第132話「気分はアゲアゲ!」
「ええっと……魔導書は満足の行くまで見ましたから、魔道具屋、魔法薬屋、あと回れたら武器屋ですかね。武器屋では魔法が付呪された武器防具が見たいです」
リオネルの希望にモーリスも大いに賛同。
午前の魔導書探しに引き続き、午後におけるふたりのワレバットの街探索も、魔法関係の店中心となった。
このうち、魔道具屋でリオネルは買い物をし、武器屋では大いに刺激を受けた。
その理由とは、リオネルが購入した魔道具と武器屋で見た魔力が込められた武器防具にあった。
モーリスは夜間用兼、洞窟、遺跡探索にも使用可能な携帯魔導灯を4つ購入。
一方、リオネルが魔道具屋で購入したのは……
先日カミーユへ譲った盾とほぼ同タイプでサイズも近い、強化ミスリル製の盾であり、これを改めて予備とした。
後で収納の腕輪へ放り込む予定だ。
また自分用に召喚魔法を円滑に発動する為、護符も兼ねた『魔道具ペンタグラム』も購入する。
銀製で破邪の効果に優れている。
そしてリオネルは、更に『魔法の杖』も購入した。
補足しよう。
魔法使いにとって魔法の杖はいろいろな意味があり、使用法がある。
最も多いのは、魔法行使の際、発動を円滑にする補助媒体、つまり発動体にする用途だ。
そもそも魔法は、体内魔力を高め、火の点火に等しい言霊ないし呪文を詠唱する事で発動する。
その際、手にした魔法の杖等を経由して媒体とする事で、魔力を増幅させ、魔法発動の円滑さが大きくアップするのだ。
また魔法杖はサイズと形状により、『バトン』『スタッフ』『ロッド』『ワンド』等に分けられる。
人々が持つ一般的なイメージの魔法使い杖は『ワンド』と呼ばれる事が多いのである。
という事で話を戻そう。
リオネルが購入した魔法杖は、強化ミスリル製の特殊な魔法杖である。
何と!
魔法が使えない者も、魔法の効力を臨時に得る事が出来る魔道具なのだ。
モーリス達が使う破邪聖煌拳のガントレットと効果がほぼ同じ。
つまり属性魔力を込めた魔法杖から、初歩クラスの『弾』の魔法を撃ちだす事が出来るのだ。
射程距離は約100m。
最初はクロスボウも考えたが、射程距離が短い事と、弓と大量の矢の携行が負担になりそうなので思い切って変更した。
リオネルが使う風弾、そしてモーリス達には秘しているが炎弾……
モーリスの使う岩弾、ミリアンの使う氷弾などが1回の魔力充填で約30発前後、
それ以外の殆どの魔法も、攻防の違いを問わず、魔力を光球化して撃ち出せる。
魔法が使えないカミーユにも行使可能な、優れた便利アイテムなのである。
そもそもの購入動機は武器と拳、接近戦しか戦う術がないカミーユの為、
『飛び道具』をプレゼントしたいと考えた事に端を発した。
しかし結局は全員分の4本を購入したのである。
購入金額は杖1本につき、金貨30枚。
全員で総額120枚という結構なモノだ。
「カミーユだけに魔法杖をあげると、ミリアンがむくれますし、カミーユ以外でも、魔法が使えなくなった場合、この杖が俺達4人の最後の切り札、いえ命綱になるかもしれませんから」
「ふむ、いつもながらの深謀遠慮だ。感心感心。でもリオ君、金貨120枚は大金だ。私も杖の費用を出すよ」
「いえ、討伐料金も稼ぎましたし、今回は俺に負担させてください。モーリスさんはいろいろと物入りでしたからね」
というわけで、全額リオネルが支払った。
ちなみにこの魔法杖の大きさは『バトン』クラス。
ベルトから吊り下げ可能な革さや付。
長さが30㎝に満たない小型であり、太さも3㎝ほど、携行は負担にならない。
リオネルはその後に行った武器屋でも、付呪された数多の武器防具にとても興味を示した。
改めて、『付呪魔法』の習得を決意。
ギルドの講座へ、『召喚術』とともに申し込みの手続きをする事を決めた。
「モーリスさん、俺、召喚術と付呪術を受講します。クローディーヌさんへ伝えますよ」
