第3部19章『回帰』2
夜通し歩き続けたソニアは、エルナダ王国の端にある大きな町トレスに、朝も早いうちに到着した。
内陸の街道が幾つも交差する要所で、アルファブラ王国との国境に近いこともあり、大国の影響を受けているので、実際にはどちらからも独立し、尚且つどちらとも友好関係を保っている小都市国家に近いものがあった。
麦畑の道で正体を隠していたゲオルグと共に旅をしていた時、彼女が魔術師を求めて目指していた町である。予定より大分遅れてしまったが、今は当初の計画通りにトライアへの帰還手段を探す他ない。
朝早くに外壁をくぐろうとするヨレヨレの若い娘に、歩哨はえらく驚いて槍の柄を突き出し、呼び止めた。
泥水色に染まった丈の短く薄いドレスを身に着けた長身の女が、麻袋と剣を背に負っている姿は、何とも得体の知れない異様さがあった。しかも美しい顔立ちだし、見たことのない変わった髪色だし、悲壮感漂う瞳と肌の色は朝霧のように青くてヒンヤリと感じられた。
激しい雨で髪や肌の汚れは粗方落ちていたから、汚れの色が強く残っているのはドレスばかりであったが、それでも相当酷い目に遭ってきたことが窺える身なりだった。
一度見てしまってからは全く目を離すことができず、年若い歩哨はジロジロとソニアを眺めながら慎重に誰何した。そして、その格好についても尋ねた。
「旅の者です。道中手強い魔物と遭遇して戦ったものだから、酷く汚れました。できればこの町で服を替えて体も洗って、旅支度を整えたいと思っています」
「一体……どんな魔物と戦ったって言うんだい? あなたは戦士なのか?」
「……ええ、戦士です。狂暴な大熊で、泥沼に足を取られたものですから。何とか逃げましたけど、この通りで……」
戦士と言うわりには何故かドレス姿だから訳が解らず、歩哨は首を捻った。
「……とにかく、夜の間ずっと歩いてここに来たんで、とても疲れています。できたら早く休ませてもらえませんか」
「あ……ああ、それは勿論構わないが……何か困ったことがあったら力になるぞ。厄介事に巻き込まれたりはしていないか?」
剣を持って戦士だと名乗っていなかったら、きっと賊集団に散々乱暴された後だと思うだろう。公職者らしい真面目な気遣いにソニアはふと心が和んで、口元を少し微笑ませた。
風呂屋と衣装屋、そして宿屋に魔術師の溜まり場を教えてもらって、全ての用が足せそうな町の西側地区を目指した。
日の明け切っていない朝靄の中だから、人通りもそれほどなくて目立たずに済み、気だるそうな若者3人組みとボロを纏った老人に声をかけられそうになったが、手にした剣が彼等の目に留まると誰もが口を噤んで、道往く彼女の妨げとはならなかった。
こんな時間から営業している所は限られているので、まずソニアは宿屋を見つけた。幸いそこは旅人の多いこの町らしく湯屋を兼ねている店だったので、泊り客の朝風呂の為に既に湯も沸かされていたので、早速部屋を取って体を洗うことにした。
個別になっている狭い洗い場で汚れを落とし、髪を濯ぐと、少ない水は簡単に泥色に染まった。板張りの洗い場は、あの総火成岩造りの大浴場に比べたら、まるで場末の芋洗いだ。
服は衣装屋の開店まで待つのも面倒だったので、宿屋の店主に用意させており、丈が合えばいいからと、男性仕様のシャツとズボンを揃えてもらい着用した。店主は小男なので丈が合わないから、住み込みで働く下男が祝事用に持っていた正装着を買い取ったのである。もっといい物が一着誂えられるだけの十分な礼金を支払って、ソニアは小部屋で小休止した。
麻袋の中にはエルフの村で貰った食料が残っていたから、それで簡単な食事を済ませ、髪が目立たぬよう3つ編みにして頭にはバンダナを巻き、マスクもした。これでルピナス色の髪は飾り紐に見えないこともない。
