第3部15章『麦畑の道連れ』2
店を出た2人は馬用の井戸の側で立ち止まり、向かい合った。
「私、先を急ぐからここで馬を雇うつもり。あなたも馬車くらいには乗せてもらったら? その方が楽よ。その荷物だもの」
アトラスは何とも不服そうで名残惜しげに顔を曇らせ、戸惑っていた。このまま別れたくないという気持ちを少しも隠さず、ありありと顔に浮かべている。
「どう……だろう、馬車を借りて、一緒に行かないかい? ……君ともう少しお喋りがしたいんだ。とても楽しいから」
ずっとソニアの中で引っ掛かっている事もあり、それを確かめる為にも、この申し出は蔑ろにできなかった。馬車で行くのは単騎で行くより明らかに遅いから、本来なら検討にも値しないことなのだが、ソニアは迷い、考えた。
すると、彼女の背を何かがチクチクと突つく。ポピアンしか考えられない。やめろ、やめろと言いたくてしょうがないのだ。ずっと姿を隠しているので、飽き飽きしているのだろう。早く人間から離れて欲しいのである。
「でも……私、急がなくちゃ」
彼女がそう言うと、アトラスは本当に切なそうな顔をした。ソニアの胸が痛む。ポピアンは突つくのを止めた。
2人の間には、女将も見間違うほどの不思議な力の通い合いがあり、それが互いを繋ぎ、別れ難くさせていた。ずっとは無理でも、次の町までの一時なら……とソニアは考えた。
「……そうね、いいわ。馬車を借りて一緒に行きましょう」
背中がまた激しく突つかれ、アトラスはとても安堵し笑顔になる。ソニアは心の中でごめんね、ポピーと言いながら、その突っつきを無視し続けた。
2人は馬や馬車の集まる場所へ話をつけに行った。残念ながらそのまま貸してくれる所はなく、その代わり、これから出発するという荷馬車に相乗りさせてもらえることになった。
2人は荷台の後ろに腰掛け、馬車に揺られながら、道が前方に向かって遠ざかっていくのを眺めた。陽射しを浴びてとても温かく、風も爽やかで、肌を撫でる感触が心地いい。
暫く進んでいた馬車だったが、度々速度を落としたり止まったりしてしまうことがあって、馬車主が弱った。
「おい……どうした? 何が嫌なんだ?」
馬車主は2頭の馬を宥めるが、馬達はどうにも落ちつかず、盛んに嘶いてばかりいる。
やがて、困り果てた馬車主が2人に言った。
「なぁ、お2人さん。済まないんだが、どうにも馬の奴の様子がおかしくてな。普段はこんなことはないんだが……他人を乗せてるのが、どうにも今日に限っては気に食わないらしいんだ。ここまで来て何だが、降りてくんねぇかな。また馬車は通るよ」
そう言われては仕方なく、2人はここまで来た礼を行って馬車を降りた。
ようやく動き出した馬車は、得体の知れぬ気配が遠ざかったことを感じるや、見る見る馬が速度を上げて離れて行った。
「残念ね……どうしてかしら」
「…………」
思い当たることがありながらソニアは追究せず、こうなっては仕方がないと、また荷物を受け取って徒歩で進み始めた。
2人きりとなって、しかも馬車よりずっと進みが遅くなったから、アトラスの方は嬉しそうだ。
ソニアは、もうこの機を逃してはならないと思い、世間話をしつつも、少し際どい話題に触れ始めた。
「……私、最近移動ばかりしてるから少し情勢に疎いの。ディライラにはいたから、皇帝軍が撤退したのは知ってるんだけど……その他の国や街はどうなっているのかしら? 知ってる?」
「……さぁ、オレもそれ程……詳しくはないから」
彼の表情は硬くなった。ソニアもアトラスも、互いに互いの表情を探り合い、真意を読み取ろうとする。
「ホルプ・センダーっていうのがあるんでしょ。私……故郷の父の心配がなかったら、それに加わって戦いたいわ」
アトラスは俯いた。「そう」としか言えず、とても苦しげだ。
「何でも、あの先の英雄アイアスが現れたって噂もあるんでしょう? あの人……今は何処にいらっしゃるのかしら」
