第117話「リオネルの言う事なら」
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キャナール村から『冒険者の街ワレバット』までは約90㎞。
モーリスの馬車の速度は時速約10㎞。
単純計算で到着まで所要時間が約9時間。
キャナール村を早朝に出発したから、途中何度か休憩しても、本日中には到着する。
しかしモーリスは焦らず、無理をしなかった。
途中の小さな町に宿屋があると言い、一泊しようと提案したのだ。
宿泊料金も、モーリスが負担してくれると言う。
キャナール村でのリオネル達の働きに対する『慰労』の意味もあるようだ。
この町からなら、馬車で走って約1時間でワレバットである。
しばし馬車をゆっくり走らせ、お昼過ぎに町へ到着、宿屋へイン。
宿屋は、そこそこ広くて清潔であった。
ゆっくり休んだ後、摂った食事も結構美味しい。
更に食事の後、お茶を飲み、くつろぎながら……
モーリスは打ち合わせの実施を提案する。
議題は、ワレバット入り後の段取り、生活について。
リオネル達は当然OKする。
「予定では、ワレバット入りは午前9時過ぎ、それからラッシュが収まった午前10時前に、冒険者ギルドに行く」
先述したが……
そもそも冒険者ギルドは朝8時から9時と夕方に5時から7時までは激込みする。
これが『ラッシュ時間』だ。
好条件の依頼を求めるのと、早めに完遂報告をして居酒屋で一杯飲みたい冒険者が殺到するのだ。
「え? すぐに冒険者ギルドですか? まずは俺達がワレバッドで長期滞在する為の拠点、ねぐらとなる宿屋の確保ではなく?」
意外だと思い、リオネルが尋ねると、モーリスは笑顔で言葉を戻す。
「ははははは! ワレバッドの冒険者ギルド総本部では、全てが事足りるのだあ!」
「え? 全てが事足りる?」
「おう! 他の支部と違い、仕事の受注や鍛錬だけではない。衣食住に武、全てが揃うのさ! えっへ~ん!」
ここでミリアンとカミーユが反応。
「へぇ~、そうなんだ」
「凄いっすねぇ……でもそれって、けして威張る事じゃあないし、別に師匠の手柄とかでもないっすよ」
「こら、カミーユ。変な突っ込みを入れるな。気持ち良く話しているんだからな」
「はいはいっす」
「返事は1回だぞ、カミーユ。でだ! 話を戻すと。まず宿屋に長期滞在するよりも、一軒家を借りて、4人で住んだ方が使い勝手が良いのだ! まず宿屋だと、早朝深夜の依頼遂行の際、いろいろ支障が出る! 宿の主、スタッフ、他の宿泊者との兼ね合いで、プライベートの問題が出る場合もある!」
モーリスは言い切ると、更に説明を続ける。
「更に! 一軒家だと、馬車も、馬を入れる厩舎に、駐車も出来るスペースが確保出来て結局は安上がりだ……そしてギルドの仲介で借りると、相場よりずっと安く借りる事が出来るのだっ! 加えて! 食事も、リオ君の作るメシの方がそこらの店より全然美味いしなっ!」
『メシ係』に指名された? リオネルが話を受ける。
「成る程。確かにメリットだらけですね。それにしても王都の大手商会みたく、冒険者ギルド総本部って、幅広くいろいろな仕事をやっているんですねえ」
「うむ、ギルド総本部の不動産部門は、一般の不動産屋より凄いかもしれない。取り扱い案件の多さは勿論、所属冒険者が格安で借りられるよう、直接所有したり、一部家賃を補助してくれるそうだよ」
「そうなんですか。全然知りませんでした。俺、冒険者になって宿屋にしか泊まった事がありませんが、 家探しも、一軒家暮らしも楽しそうですね」
「ああ、結構楽しいぞ。ちなみに、私とリオ君が家探しする間、ミリアンとカミーユは冒険者ギルドで登録の手続きだな」
ミリアンとカミーユは別行動。
家探しは不参加で、冒険者ギルドで登録の手続き。
しれっと言ったモーリスの話を聞き、双子の姉弟は騒ぎ出す。
「え~! 家探し、すっごく楽しみだと思ったのにぃ!」
「そうっすよお! 俺達の意見は完全に無視っすかあ!」
「こらこら、ミリアン、カミーユ。何故わざわざワレバッドまで連れて行くと思ってるんだ。お前達を最高の場所で最高のデビューをさせてやりたいからだぞ」
「だって、だって! 仮住まいとはいえ、私は素敵な家に住みたいもの!」
「そうだ! そうだ! 権力の横暴だあ!」
ミリアンとカミーユは、結構な剣幕で抗議し続け、……遂にモーリスも折れた。
「むう、分かった、分かったよ。お前達の意見も聞く。そして借りる家には反映させる。その代わり、お前達はやはり、冒険者ギルドでの登録手続きが優先だ。半日近く時間がかかるのだぞ」
ここでリオネルがモーリスをフォロー。
「モーリスさんの言う事も分かるよ。冒険者心得の講義とランク判定の実技試験を行うと半日近く時間がかかるから、その間、モーリスさんと俺で家探しをした方が時間を無駄にしないで済む」
すかさず、モーリスも言う。
「うむ、リオ君の言う通りだぞ。それに単に冒険者登録をして終わりじゃない。リオ君がやったようにしばらくは基礎学習と実践だ。私と訓練をする以外に、登録以降、総本部でいろいろな講座を受講して貰うからな」
「え~! 講座を受講? 学校みたいなの苦手ぇ」
「俺もっす!」
ここで再びリオネルがフォロー。
「俺、ギルドの講座って王都支部で散々受講したけど面白かったよ。面白そうなモノがあれば、総本部でも受講するつもりさ」
「え? 本当? じゃあ、私も受講しよう!」
「俺も受けるっす! 師匠の言う事は話半分以下だけど、リオさんの言う事は信じられるっす!」
「お前らなあ……」
リオネルの言葉を聞き、あっさり豹変したミリアンとカミーユを、
モーリスは唖然として、見つめていた。
ふと、モーリスの記憶が甦る。
……ミリアンとカミーユは孤児院で出会った当初、親から見捨てられたせいか、
他人を信じず、心を頑なに閉ざしていた子供であった。
それをモーリスは結構な時間をかけ、他人と交流が出来るまでに、気持を解し、固く閉められていた心の扉を少しずつ開けたのだ。
それなのに……
出会ってそれほど時間が経っていないリオネルが、
ここまでふたりの心をつかみ、信頼されるとは……とても驚いたのである。
しかし少し経って、モーリスは苦笑した。
思い起こせば……
ミリアンとカミーユだけでなく、自分だって……
真摯に他人を思いやるリオネルに惹かれている事に気が付いたからだ。
その後、笑顔の4人はワレバッドでの段取りを、いろいろと決めたのである。
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