仕度が整うと、ソニアはこの町の伝令役が待機する詰所に向かった。酒場で流星術師が見つかる時刻ではないから、まずは公職者を当たることにしたのだ。ここまで来たら、訳を話して一刻も早く帰るべきだろうし、そうしなくとも巧くすれば非番の者が請け負ってくれるかもしれないし、公務に便乗させてもらえるかもしれない。
詰所は町中に散らばっているが、魔術師が待機している場所は中央官邸に限られていた。トレスを治める長官はこの地域一帯にかなりの影響力を持ち、当然ながらアルファブラの官僚にもエルナダの官僚にも顔が利く。情報流通の面で術者の行き来は頻繁だから、選り好みをしなければ適任者が見つからない方がおかしい。ソニアは不眠不休ながら、祈るような期待に瞳を光らせた。
あれからずっと体は細ったままで、未だ腕には力が戻ってこない。人間相手に負けることはないだろうが、ヌスフェラートとは決して戦えるコンディションではなかった。できるだけ速やかに、穏便にトライアに戻り、養生して体力を取り戻さなければならない。
ちょっとした城ほどもある中央官邸には物見台の高い尖塔も聳えており、トレス自治区を示す3つの車輪と、それを結ぶ3角形の描かれた旗が風にゆったりと翻っている。同じ旗が掲げられているゲートで、外壁をくぐる時以上に厳しい目でソニアは検閲を受けた。
今度はさっきと違って男に見える扮装をしているし、マスクで目しか見せていない為、武装した不審者でしかなかったのだ。
フィンデリアに導かれてディライラ城に入城するのとは大違いである。身分を隠して要所に入るのは、骨の折れる仕事だった。武器を見せろと言うので精霊の剣を見せると、番兵は2人共が大いに関心を示して驚嘆した。
「こんなの……一体何処で手に入るんだ? そんじょそこらの名工じゃないだろう」
鞘から抜いて刀身もじっくりと検め、何度か振ってその度に溜め息を漏らし、オレにも貸せ、と幾度も交換し合って讃じた。兵士の武器、防具好きには際限というものがない。
「故郷の職人です。北部にあります」
「こんなの……あまり見たことないぞ。もっと流行っても良さそうなのに」
「剣が専門じゃないから、これ1本作ったら止めてしまったんです」
「勿体ねぇ……こんなの、王宮に献上するような級だぜ。1本しかないんじゃ、値段だってつけようがない」
彼等の予想以上に高価な品で神秘を秘めているのだが、それは口にしなかった。
「この町はまだ治安がいいが、他所の町でこんな剣をチラつかせてたら、盗賊に襲われかねないぞ。あんた、気をつけな」
「ええ、心得てます。大切な宝ですから、そう易々とは奪われませんよ」
その迷いのない自信ぶりに、番兵はこの旅人が相当な手足なのだろうと値踏みして剣を返した。ソニアは慣れた手つきで腰に差して番兵の判断を待った。
「……ナマクアへの急使か。そうなんだろうが……」
番兵達が悩むのも無理はなかった。正体不明の人物に要所の内部事情を知られるのは良くないから、安易に入邸を許可するわけにはいかない。
だからソニアは、中に入れなくてもいいから、術者の都合だけつけてくれればここで待つとさえ告げていた。勿論、謝礼もきちんと払うと。
一存で決められぬと判断した番兵は、1人を残してもう1人が上司に意見を求めに行った。ややあって戻って来た時、番兵は中に入るよう言った。彼等の上司である長官が、会って話をしたいのだと言う。番兵は直属の上司である部隊長に判断を仰ぎに行ったのだが、そこにちょうど長官もいて隊長と話し込んでいたから、結果的に一番上の人間の知れるところとなったのだ。
