表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/757

第102話「ミリアン、舞う!」

「私、ゴブリンどもと戦うよ! リオさんも私を信じて、背中を預けてね!」


前向きなミリアンのコメントを聞き、リオネルは微笑む。


「ミリアン、良く言ってくれた」


「うん! あったりまえだよ! リオさんっ!」


ショートカットの金髪で碧眼、元気印の15歳、ミリアンは若さに満ち溢れている。


魅力的な女子で可愛いが、「好き」とか、「彼女にしたい」とはまた違う。

アルエット村で出会った8歳の天使のような可憐なアンナとも違う。


愛すべき『妹』だが……

守ってあげたい『ボーイッシュで活発な明るい妹』という感じだ。


同様に、カミーユは『怖がりな可愛い弟』だ。

まだまだ成長途上だが、明るく前向き。

とことん面倒を見たいと思う。


リオネルは、怯えるカミーユに『かつての自分』を重ねていた。

父、兄達から酷い仕打ちを受けた反動かもしれない……


ここはミリアンへ、具体的に言葉に出し、伝えた方が良いだろう。


「聞いてくれ、ミリアン。結構厳しい事は言ったけど、俺はけしてカミーユを見捨てたりしないぞ!」


「うふっ! 嬉しいっ! 本当にありがとう、リオさん!」


ミリアンは微笑んで礼を告げた。

そして肉親ならではの決意も語る。


「私もそう! カミーユはたったひとりの身内だもの! 可愛い弟の面倒をとことん見ようって決めてるんだ!」


「おう! 分かった! カミーユの問題は改めて考えるとしよう。まずは当面の敵であるゴブリンどもを倒す。作戦通りに行くけれど、ミリアンのキャパは大丈夫かな?」


リオネルが尋ねれば、ミリアンは苦笑する。


「ええ、さすがにさ! 昨日のリオさんみたく、ひとりでゴブリン1,000体の群れに突っ込むのは絶対に無理ゲー!」


今度はリオネルが苦笑する。

自分の『秘密』を知らない者から見れば、多勢に無勢でゴブリンと戦う行為は、

無茶そのものだからだ。


「ああ、そこまで無理はさせないって」


「あは、サンキュ! 念の為、リオさんと出会った時の200体も無理だよ! だけど、2,3体くらいなら、一度に相手が出来る」


「了解!」


「但し、ヤバくなったら、すぐ手を挙げるよ! 即、逃げるからね! 頼りにしてる!」


打てば響けとばかりに、良いリアクションが戻って来た。

ミリアンは他人の話を良く聞き、自分を客観的にも見ている。


「OK! 任せろ! 命は大事にだ! モーリスさんが造った土壁に、魔法で穴を開けるぞ。大きさはゴブリン一体が出て来れるくらいの穴だ」


「了解! そうやって、戦う相手の数をこっちでコントロールして、さっき洞窟を囲んだ土壁同様、多勢に無勢というルールをガラリと変えるんだね! 私達に有利なようにさ!」


「その通り! 奴らとサシか、せいぜい数体と戦う、俺達が全然有利なルールとなる。穴を開けたら、様子を見ながら戦うぞ。まずは俺が行こう」


「うふふ! 地獄の悪魔みたいなリオさんの戦いぶりを、間近で見れるなんて楽しみだよ」


「地獄の悪魔みたいなって……あのね……」


先ほどミリアンが苦笑したのと交代に、今度はリオネルが苦笑したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


しかし……

ミリアンの表現はけして大げさではなかった。


リオネルはモーリスが生成した、洞窟の出入り口をふさぐ土壁の片隅へ、魔力を抑えめの風弾をぶち当てた。

計算通り、人間より小さいゴブリンが一体通れるくらいの穴が開き……

中へこもっていた白煙が「もうもう」と噴き出た。


リオネルとミリアンは風向きを考慮し、白煙が出ない場所でスタンバイする。


ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ!


穴から、ゴブリンどもから苦痛を訴える悲鳴が聞こえて来た。

オーク同様、唐辛子などを調合した白煙は威力を発揮しているようだ。


やがて……

白煙にまみれるように、1体、2体、3体と、ゴブリンが転がり出る。


リオネルは、すかさずシールドバッシュ! バッシュ! バッシュぅ!


ぶぎゃ! がはっ! ぐあっ!


ゴブリンどもは全てが、あっさりと破砕された。


更に、4体、5体、6体目が出て来た。


今度は、拳、蹴り、再び拳!