彼は何も言えず、歩みまで遅くなっていく。背に負う荷以上のものが急に彼の肩に圧し掛かったかのようだ。
ソニアは足を止めて振り返った。
「……どうかしたの? 気分でも……」
「…………いや、何でもないよ。……確かに……世界では困ったことばかり起きているから……ちょっと悲しくなったんだ」
アトラスは作り笑いをして、口元を無理に歪めて歩き出した。
ソニアはそこに佇んだまま、彼の背中を見つめた。悩みと苦しみと不安、それらが混ざり合い圧し掛かり、覆っているかのような後ろ姿が、揺れ動いていく。
もう、心から呼びかけずにはおれなかった。ソニアは意を決し、囁き声で言った。
「……お兄……様……?」
鳥の囀りと風のそよぐ音しかない草原で、その声は容易に彼の耳に届いた。
彼はビクリとして立ち止まる。振り返りはせず、そこでただ肩を微弱に震わせていた。
もう少しハッキリとした声で、ソニアは呼びかけた。
「……お兄様……なんでしょう……?」
辺りがあまりにのどかで静かだから耳鳴りがして、頭までボンヤリとし、アトラスは目を閉じた。そしてゆっくりと振り返り、瞳を震わせながらソニアを見た。
「……違うの?」
「……ははっ、どうしたんだい急に。……何のことだい? それは」
彼は白々しくも否定し、目を逸らした。彼女の言う兄とは、過去の英雄アイアスの事だとばかり思っている彼にとって、何か妙な誤解をされたとしか思えなかったのだ。
だがソニアはそんな彼に歩み寄り、不安げながら真直ぐな眼差しで彼を見つめ、こう言った。
「……ゲオルグ……お兄様なんでしょう?」
彼は震撼し、同時に悟った。何てことだ、彼女は知っていたのだ!
途端、時が止まり、彼の中を強力な稲妻が走り抜け、彼の思考能力、行動力の一切を低下させた。彼は瞬きも息もできず、本当に時の神に時間の流れを止められたかの如く、そこで立ち尽くした。ソニアだけが、ゆったりとした時の中で瞳の中の星を煌かせ、瞬きをしている。
永遠とも思えるくらい長い間止まっていた彼の中の時が動き出し、最初に起こったのは、衝動だった。とにかく目の前の彼女を抱き締めたいという。
彼はソニアの目の前、これまで幾度もそうしてきたように無言で術を解き、薄靄の中から真の姿を露にした。変化術を解いたその下は、紛れもなく長年彼女と交流を続けていたヌスフェラート、ゲオルグの姿だった。
ソニアはその姿を認めると、目をジワリと潤ませて顔を歪めた。
「……やっぱり……そうなのね……?」
彼より早く、ソニアの方から彼の胸に飛び込んでいった。腕を回し、しっかりと彼の背を抱き、ギュッと身を寄せる。
ゲオルグの全ての時が完全に動き始めるも、彼は思いの外すぐには動けず、自分の身に寄り添うこの感触と温かみをまずは存分に感じ、あまりの悦びに眩暈に襲われ、目を閉じ、そしてしっかりと彼女を抱き寄せ、縋るように強く抱き締めた。頬を寄せ、愛しい、愛しい彼女の香りを嗅ぐ。
彼が少しも否定しないし、こうして触れ合うことで伝わってくるものが特別だったので、ソニアはやがて確信に辿り着いた。
「やっぱり……あなたは私のお兄様だったのね……?」
ソニアもまた、全身で彼の波を感じた。肌を直接伝わってくる肉体の異質さ、それがおそろしく感じられる部分はあるのだが、そのずっと奥にある2人の血の共有する世界が、ソニアと彼とを結び付けていた。
彼の口からまだ答えは得られない。だが、こうして触れ合って感じているだけで、そうだ、そうだと体中を答えが反響し、涙が溢れて止まらなかった。
「……どうして今まで黙っていたの……?」
「…………」
「……昔から……ずっと知っていたんでしょう?」
あまりの歓喜、あまりの深い悦びに彼は激しく揺す振られ、頭が冷静になり回転を始めるのに、とても時間を要した。もう何も考えず、ずっとこうして彼女を抱き締めたまま命が尽きればいいのにとさえ思う。
初めて自分は兄として見られている。そして『お兄様』と呼んでくれた。こうして自分を抱き締め、しかも彼女の方から自分を捕えてくれた。