稀有な名刀を持つ謎の急使が、ナマクア行きの術者の手配を望んでいると言うので、長官は持ち前の好奇心と勘でその人物に会うべきだと直感し、面談を求めたのである。
ソニアは再度剣を渡すよう言われ番兵に預け、彼の案内について行った。煉瓦の積み上げられた実用一点張りの簡素な通路が奥に向かって伸び、それが唐突に煌びやかな官邸に変わって彼女を迎え入れた。
交易の要衝として潤っている都市なりに、当然の贅沢をしているようだ。白い壁と天井装飾。柱の彫刻。そしてアーチ型の回廊。カットの多い硝子が波のように垂れ下がってシャンデリアの道を築いている。
やはり着替えてきて良かったとソニアは思った。あんな格好ではここへ通してもらうことはできなかっただろう。手配の話自体も通り難かったろうし。
開け放たれた大扉の向こうでは、まだ長官と部隊長が話し込んでいた。部隊長は見るからに体を張った仕事に向いた胸板の厚い巨漢で、片や長官の方は痩せ型の文化人だ。長官の方は結婚適齢期の子供がいそうな齢で、隊長の方はそれよりやや若そうに見える。学のある、なしの差はありそうだが、どちらも賢そうだった。
番兵が一言かけてすぐに剣を差し出すと、長官は話を中断して「ほう、これが」と精霊の剣を検分した。隊長も触りたそうにウズウズしている。剣の華奢さからすれば、長官が手にしている絵の方がしっくりといくようだ。
そして剣の検めが終わると、今度は同じくらいジックリとソニアを品定めした。
「私はトレス長官、フェリースです。あなたは急使だそうですね。ナマクアへ行くとか。どちらから参られたのですかな?」
全く物怖じせず涼しげに立っているソニアの様子に、既に長官も隊長も、ひとかどの人物を相手にしていることが解っていた。ソニアは一礼して述べた。
「ナマクアから出て、ナマクアに戻る所です。急ぎ帰らねばならぬので、流星術での帰還を望んでおります」
「情報収集の役目でもあったのですかな? それならば本来術師を任命しそうなものだが」
「どうしても私が出なければならなかったのです。情報収集が目的ではありませんでした。実は、現在の世界情勢に関する最新情報に欠けております。今は一刻も早く国に戻り国防に従事しなければなりませんが、宜しければその前に、ナマクアや他の地域の情勢を教えて下さると助かります」
フェリース長官は再び剣に目をやって、いかにも物欲しそうに擦った。そしてようやく部隊長の疼きに気づいて、彼に剣を手渡した。
隊長は目が悪くもないのに、やたらと顔を近づけて彫りを凝視した。獣が鼻で物を見極める仕草に似ているとソニアは思った。
「……素姓を明かせない訳を先に伺えますかな? この戦乱だから、役目は色々だとは思いますが、人間同士で隠し合うことはそうありますまい」
「私は皇帝軍と戦い、辛うじて勝ったことがあります。それ以来目をつけられて、刺客が送り込まれるようになりました。道中他の人々にご迷惑とならぬよう、身分を偽っております」
長官も隊長も唸った。同じタイミングだったから同じことに反応したようで、実は隊長の方は鞘から抜き出した刀身の美しさに感嘆していた。
「ナマクアで戦勝国と言えばテクトだ。では……あなたはテクトの方なのですな。これは素晴らしい。縁起のいいことだ。勝利者に出会えるとは」
ソニアは敢えて訂正しなかった。ややこしい説明は後にして、まずは手を貸してもらい、帰国できてから伝えればいい。
身分を偽りたがる者相手だから、長官もソニアの頷きを特に求めず、逆に否定しないのでその辺りに正解があるのだろうと捉えて、それで良しとした。多少の違いがあれ、戦勝者であることが一番重要で、好ましいのだから。
