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第112話「下見以上」

約1時間後、リオネルは洞窟から戻って来た。

その間、ゴブリンは外で待つモーリス達3人の前に現れていない……


「ただいま、もっどりましたあ!」


「おお、リオ君。お疲れさん。見たところ、怪我はないようだな。無事で何よりだ」


「ええ、ノープロブレムですよ。すこぶる元気ですし、全然大丈夫です」


「ふむ……結構、時間がかかったな」


「はあ、だいぶ奥まで行きましたから」


「おお、だいぶ奥。そうか。で、状況は?」


「はい、実は最奥まで行きましたが、結構な数のゴブリンが洞窟の中で死んでいました。魔導発煙筒の白煙に苦しみ、衰弱して死んだようです」


「おお、そうか! それは朗報だ。ならば私達が討伐する数もだいぶ減っただろう?」


「はい。なので俺も残っていたゴブリンを相当数倒しました。残りの数を考えたら、予定変更で行けると思います」


「何? 残っていたゴブリンを相当数倒した? 予定変更? どういう事だい?」


「はい、洞窟内に居る残りの個体数を考えると、この陣地から遠距離魔法攻撃は不要です。俺も魔導発煙筒をセットしませんでしたし。いきなり全員突入で構わないと思います」


「おお、そうか。いきなり、ぜんいん、とつ、にゅうか?」


「ええ、いきなり、ぜんいん、とつ、にゅうです」


リオネルはモーリスへ、そう言葉を戻し、ミリアンとカミーユへ向き直る。


「ミリアン、カミーユ」


「は、はい!」

「はいっす!」


「いよいよ、洞窟探索だぞ」


「どきどきします!」

「緊張するっす!」


「臆する事はないさ。今、モーリスさんへ伝えた話をふたりも聞いていただろう? 俺は洞窟の最奥まで行って来た。まだ多少生き残りは居るけれど、残党のゴブリンを相当数倒したし、洞窟内の状況もほぼ把握している」


リオネルが言うと、ミリアンとカミーユは首を傾げる。


「リオさん、それ、さっき聞いて思ったけど、凄くおかしいです」

「そうそう、姉さんの言う通り、とってもおかしいっすよ」


「おかしい? ほう、どうしてだ?」


「だって! ラスボスが居るかもしれない最奥まで行ったんでしょ?」

「そうっすよ! リオさんの実力なら、最奥に居るラスボスでも倒せるはずっす! それでこの依頼は終わり……じゃないっすか? 何故倒さないっすか?」


ミリアンとカミーユの当然すぎる疑問。

対して、リオネルは微笑む。


「ああ、ラスボスね。そういえば確かに居たよ、上位種が。そいつは倒した」


「はあ? ラスボスは倒したって、リオさん、何それ? 意味が解りません!」


そう、リオネルは洞窟の最奥まで行き、ノーマルタイプの残党の殆どと、

ラスボスの上位種『ゴブリンシャーマン』を倒した。

だが、洞窟内には敢えてノーマルタイプのゴブリン数体を残して来たのだ。


リオネルが、ラスボスを含めたゴブリンの残党を全て倒せば……

3人は洞窟内へ行く必要はなくなる。

なのに何故、倒さなかった?


ミリアンとカミーユからすれば、

『リオネルの下見』は、全く意味のない行為に映るだろう。


傍らで、モーリスも、リオネルの行動を疑問視するかと思いきや、

何故か、柔らかく微笑んでいた。

リオネルの『意図』を察したらしい。


しかしカミーユは、首を傾げる。


「ラスボスを倒してザコは残したって、全くわけわかんねぇっすよ……ああっ! わ、分かったあ! 分かったぞぉ!」


訝しげな表情のカミーユであったが、突然「はた」と手を叩いた。

「うんうん」と頷く。


弟の反応に驚いたのはミリアンである。


「な、何が分かったのよ、カミーユ」


「姉さん」


「な、何よ」


「リオさんは、俺達の為に、下見以上の事をしてくれたっす」


「え? 私達の為に、下見以上をしてくれた?」


「そうっすよ。ゴブリンの相当数を倒しながら、最奥まで行ってくれて、リオさんが洞窟の勝手が完全に分かったのに加え、上位種のラスボスまで倒し、残りはザコのノーマルタイプが僅か……」


「そ、そうなるわよね」


「それって、姉さん、洞窟バトルデビューの俺達にとって、えらく安全な状態っすよね」


「ん、うん……確かに……100%安全ではないけれど、私達は、相当安全よね」


「そうっす、姉さん。100%安全ではない。だから俺達はけして油断はせず、結構注意して、洞窟の探索をするんじゃないっすか?」


「あ、ああっ! そうかあ! 敵が残っているから、私達は油断せず警戒するし、緊張はするけれど、必要以上に怯えないくらいの状態にしてくれたんだ! リオさんが!」


「ピンポーン! そうっすよ。依頼が9割方完了して、洞窟探索初体験の俺と姉さんは、精神的に余裕を持てるし、危険な場所も、リオさんが事前に全部チェックしてくれたから注意しながら歩けるっすよ」


「それ……私達が怪我をしないように、だよね?」


「そうっす! 傍から見れば甘やかしっすけど、これで万全な修行が出来るっす!」


「あはは、確かに相当な甘やかしだ。私達、特別扱いされてるよねぇ」


「そうっす! でもリオさんのお陰で、2度目以降も洞窟探索に対する恐怖やネガティブさがなく、前向きにトライ出来るっす! やっぱりリオさんは俺達姉弟の事を、いつも真剣に考えてくれているっす。いや、考えているだけじゃないっす。しっかり行動もしてくれるっすよ!」


リオネルの優しさ、思いやりに触れ、幸薄かった孤児の姉と弟は感無量である。


「リ、リオさん、ありがとう! 大好きだよ!」


と、ミリアンが頬を少し赤くして言えば、カミーユも晴れやかな笑顔で、


「ありがとうございまっす! 俺もリオさんが大好きっす!」


と、元気良く言い放った。


ここで、モーリスが『すまし顔』で割って入る。


「うんうん! 良かったな。今回は私とリオ君で、未熟なお前達の為、事前にそう決めておいたのだ。私の発案だぞ!」


そんなモーリス対し、ミリアンとカミーユは憤慨(ふんがい)する。


「あ~! せっかくの名シーンが台無しぃ! いっつも美味しいところだけ、持って行こうとする師匠は最低!」


「姉さんの言う通りっす! ぐうたらな師匠は何にもしていないじゃないっすか! 本当は何もやってないし、知らなかったんじゃないっすかあ!」


「こらあ! お前ら、何だその突っ込みはあ! 弟子の癖に生意気だぞぉ!」


という、『いつものやりとり』があった後……

ひと休みして、4人は全員、洞窟内へ突入した。


そして、リオネルの注意とアドバイスを受け、師匠のモーリスが見守る中……

ミリアンとカミーユは程よい緊張感を持ち、姉弟で協力し合いながら、

残党のゴブリンども十数体を倒して進んで行き、洞窟の最奥まで到達。


出入り口までの帰還も無事に終え、最高の洞窟バトルデビューを飾ったのである。

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