ぶぎゃ! がはっ! ぐあっ!


またも!

ゴブリンどもは全てが、あっさりと破砕された。


そして、7体、8体、9体、10体目が!


シールドバッシュ、拳、蹴り、最後にシールドバッシュ!


ぶぎゃ! がはっ! ぐあっ! ぶぎゃっ!


リオネルは、あっさりと、淡々と、10体を瞬殺したのである。


ここで、リオネルは魔力抑えめの風壁で穴に仮の(ふた)をした。

時間にして、10分ほど有効な風壁である。


この10分間をインターバルとし、リオネルとミリアンは交代した。


リオネルがあっさりゴブリン10体を倒したのを目の当たりにし、ミリアンの泣きが入った。


「リオさ~ん、凄すぎ! 息も上がってないし! さすがに私、10体は無理だよぉ!」


「ははは、じゃあ、まず3体だ。奴らの動きを良く見て、攻撃は極力、(かわ)すんだ!」


「OK! うん! じゃあ今度は私が前面に立つ。これは修行だもの! 勇気を出して戦ってみるよっ!」


決意を述べたミリアンが前面に立ち、やや後ろへリオネルが『控える形』となる。


「よし、ヤバかったら、すぐ助けるからな」


リオネルはそう言うと、体内魔力を上げ、すぐに威圧、風壁が両方、行使出来るようスタンバイした。

万が一の際は、すぐに飛び込めるよう身構えもする。


「サンキュ、リオさん! じゃあスタンバイするよ!」


ミリアンは魔法使いの呼吸法を使い、心身を落ち着ける。

魔力の放出はない。

リオネルのように魔法を使わず、魔力を温存する作戦の趣旨は心得ていた。


しばし経ち、風壁の効果が消えた!


ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ!


またも穴から、ゴブリンどもの悲鳴が聞こえて来る。


再び……

白煙にまみれるように、1体、2体、3体と、ゴブリンが転がり出た。


「ふう!」


軽く息を吐いたミリアンは、破邪聖煌拳(はじゃせいこうけん)用の、

『強化ミスリル製ガントレット』を振りかざし、鋭い気合を発する。


「はっ!」


蝶のように舞い、蜂のように刺す!


びし! びしっ! びししっ!


ぎゃ! ぐあ! げはっ!


さすがにリオネルのように瞬殺……

とはいかないが、素晴らしい速度で繰り出される冷気を含んだ3発の拳を受け、

ゴブリンは絶命した。


へえ!

やるなあ!


リオネルは感嘆するが……

先の3体から間を置かずに、穴から抜け出た残り2体のゴブリンが、ミリアンを襲おうとしていた。

白煙の痛みが目に残っているからか、まだふらついている。


「声をかけようか」「助けに入ろうか」と迷ったリオネルであったが、

ミリアンの放つ波動は、ゴブリンの攻撃を察知していた。

彼女は後ろ向きのまま、リオネルへ「大丈夫」と言うように、

「さっ」と右手を挙げた。


そして素晴らしい速さの身のこなしで身体の向きを変え、

ふらつくゴブリンどもへ、美しく身構えた。


ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあっ!


「はああっ! とああっ!」


びし! びしっ! びししっ!

びし! びしっ! びししっ!


ぎゃ! ぐあ! げはっ!

ぎゃ! ぐあ! げはっ!


まるで!

華麗な舞姫!


ミリアンは美しいダンスを舞うように、ゴブリン2体の攻撃を(かわ)し、

カウンターで3発ずつ、冷気の拳を打ちこんだのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。


東導号の各作品を宜しくお願い致します。


⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎小説書籍版第8巻が2/19に発売されました!《ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》

(ホビージャパン様HJノベルス)

既刊第1巻~7巻大好評発売中!

第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。


◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

☆最新刊第5巻が4/27に発売されました! 

コミカライズ版の一応の完結巻となります。

何卒宜しくお願い致します。


既刊第1巻~4巻大好評発売中!

コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!

皆様のおかげです。ありがとうございます。

今後とも宜しくお願い致します。


また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。

コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。


WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。


マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が好評連載中です。

毎週月曜日更新予定です。

お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。


最後に、連載中である

⛤『帰る故郷はスローライフな異世界!レベル99のふるさと勇者』《連載再開!》

⛤『絶縁した幼馴染! 追放された導き継ぐ者ディーノの不思議な冒険譚』

⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのある王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』


も何卒宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