「よろしい、承知致しました。手助け致しましょう。これを機に、是非あなたのお郷とも懇意にさせて頂きたいものです。ナマクアへ行ける術者は限られておりますから、用意ができるのに少しお時間を頂くことになりましょう。宜しいですかな?」
それで十分です、とソニアは頭を下げた。どうもナマクア大陸は商業、戦略両面において世界的にはマイナーな土地のようだ。ディライラといい、術者の都合にこうして待たされるのだから。
長官は早速部下に命じて手配をさせ、その後簡単に世界情勢を説明した。ソニアに剣を返す隊長は実に手放し難そうだった。
説明によると、ナマクアはテクトの襲撃以来何事もないそうで安心した。世界的にも、ディライラ襲撃以降は皇帝軍の攻撃もなりを潜めているらしい。
あのヴィア・セラーゴでの会議を思い出せば、皇帝軍が慎重になったのだと考えられる。今のソニアには正体が解っている、あのマキシマを警戒しているのだ。
どうしても起こる戦だったら、こうして自分が力を失っている間に休閑期を設けてくれるのはありがたいと思った。自分が何もできなかったり、何も知らないうちに事が進んでしまったりするのだけは我慢ならない。
長官の実に巧みな説明で情勢を把握すると、ソニアは礼を言って更にお願いをした。
「実は……急ぎの関係で昨夜一睡もしていません。できたら、少し休める所をお借りできないでしょうか。待たせて頂く間」
長官は2つ返事で了解し、秘書に客間へと案内させた。謁見前の待機用に用意されている小ぶりの部屋で、革張りのソファーが横たわっている。人の出入りも制限できるから、ゆっくりできそうだった。
ソニアは礼を言ってソファーで横にならせてもらい、精霊の剣を腕に抱いたまま目を閉じて休眠した。薬の影響と蓄積した疲労のお蔭で、まるで地面に引き摺り込まれるように眠気が襲い、死んだように静かな塊になった。
秘書は気を遣い、長官室からしか人が出入りできぬよう、その他の出入口は内側から鍵をかけて閉め、最後に長官室へと引き下がっていった。
あまり長々と眺めている訳にもいかない忙しい者達ばかりだったが、長官も隊長も、謎の使者とその剣にずっと心引かれたままだった。
駆け足で行き交う人々の足音と鋭い声でソニアは目が覚めた。どれくらい眠ったのかすぐには解らなかったが、窓から射し込む日の光が浅いから、太陽の位置は高いようだ。ほんの少しの仮眠だから然程疲労は回復していない。だが、それでも有り難い休息だった。
何の騒ぎだろうかと、ソニアはソファーから起き上がって暫く耳を澄ませた。建物の内外、そして空でいろんな音がしている。花火の弾ける音と、急ぎ足で通り過ぎる何人もの足音。戦闘らしき騒音ではないが、何らかの事件が起きているようだ。近くの町が襲撃に遭っているのかもしれない。
ソニアは長官室へのドアをノックして、返事がないのでそのまま扉を開けて中に入った。長官室の正面入口は開け放たれ、部屋には誰もいない。
すると、もう1つ別の入口から書記官が帳面と筆記用具一式を持ってやって来た。そのまま正面入口から出ていこうとする。ソニアは呼び止めて何かあったのか尋ねた。
急ぐらしい書記官は、ほんの少しだけ足を緩めてソニアをチラリと見、誰だか判らないし取り合っている暇がないので、簡単に答えてそのまま去ってしまった。
『アルファブラが皇帝軍に襲われている』と。
ソニアは暫し呆然とした。この町は他国だが、アルファブラと殆ど隣接している。主都グレナドにも比較的近い都市だ。だから火の粉を被るおそれがあるし、それどころか同じく襲撃される危険があるので、戦々恐々とするのも当然なのだ。
あぁ! 何処も彼処も戦ばかり! 皇帝軍め!