愛してる。愛してる。
長年求めてきたことだったから、歓喜が圧倒するあまり、この場で弾けて死んでしまいそうに感じる。初めて出会った時の痛みなど、この比ではなかった。
「ソニア……!」
そこで根を生やして木になってしまいそうなほど長く抱き合い、鳥の囀りを意識できるようになった頃、ようやく彼は現実の潮流に取り囲まれ、その海鳴りを耳にした。
彼女が遂に真実を知ってしまったということは、彼にとって決して喜んでばかりいられぬ問題だ。どう彼女に説明すればいいのか。どうすれば彼女をこの戦から遠ざけることができるのか。皇帝や父から離し、二度と彼等の目に触れさせず、人間世界と決別させられるのか。そして、どうすれば……彼女が自分のもとを離れずに留まってくれるのか……。
2人はようやく身を解き、互いの顔を見合った。彼女は彼の胸に手を当て、彼の心音を感じる。彼はソニアの頬を撫で、涙を拭ってやった。手袋が邪魔だった。
「……とうとう……解ってしまったんだね」
彼は手袋を脱ぎ、ヌスフェラート特有の鋭く長い爪を露にして、再び彼女の白い頬を撫でた。温かみも、すべすべとした感触も全てが心地いい。
「……何から……話したらいいのか……」
「全部……全部教えて! 私は何も知らない!」
「……ああ」
「きっとよ……! きっと……全部教えてね!」
涙で潤んだ彼女の瞳は、まるで浅瀬のように眩しかった。
「もう……自分が何なのか……解らないのは嫌……! ……私だけが知らないなんて……嫌よ……!」
これまでずっと出生のことに苦しんでいた彼女の孤独をそこに見て、彼は深く哀れみ、改めてそっと抱き締め、頬摺りをした。
「……教えるよ。何もかも……な」
2人は自然にゆっくりと歩き始めた。長い物語りをするのに、そうして動いていないと原動力が生まれてこないように感じたからだ。
「まず訊きたいんだが……君はどうしてこんな所にいるんだい? どうしてトライアにいないんだ?」
「……その話は……後にしましょう」
「…………」
彼はマントでソニアの肩を包み、その上から腕を回し、優しく抱いていた。陽射しに溢れる世界はとても美しく、青い麦の穂は風にそよいで波を立て、雲も鳥も滑らかに空を渡っていく。
しかし、進む道にはあまりに複雑な問題が転がって、2人の行く手を翳らせていた。余程慎重にしなければ、この道は渡り切れない。
彼は散々迷い、何から語るべきか、どんな順序で、どの真実を伝え、何を伏せるべきかを考え、その挙句、まずは自分と彼女の関係について教えることに決めた。2人は一腹の双子である、ということを。
それだけでソニアは大変なショックを受け、動揺を見せた。これまで人間と共に暮らしていた彼女だから当然の反応だと思い、この事実すら彼は慎重に伝えた。
「ふ……双子……? どうして? 有り得ないわ……! だって……あなたはずっと昔から同じ姿よ? 私が小さかった時から、あなたは今と殆ど変わらないわ!」
「……オレは今年で173歳。勿論……ソニアも同い歳だ、本当はね。お前は未熟なままに誕生してしまって……本当は生きてゆけない身体だったらしい。それを、母上が神秘の樹の力を借りて、百数十年もの間お前を存えさせ、看護を続けていたんだそうだ。そして……その甲斐あってようやく完全体になり、お前はこの世に出て来れたんだとか。オレはそう聞かされている。それが、20年くらい前のことらしい」
そんな、人間の基準では考えられないような時間の話を聞かされて、ソニアは呆然とした。173年なんて長い、長い時を自分が生きてきたなどと、あまりに実感がなく、とても信じられなかった。
彼女の中に後から生まれて来るであろう疑問は、既に彼が長い間考えていたことでもあるから、彼は続けて何点かを補足した。
