☆プロローグ☆
本格連載開始です。
初めての乙女ゲージャンルに挑戦します。
更新はカメの様にゆっくりとですが完結できるよう頑張りますので応援頂けますと嬉しいです。
『エリーゼ! ショコラに対する今までの非礼、たとえ公爵令嬢であり俺の婚約者とは言え、これ以上見過ごすことは出来ん!』
『彼女に対する非礼? 殿下、失礼ですが私、身に覚えが全く御座いませんわ?』
『しらばっくれても無駄だ! 証言者も居る! 言い逃れは出来んぞ!』
今、画面には、目の前に立つ超絶美女のお嬢様に、唾でも一緒に飛ばしてんじゃねぇかって位の怒声を上げる顔面偏差値だけは高いThe俺様の王子様が映ってる。
「やっと、この実況乙女ゲー編も、コレで全キャラクリアですね~。」
俺の名前は鷹司 鷲史。25歳、独身。彼女いない歴=年齢…ではない!残念だったな!
今は動画配信サイトでヴァーチャルキャラクターを使ってのゲーム実況生放送を趣味でやっている。
使用してるヴァーチャルキャラクターの外見が王子様みたいな見た目のせいか、王子って呼ばれてたりする。
そして、今は絶賛ゲーム実況生放送中だ。
プレイしてるゲームは女性向け恋愛シミュレーションゲーム、所謂【乙女ゲー】と呼ばれるジャンルで、今それなりに話題のゲームらしい。ゲームのタイトルは『スィーツキングダム~ドキドキ愛のパティスリー~』って名前で、なんとも胸焼けしそうなネーミングに生放送するのを最初躊躇した、しかし、視聴者アンケートで何故かぶっちぎりで1位に輝いた為、そんな胸焼けしそうなタイトルの乙女ゲーを連日にわたって実況放送していた。
そんな、胸やけタイトルのゲームだが、プレイヤーは主人公であるショコラータ・ロッテ男爵令嬢(名前は任意で変更可能)を操作し、複数いる攻略対象である男達の中の1人と恋人になる為に学園生活を送ると言う、まぁ割とありふれた設定のゲームだ。
攻略対象の男達はキャラによって難易度が設定されており、比較的攻略が簡単な騎士団長の息子から、攻略難易度最難関の王子様まで居る。
対象キャラは全部で4人。
難易度EASYの見た目は幼い少年にしか見えない騎士団長の息子。
難易度NORMALの寡黙キャラで王子の側近。
難易度HARDの顔面偏差値で言えば恐らくナンバーワンでむしろ女性と間違われる事も多い宰相の息子。
最後に、難易度VERY HARDの我儘傲慢俺様王子と言った感じだ。
そして、王子以外の全キャラを攻略した俺は1番攻略が難しいキャラの攻略を今まさに完了しようとしていた。
この王子の難易度が1番難しいのは、偏にライバルキャラの存在である。
他のキャラには存在しない恋のライバルキャラだが、この王子様にだけは主人公のライバル的な立ち位置として婚約者のエリーゼ・ブルボン公爵令嬢がおり、王子様を攻略しようとすると至る所で、その令嬢の取り巻きなどが妨害をしてくるのである。
「このエリーゼたん、見た目はホント、俺のどストライクなんだよね~。なんで王子ルートにだけしか出さなかったんだと開発チームには小一時間正座させて説教してやりたい程度には推せる。」
たてがみぼんばー@でたww王子の面食い発言
ゆゆたん@面食いはタヒね
ぼぼぼーぼ・びびんば@わかりみしかない
俺がライバル令嬢の事を発言すると、画面上のワイプ画面に次々と閲覧者がコメントを投下してくる。
「いや、だって可愛すぎでしょ? むしろエリーゼたんしか勝たん。それにさ、この王子が上げ連ねてる証拠も結局はギガーヌ三姉妹が言ってる事だけで、実際に彼女がやったって言う確証は無いんだよ? 正直な話、全部取り巻きがやってたって感じでしょ、こんな天使な令嬢が、王子が上げ連ねたような陰湿な嫌がらせしてるとは思えん… まぁ、だからこそ、犯人を特定するような選択肢は全部エリーゼたんをなるべく疑わないような選択肢を選んだんだけどさ。あと、攻略しててなんだけど、俺、この王子様苦手だわ。遊ぶなら騎士団長の息子君が楽そうって感じたね。」
†黒騎士†@だから選択肢全部エリーゼ庇ってたのかwwww私情入ってて草www
たまゆん@人気ナンバーワンキャラをディスるとかwww
りりか@私の王子様バカにすんのか?やんのか?ならば戦争だ。
目光の唐揚げ@ショタっ子騎士くんは友達としては花丸だからね。
ゆゆたん@面食いはタヒね
「うわぉ… 皆、王子様好きだね~。でもさ、傲慢だし、プライド高すぎって思うんだけど、世の女性はこう言う俺様系がいいのかね~? まぁなんにせよコレで全キャラクリア、ここから先のエンディングは是非ゲームを購入して自分の目で確かめてね~。んじゃ、このシリーズ最後まで御付き合い頂きありがとうございました。また、次の実況生放送でお会いしましょう。」
そう締めくくり、閲覧者からの別れのコメントを見終わった俺は放送終了のアイコンをクリックした。
「最初は乙女ゲーってどうなの? って思ったけど、割と皆の食いつき良かったなぁ~。さて、夜食でも食いますか~。」
そう独りごちてヘッドホンを外し、マイクスタンドをたたんで椅子から立ち上がり、振り向くと爛々と輝く2つのヘッドライトと大きな影が俺の家、リビング側から一直線にこちらに爆走してくるのが目に入った。
「は? え?」
俺の最後の言葉はその二言。
そして、意識がブラックアウトした。
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「おめでとうございます! 陛下! 王妃様! 王子の御誕生です! それも、お二人です!」
「ロアンヌ、良くやった!」
「アナタ… ありがとう…」
美しい金の髪を携えた美女が疲労困憊と言った様子でベッドに横たわる、その青い瞳には涙を浮かべ、筋肉質だが太すぎず整えられた口髭が上品さを醸し出している男性が、その女性の手を握りひたすらに褒め称えている。
そして、慌ただしく走り回るメイド服を着た女性達と、今まさに出産の手伝いをした侍
女長であり助産婦が1つの部屋に居た。
「無事、跡取りも産まれた… まこと、大儀であったぞ…」
涙を流しベッドに横たわる女性の頭を優しく撫でる男性。
今、二人の息子の父親になったその男は、この国を納める王である。
「一度に第一王子、第二王子の誕生は誠にめでたい! 継承権に関しては後々だな、二人の今後を見て判断するとしよう。」
「畏まりました。教育の方は?」
「同様の教育を施すように手配せよ。これが、つまらん争いに成らぬ事を願おう…」
「左様で御座いますね…」