ソニアは皇帝の薄ら笑いと、議場にいた軍幹部の面々の姿を頭に過らせて歯噛みした。あの中の、一体どの大隊がやって来たのだろう。
そして、ここで初めてある感情がこみ上げて来て彼女を突き動かした。彼女自身もこれまでその事をそんなに深く考えたことがなかったから、驚きだった。
アルファブラはアイアスの故郷だ。そして家名を貰い養女となっている自分は、未だ会ったことがないとは言え、パンザグロス家と深い縁がある。アイアスはまだ消息不明だから、この襲撃に駆けつけるかどうかも判らない。
だから、義理の父と母を守るべく自分が行かねばならないと思ったのだ。
これまでパンザグロス家の名を与えられ、それを語ることで様々な恩恵を受けてきた。その返礼を果たさなければならない。
強国アルファブラは自分たちでどうにか皇帝軍を撃退できるのではないかと思うが、虫王大隊のような圧倒的戦力を用いられたら、例え強国でも凌げないかもしれない。見過ごすことは難しい。ここまで来て、また寄り道するのはとても愚かしくも感じられるが、それでもこれが義理というものだし、縁というものだ。
それに、万が一にもアイアスがやって来ることだって有り得る。そうすれば再び彼に会うことができるのだ。
ソニアは矢も盾もたまらず長官室を出て、長官か隊長を探した。通路はそこら中役人と兵士の右往左往でごった返していた。本当に情報が入ってきたのがつい先程で、まだパニック状態なのだろう。
ソニアは何人かに2人の居所を尋ねて、返答する余裕のある者から広場に行けと教えられた。指し示された方に行くと、噴水のあるパティオがそこにあって、人々が集まり幹部の指示を仰いでいた。集会や定時の通達はこの場でなされるのが慣例なのだ。
大戦が始まっても、これまで一度も襲撃されたことのなかった人々は、俄かに訪れた凶兆に顔を強張らせている。
大切な通達が終わって一区切りつき、上役同士の相談が始まったように見えたところで、ソニアは長官を捕まえた。時間が無いのを承知しているから、ソニアは単刀直入に『アルファブラが襲われているのなら自分も参戦したい。主都に行く伝令役がいたら同乗させてもらえないか』と申し出た。
長官はほんの一瞬、はた、と考えて「ナマクアへはいいのですか?」と訊き返したが、ソニアが「こちらの方が優先されます」と答えると、すぐに応じてくれた。
「宜しいでしょう。これからすぐに情報収集に飛ばすところでした。一緒にお行きなさい」
長官の手配で兵士の1人がソニアを案内し、戦地に赴く為にとても念入りな準備している魔術師3人の下へと連れて行った。
リーダー格の中年男と若い男女が、治療薬や魔術薬の詰まった鞄を肩から下げ、きっちりとベルトを締めて杖の具合も調べている。3人共が聡明で勇気のある顔立ちをしていた。そうでなければ伝令役の魔術師は務まらない。こんな役目を負うからこそ、魔術師の中でも外交役の流星術師は尊ばれ、人々に崇められるのだ。時には戦士以上に。
簡単な紹介の後すぐに、兵士は自分の役目を果たしに戻って行った。魔術師達はソニアの姿と剣に目を留め、先に観察をしてから言葉少なに尋ねてきた。
「アルファブラの方ですか?」
「いえ、ただ縁者がいるので、助けに参りたいのです」
1人でも仲間が増えるのが心強いようで、若き魔術師は目を細めた。リーダーはマントの紐を結いながら「承知しました」とだけ言い、後は黙々と動いた。
今の自分の体でどれだけアルファブラの助けになるかは判らないが、ソニアは精霊の剣を握って《これがあれば大丈夫》と自らを奮い立たせた。
トレスの使者であることを示す戦時の特別な腕章が到着し、魔術師がそれを身に着けると、早々に一行は発着専用のテラスから光となって出発した。
あまり人目に触れずに入邸したソニアは、こうしてあまり目立たぬ出発をして短いトレス滞在を終えたのだった。