第157話「とんでもない提案」
「さあて、じゃあやっちまうか。洞窟探索と討伐」
「はいっ!」
「はいっす! 2度目だから、大丈夫っす! ほんの少しだけど慣れたっす!」
リオネルが促すと気合充分のミリアンとカミーユの返事は打てば響くの如しだ。
ゴーチェも張り切っている。
「よし! リオネル君、行くか!」
ここでリオネルが質問。
「ゴーチェ様、念の為、失礼を承知でお聞きしますけど、洞窟探索と閉所での戦闘経験はおありですか?」
「うむ、洞窟はそこそこだ。遺跡や迷宮は結構経験はあるが、な」
「そうですか。もしも不慣れでしたら、洞窟外でお待ちいただいても。万が一ですが、ケガでもしたらまずいですし、休憩を兼ねていかがです?」
リオネルが申し入れすると、ゴーチェは「嫌だ!」とばかりにぶんぶん首を横へ振った。
「いや! 同行する! ケガを恐れていては護衛役は勿論、騎士の職務は務まらん!」
「そうですか……では、行きましょう」
「よし! リオネル君、行こう!」
「じゃあ、全員出発!」
「出発っす!」
わう!
というわけで、ケルベロスを連れた4人はゴブリン残党が潜む洞窟の出入り口へ……
ここで、ひょいひょいっと、リオネルが『猪パワー』を発揮。
昨日、洞窟封鎖の為、積み上げた大岩を除けて行く。
以前より、パワーが増したとリオネル自身が思えるのは、猪と同時に『馬の能力』も併せて発動しているせいらしい。
何せ馬力という言葉は、荷車を引く馬の力が元となる馬1頭の仕事率から来た言葉である。
ちなみに1馬力は、75キログラムの物体を毎秒1メートル動かす――持ち上げる力だ。
「うむ、凄い。その細い身体のどこにそんな豪傑パワーが隠されているのだ?」
「凄いっ! カッコいいっ! 細マッチョのリオさん百人力!」
「いや、姉さん、千人力っすよ!」
さてさて!
次に4人は頭部に装着した携帯魔導灯の明かりを灯す。
照度を最低レベルに絞る。
あまり明るいとゴブリンどもに察知されやすいからだ。
まあ、ケルベロスが先導する時点で、ゴブリンどもは逃げるから、あまり意味がないが。
まあ、訓練を兼ねた討伐なので、リオネルは細かい事をスルーする。
次いで、リオネルが照明魔法の『魔導光球』を呼び出す。
こちらも照度を絞る。
ぎゃう! ぎゃう! ぎゃう! ぎゃう!
ぎゃう! ぎゃう! ぎゃう! ぎゃう!
4人の気配を察したのか、奥からゴブリンどもの声が聞こえて来た。
ひと晩カンヅメにされたから、空腹もあり、相当イラついているようだ。
「では進みますよ。……ゴーチェ様、敵は勿論、洞窟の天井と足元には充分にご注意を! ミリアンとカミーユもだぞ」
「おう!」
「はいっ!」
「はいっす!」
「よし、ケル、GO!」
「わう!」
というわけで、ケルベロスが暗闇の中を先導……
リオネル達4人は魔導光球がふわふわ飛ぶ中、淡い魔導灯を頼りに洞窟内を進んで行く。
全員リオネルが事前に注意したから、さすがに慎重である。
しばらくすると、
ごははああっ!
と少し前方で、暗闇の中からびりびり空間を響かせる咆哮が聞こえた。
「おわ!? な、何だ?」
ゴーチェがびっくりするが、リオネルは平気、以前王立墓地でケルベロスの声を聴いた経験があるミリアンとカミーユも同様である。
「大丈夫、先行したケルがゴブリンどもへ威嚇しただけですよ」
「うん! ケルちゃん頼もし~♡」
「でっすぅ!」
「そ、そうか! そ、それにしても、す、凄い声で吠えるな……やはり、あいつは、使い魔どころじゃない、相当な『魔物』だぞ」
ゴーチェが同意を求めるように言うが、リオネルは軽くいなす。
「ええ、そうあって欲しいですね。俺には忠実ですから」
「ふうむ……」
という事で……
ケルベロスが先導する中、4人は洞窟の最奥へ進んで行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
3時間後……
洞窟内の掃討を終えた4人は、ケルベロスとともに洞窟内から出た。
当然、全ての死骸はリオネルが葬送魔法で塵にしている。
今回の討伐数は87体……
リーダーは最奥に潜んでいた上位種のゴブリンサージ。
ミリアンが水属性魔法、『水弾』でとどめをさした。
姉の満面の笑みを見て、弟カミーユが悔しがったのはいうまでもない。
今回の討伐行はミリアンとカミーユが殆ど倒し、リオネルとゴーチェが数体倒しただけ。
双子の姉弟の訓練という主旨は果たせたといえるだろう。
そして……リオネルもちゃっかり便乗。
ゴーチェの繰り出す騎士としての強靭な剣と防御を間近でしっかり見届けた。
そう、お約束の『見よう見まね』が発動。
『騎士の武技』初歩をしっかり習得したのである。
まさに「転んでもただは起きぬ」を体現していた。
「よし! ゴブリンの討伐は完全終了! じゃあ全員へ俺が回復魔法をかけま~す」
回復の上位魔法『全快』が4人とケルベロス全員の心身を熟睡直後のように爽快とした。
リオネルとケルベロスの疲労は皆無に近く、ゴーチェも充分に元気。
ミリアンとカミーユはさすがに疲れていたが、魔法の行使後は全員が同じく元気はつらつとなった。
ミリアンとカミーユは感嘆。
「リオさん、本当に凄い! 伝説の賢者様みたいっ!」
「本当に賢者様っす! リオさん、最近ますます神々しいっす」
「おお、賢者かあ……ありがとう。なりたいし、なれると良いなあ」
「リオさんなら、絶対になれるって! 勇者にだって、なれるかも♡」
「そうっす! 姉さんの言う通りっす! リオさんの進化を見ていると、予感が確信に変わって行くっすよ!」
ばうばう!
ケルベロスまでが嬉しそうに吠え……
そんな様子を見ていたゴーチェ。
「よし! 決めたぞ!」
と手をぽん!と叩いた。
リオネルが尋ねる。
「何をですか?」
「うむ! リオネル君を俺からブレーズ様へ推挙する! ブレーズ様がある筋から、以前より頼まれていた件があるのだ!」
「え? 俺を推挙? ブレーズ様がある筋から、以前より頼まれていた件?」
リオネルが尋ねると、ミリアンとカミーユも気になったようだ。
「何ですか、ゴーチェ様」
「どういう事です?」
「はははは! ワレバット近郊にある貴族家の婿養子の件だ! もし養子になれば!リオネル君は次期当主となり、『美貌の麗しき貴族令嬢』を『妻』にする事が出来るぞぉ!」
「「「え~~!!!???」」」
『とんでもない』ゴーチェの提案に、当のリオネルは勿論、ミリアンとカミーユも大いに驚いていたのである。
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