第142話「まあ良いや、結果良しで。もろもろ順調だしな」
『うむ、そうだ、我は魔獣ケルベロスだ』
リオネルが尋ねると……
灰色狼風の犬、ケルは自分の正体をあっさりと認めた
あまりにも有名な魔獣なのでご存じの方も多いと思うが、念の為補足しよう。
ケルベロスは、冥界の入口を守護する魔獣である。
冥界の王に仕え、亡者の出入りを監視する役割を持つという。
オルトロスという弟が居る。
……リオネルが読んだギルド所蔵の古文書によれば、
「轟く咆哮は人間、魔物を問わず麻痺や気絶の効果がある」
「その口からは冥界の業火を吐く」などと記してあった。
先ほど、グールどもをスタンさせ、焼き尽くしたのは記されていた咆哮と業火であろう。
そしてケルベロスには、更に隠された能力が数多あると放つ波動から感じられる。
そもそもケルベロスのレベルは『60』以上の猛者。
普通に考えれば、どうにか使い魔を召喚出来るリオネルには、到底不可能な召喚対象である。
話を戻そう。
自ら正体をケルベロスと認めた灰色狼風のケル。
リオネルは苦笑し、軽く息を吐く。
『はあ、あっさり肯定か。で、どうなんだ?』
『そこまで主が命ずるのなら、我は本体となってやろう』
『そっか、ありがとう。ええっと………一瞬待て、考えるから』
ぱぱぱぱぱぱ! とリオネルは思考をめぐらせる。
すぐに考えはまとまった。
という事で、リオネルは指示を出す。
「よし、じゃあとりあえず、管理小屋まで全員で移動」
「わ、分かった。リオ君に何か考えがあるのだな?」
「分かりました、わっくわく~!」
「姉さん、俺は嫌な予感がするっす。気絶しても知らないっすよ」
「うっふふふ、カミーユ。だってさあ、怖いもの見たさって、あるじゃないのよぉ」
というわけで、全員で管理小屋へ移動。
ケルだけは中へ入れずに、開け放った扉の前で待機させた。
改めて周囲を見る。
王立墓地はワレバッドから3㎞ほど離れた郊外にあるし、今夜はリオネル達以外に誰も居ない。
索敵にも人間の気配はない。
「みんな、それぞれ、管理人さん用のベッドに腰かけてください」
王立墓地の管理人は夜勤も多い。
ベッドは5つ置いてあった。
リオネルの言う通り、全員がそれぞれ管理人用のベッドへ腰かける。
さあ、これで準備万端だ。
リオネルは自分へ鎮静の魔法をかけておく。
冷静さが更にアップした。
「OKだ! さあ! ケル! 本体を見せろ!」
「わおん!」
ひと声鳴いたケルは、身体を「ぶるっ!」と震わせた。
放つ気配が一気に巨大化する。
ケルの身体が「ぶれた」ようになり、「ぶわっ!」と大きくなる。
そして劇的に変化!!
「ごっはあああああああああっつ!!」
凄まじい咆哮とともに出現したのは言い伝え、もしくは古文書にある通りの魔獣であった。
体長は約15m、体高は3mを超える巨大さ、3つの頭を持ち、竜の尾と蛇のたてがみを持っていた。
「うわあああああああああっっっ!!??」
冥界の魔獣を目の当たりにし、百戦錬磨のモーリスも仰天し、気絶!!
ベッドの上へひっくり返った。
「ぎゃああああああああああああ!!??」
「ひえええええええええええっっ!!??」
ミリアンとカミーユも速攻で気絶。
ベッドの上で、のびてしまった。
ひとり冷静に立っていたのはリオネルである。
「ふう、予想通りだ、こうなると思ったよ……」
苦笑したリオネルは念話で、ケル――魔獣ケルベロスへ話しかける。
『さあてと……ついでだからケル、今後の為、いくつかケルの形態を決めておこう。こうやって本体に戻れるから、変身は可能だよな」
『ああ、自由自在だ。命じてくれれば、どうとでもなる』
リオネルは『全て灰色狼姿』で、子供の狼、最初の召喚時に現れた体長2m体高1m以上の超大型の大人、そして本体よりは小さめでも、体長5mで体高2m強バージョンにも変身させた。
リオネルは変身する度、じっくり眺め、満足そうに頷く。
『こんなもんだな……今夜はいろいろありがとう、お疲れ様。今後も宜しくお願いするよ』
『うむ……主よ、今後とも宜しく。また呼んでくれ』
『帰還』
召喚解除の魔法を行使すると、ケルベルスは煙のように消え去った。
彼が棲む異界へ戻ったのだ。
ここでまたも!
お約束のイベントが発生。
チャララララ、パッパー!!!
リオネルの心の中で、あの独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、内なる声が淡々と告げて来る。
リオネル・ロートレックは、不死者多数を倒しました。
既定値を満たしたので、『レベル16』に到達しました。
チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
身体能力、五感が全般的に大幅アップしました。
体内魔力が大幅に増量しました。
魔力回復力が大幅にアップしました。
魔法攻撃力が大幅にアップしました。
物理攻撃力が大幅にアップしました。
対魔法防御力が大幅にアップしました。
対物理防御力が大幅にアップしました。
チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、
習得済みの『召喚魔法初級』から派生し、『召喚魔法上級』レベル補正プラス50を習得しました。
「よし! 『召喚魔法上級』習得は、正体を知らなかったけれど、これまでに訓練では何度も、使い魔と思い込んでいたケルベロスを召喚したからかな?」
「レベル補正プラス50って事は、『レベル16』の自分より遥かに格上の存在が召喚可能って事か! す、凄いや! 確かにケルベロスは、『レベル60』以上だしな!」
「う~ん、さすが超が付くチートスキル『エヴォリューシオ』だ。でも『召喚魔法上級』を習得前にレベル60以上のケルベロスを召喚していたとか、ロジックが全然分からないけど、まあ良いや、結果良しで。もろもろ順調だしな」
「レベルが16へアップして、凄いスキルも習得した。今夜はホント実り多い夜だった……さあてと皆を起こそう」
いつもの癖で、何度も自問自答したリオネルは……
いまだ気絶していたモーリス、ミリアン、カミーユへ、
習得したての特異スキル『リブート』――再起動、レベル補正プラス30を発動。
全員を起こし、更にこれまた習得したての回復魔法『全快』を発動。
更に『鎮静』もダメ押し発動した。
結果、全員を万全の体調とメンタルへ戻し、無事自宅へと、帰還したのである。
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