「おお! 凄いな! 両方とも高難度の魔法だ! よしっ、私もやる気が出て来たぞ! ギルドで修行をしよう!」
「お! ギルドで修行っすか? モーリスさんも何か講座を受講します?」
「ああ、私もリオ君を見習い、ホテルに居る間に、講座を受けてみる! 50歳にはまだ届かんから、いわば40の手習いだ!」
「その意気ですよっ、モーリスさん! 依頼を探してくれたクローディーヌさんにはお詫びしましょう。しばらくギルドの講座受講でインプットしたくなったって」
「うむ! 彼女にはちゃんと謝ってねぎらおう」
と、モーリスは頷き、言葉を続ける。
「私はこの前、人生自体が永遠に、トライアルアンドエラー……かもしれんとか、偉そうに言ったからな! ははははは!」
という事で、モーリスもギルドの講座を受講する事を決めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
リオネルとモーリスは、夕方ホテルへ戻り、くつろいでいると……
ミリアンとカミーユが戻って来た。
ホテルの1階まで、担当職員のエステルがわざわざ送ってくれたという。
リオネルとモーリスも講座を受講すると聞き、ミリアンとカミーユは、大いに喜んだ。
また、ふたりは至れり尽くせりといえる、エステルからの好意と尽力に感謝すると同時に、「明日からは、ホテルへ戻るくらいは自分達で!」と言い張る。
講座もミリアンは打撃武器、体術格闘、回復、それぞれの基礎と応用。
カミーユが迷宮探索術、打撃武器、盾、体術格闘それぞれの基礎と応用を申し込み、
ふたりで打撃武器の基礎講座に出席したという。
そして……
「もうひとつの講座にも、カミーユと一緒に出たんだよお!」
「そうっす! 姉さんと一緒に勉強したっす! リオさんも習ったサバイバル術っす! 最高に面白かったっす!」
そんなふたりの姿が可愛くてしかたないらしく、モーリスは目を細める。
「さあ、今日も頑張ったお前達へ、私とリオ君からおみやげだ」
「わお! 何、何ぃ?」
「おみやげって、何すか? 食べ物っすか?」
「カミーユったら、何言ってるの? これからお夕飯でしょ?」
「あ、そうだったっす!」
「ははは、まあ『みやげ』と言っても仕事用だ」
微笑むモーリスはまず自分が購入した携帯魔導灯を渡す。
手に持って使う以外にも、付属のベルトで頭部に巻いて、前方を広範囲に照らす事が出来る優れモノだ。
「あはは、これで夜間、そして遺跡や迷宮、洞窟はバッチリね! 師匠ありがとう」
「本当っす! ありがとうございまっす 師匠! これで俺も怖さが解消……いや、半減したっす!」
そしてリオネルからは、魔法杖を。
本体はシルバーカラーだが、革製のさや袋はモーリスがカーキ色、ミリアンが濃紺、カミーユが深緑である。
既に発動体としてのワンドタイプの魔法杖を所有するミリアンも……
最初は?だったが……
『魔法が使えない場合の最後の切り札』というリオネルの購入意図、
そして『魔法杖の性能』を聞き、大いに喜んだ。
「うわ! すってきい! ありがと、リオさん!」
姉よりも更に喜んだのはカミーユであった。
『飛び道具』があれば、接近戦オンリーな彼の戦い方はぐっと楽になる。
カミーユを気遣うリオネルがしっかり認識し、すぐにケアしてくれたからだ。
これで、キャナール村でゴブリンを魔法で撃った戦いみたいな場合でも、
カミーユが参加する事も可能となる。
「リオさん、すげぇ感激っす! ありがとうございまっす! 本当に本当に嬉しいっすよ!」
最後に締めるのは、モーリスである。
「さあ! 全員でホテルのレストランへ移動。夕食にしよう!」
「「「了解!」」」
こうして、気分はアゲアゲで、やる気満々となった4人は……
階下のレストランへ元気良く向かったのである。
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