう話はあまり聞かない。
樹上より洞窟深くに好んで住むという情報が多い。
今や木登りAランクのリオネルなら、いざとなれば木から木へ飛び移って、ゴブリンどもから逃げ切る事も可能だろう。
迫られたら、魔力不要の『フリーズハイ』で足止めする。
ということで退路はバッチリだ。
さてさて!
息と気配を殺し、リオネルが樹上に潜んでいると……
ゴブリンの小群がやって来た。
静かに気づかれないよう数えてみれば、20体居る。
ゴブリン達はリオネルが倒した仲間の亡骸を見つけ、悲しみ泣き叫ぶ。
その様子を見て、少しだけ心が痛む優しきリオネル。
しかしゴブリンどもは罪なき農民や旅人、商人を襲い容赦なく食い殺す恐ろしき人外である。
同情の余地は全くない。
気持ちを切り替え、リオネルは計算する。
ゴブリンは1体につき経験値が20。
全て倒せば、先ほど倒したゴブリンと合わせ、経験値を500獲得出来る。
先にスライムを603体、既に経験値603を獲得している。
内なる声によれば、レベル8までは後、1,000だった。
つまりコイツらを倒せばレベルアップ確実だ。
そして更にリオネルは考える。
先ほど行使した風の攻撃魔法だが……
2体倒した使用量と残っている体内魔力の兼ね合いを考えれば、目の前のゴブリンを全て倒す事は可能であると。
万が一倒せない場合は、残ったゴブリンへ特異スキル『フリーズハイ』を行使し、
動けなくしたまま、逃げ去れば良いのだ。
作戦は決まった。
リオネルはゴブリン達へ気配が伝わらぬよう、こっそりと体内魔力を上げ始めた。
そして頃合いを見て、討伐を開始する。
まずは『フリーズハイ』を3連発し、狙い撃ちしやすいように3体のゴブリンの動きを止め、風弾で撃破。
いきなり樹上から奇襲を受け、泡を食らったゴブリン達は大混乱した。
しかし、リオネルは慌てず同じ攻撃を繰り返して行く。
ゴブリン達はすぐ樹上のリオネルに気が付いたが後の祭り。
あっという間に討たれ、全滅してしまったのである。
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