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第156話「成長して行くミリアンとカミーユ」

翌朝……

もろもろの段取りが決まり、リオネル達は再び、始動する。


リオネル達以外にも村の広場には一般村民の殆どが集合していた。

昨日、リオネルがゴブリンどもへ大打撃を加え、本拠たる巣穴の洞窟を『封鎖』した。

なので安全がある程度確保されたということで……

村民達も安心し、普段の『日常』を再開し始めたのだ。


不足していた生活物資も充分に十分に配給され、不自由さも緩和し、備蓄もされた、

当然、自分達の村の復興、再開発なのでとても気合が入っている。


本格的に始動したブレーズはモーリスを伴い、農地へ赴く事となった。

ブレーズの護衛を兼ねた農民出身の冒険者、村長、助役、村の自警団員達も一緒である。


農地の防護壁建設の下打ち合わせが終わったので……

今日はモーリスの地の魔法を発動し、防護壁を設置。


耐久度、使い勝手のチェックが終われば、明日から農民達が農地へ出向く。

そして散々に荒らされた農地の復興、開拓、耕作に臨むという流れだ。


昨日の話だと、「禍を転じて福と為す」のことわざ通り、村長は既存の農地を一気に拡大し、生産量アップを狙うという。

その前向きな姿勢も、リオネルが農地に跋扈していたゴブリンどもを追い払ってくれたお陰だと喜ぶ。

その上、リオネルがゴブリンどもを追撃。

本拠を突き止め、大打撃も与えたと聞き、村民全員のモチベーションが一気に上がったというのだ。


そのリオネルは……

災いの禍根を断つという事で、残党のゴブリンどもを完全に討伐すべく、ミリアンとカミーユを連れ、洞窟へ赴く。

当然、3人には、ブレーズの副官ゴーチェも同行していた。


ゴーチェはブレーズへ宣言した通り、片時もリオネルから離れない。

正直だいぶ「うざい」のだが、まさか「嫌だ」とも言えず、リオネルは苦笑していた。


という事で……

先ほど召喚したケルベロスを先頭に、リオネルとゴーチェが歩く後をついて、

ミリアンとカミーユは歩いている。


リオネルにぴたりとくっつくゴーチェ。

カミーユが呆れたように言う。


「姉さん」


「なあに、カミーユ」


「さすがにあれじゃあねえ……リオさん……可哀そうっすよ」


「まあ……ねえ」


「ゴーチェ様のお役目柄、仕方がないといっても、ほぼストーカーっすね」


「う~ん。確かに……そうかも」


という、双子姉弟の話が聞こえていたとしても、当のゴーチェはおかまいなしである。


「おい! リオネル君!」


「はあ」


「今日は洞窟に残るゴブリンどもを一気に殲滅するんだろう?」


「……まあ、そうです」


「うむうむ! それで、どんな作戦で行くんだ?」


「いえ、作戦も何も、地道に洞窟へ潜って、コツコツ討伐しますよ」


「はあ? 地道に洞窟へ潜って、コツコツ討伐だと? 昨日同様、あの『ケル』に『勢子』をやらせ、追い立てて倒せば良いじゃないか。その方がリスクも少ないし、はるかに効率的だ」


ゴーチェは、ゆったりと先導する灰色狼風のケルベロスへ視線を向けた。


「いえ、今日の討伐行は、ミリアンとカミーユの修行……つまりふたりのゴブリン討伐と洞窟の探索訓練が主旨であり課題です。今日はふたりにとっては2回目の洞窟探索となりますし、俺自身も、フォルミーカ迷宮とか、今後の探索に備えての経験値にしたいですから」


さりげなく混ぜた、リオネルの次の目的地を耳にし、ゴーチェは過敏に反応した。


「な、何? フォルミーカ迷宮だと? あんなところは、ここからだとずいぶん遠い、それも他国じゃないか」


「はい、俺、目途がついたら、いずれワレバットの街を出るつもりなので」


「い、いずれワレバットの街を出る!? な、な、何だとぉ!」


ばうっ!


思わず叫んだゴーチェの大声に、「その通りだ」と反応したのか……

先頭を往くケルベロスが、歩きながら軽く吠えたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


そんなこんなでくだんの洞窟へ到着した。

出入り口は、リオネルがふさいだままとなっていた。


残党のゴブリンどもは、洞窟内に『そのまま』のようだ。

まあ、とりあえず『順調』という事である。


しかし……

「順調ではない者」がひとり居た。


ゴーチェである。

リオネルがいずれワレバットの街を出て、他国の迷宮へ行くと聞き、戸惑い憤っているのだ。


「何故だ? どうしてだ? 納得いかん!」


「と、言われても。俺はもっともっと広い世界を見て、たくさんの人達にも出会いたいので、ワレバットに安住する気はありません」


困惑するリオネル。


と、そこへミリアンとカミーユが加わって来た。


「なになにぃ?」


「どうしたっすか?」


「いや、実は……」


リオネルが理由を話すと……

ゴーチェがすかさず言う。


「君達も止めてくれ! リオネル君がいずれワレバットの街を出て行くと言うのだ! それもフォルミーカ迷宮へ! 他国へ行くというのだぞ!」


しかし、双子の姉弟は……意外にも淡々としていた。


「仕方がないでしょ、それ。私達姉弟も修行が済み、お金が貯まったら、ワレバットの街を出て、キャナール村へ移り住むつもりですし」


「そうっす! リオさんが難儀する多くの人達を助けながら、自分の限界を突破したいと願っているっすから、笑顔で見送るしかないっす!」


「おいおい、そんな事を言って、君達は寂しくないのか! リオネル君と別れる事となるのだぞ!」


「ゴーチェ様、仕方がないわ。遠く離れ離れになるのは、すっごく寂しいけれど……リオさんと私達、心と心は一生つながっているから」


「そうっす! 俺達とリオさんの往く道は違うっす。人生は、別れと出会いの連続っす。だから今この時を大事に生きるっすよ、ゴーチェ様」


あっさりした物言いのミリアンとカミーユ。


実はその裏には、双子の姉弟の

『リオネルとの別離に対する底知れない寂しさと深い哀しみ』が、隠されているのだが……

そうと知らないゴーチェは嘆息する。


「な、何だ、君達は!? 人生を達観しているなあ……」


禍を転じて福と為す……ではないが……

いつかはこの話をしようと思っていたリオネル。


成長して行くミリアンとカミーユの、大人な態度にとても嬉しくもあり、

一抹の寂しさも感じていたのである。

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