「……本来のヌスフェラートならば、オレのように50年をかけて成人するものなんだが、お前の成長速度はその通りにはならなかった。おそらく、そのハンデの為だろう。肉体活性の能力が人間並みになってしまったようだ。だから……これまでお前は人間世界にいても怪しまれることのない成長をしてきた」
信じられない。信じられない。その言葉ばかりがソニアの頭の中を駆け巡り、こだまする。何の実感も証拠も得られない事ばかりだ。
ふと見ると、彼は悲しげに、罪悪感を顔一杯に広げていた。
「……オレは全く問題なく生まれてきたらしい。……お前にだけ……負担がかかってしまったんだ。……生きてこの世に出られたとは言え……お前の時間も、身体も取り戻せない。オレにも、こればかりはどうにもできなかった」
言葉が出てこなかった。ソニアは、受け入れられぬ突飛な話にただ戸惑い、否定するように何度も首を振った。彼女がある程度話を飲み込めるまで彼もその続きを語らず、様子を見ていた。
やがて、彼女から問うた。
「……それじゃあ……その……私を看ていたお母様は……? どういう人なの? 今も生きているの?」
彼は、この事に何より一層の悲哀を込めて首を振った。
「……もう、この世にはいらっしゃらないよ。お前が完全になる少し前に、病に倒れてそのまま亡くなられたそうだ。……実は、オレも母上には一度もお会いしたことがない。ずっと……死んだと聞かされていてね。本当は生きていたと知った時には、もう遅かった。……残念だ」
まだ頭が理解し切れないながら、ソニアは母を想像してみた。長年自分を見守り、今のこの姿を知らずに死んでいった母。どんな人なのだろう?
そうして、まだ知らぬ母のことを思ううちに、ソニアは心の何処かで、自分のことを呼びかけている優しい声を感じたような気がした。遥か昔、自分に投げかけられた母の言葉なのだろうか?
自分の名を呼ぶ美しい声、温かい声。…………よく思い出せない。
「……母上は、お前にとても似ているのだそうだ。本当にそっくりらしい。知っている人がそう言うんだ。名を……《エア》と言うんだそうだ」
「エア……。エア母様……」
初めて確かな答えを得られて、ようやく彼女はこれまでの一連の出来事を理解することができた。自分は、そのエアという人物にずっと見間違われてきたのだ。皇帝にも、あの髑髏男にも。
「……お母様は、ハイ・エルフなんでしょう?」
「……ああ。……それはもう知ってたんだね」
母を語る時、彼はとても誇らしげで、彼女が母親を知っていくことが嬉しそうだった。会ったこともないその人に、どれだけの愛を持っているかが見えるようだ。
「ハイ・エルフは世界でも有数の美族だ。芸事が得意で、心優しいことでも有名だ。そんな母上の血を受け継いで、お前も見事に美しく育った。それに歌が得意だ」
あぁ、やはり自分にはエルフの血が流れていたのだと改めて知らされ、ソニアは再びあの村での一時を思い出した。感受性の強いあの人達。歌いながらの物作り。エアルダイン。マナージュ……。
ソニアは深く吐息した。この目も、肌も、髪も、エアという母から受け継がれたものなのだ。もう、何処の誰か分からぬことはない。
「……お兄様は、ハイ・エルフに会ったことはあるの?」
「……ああ、あるよ。母上の生まれた村を見て墓を訪れたいと思って、村の近くにまで行ったんだ。そこで村の人達に会ったよ。でも……歓迎されなかったから、村の中を見たことはない」
「どうして? ……お母様の子なのに……」
彼の顔は再び憂鬱そうに翳っていた。
「……お前も見ての通り、オレの姿は正にヌスフェラートだ。何故なら……母はハイ・エルフでも、父がヌスフェラートだからね。そっちが強く出てしまったらしい。混血というのは……何処の世界でも忌み嫌われる。強く禁忌とする種族が多い。だから、あの村でもオレは招かれざる客だったのかもしれない。……本当に、ただ墓にさえ行ければそれで良かったんだがな。……それも叶わなかった」
信じられなくて、ソニアは俯いてしまった。自分はヌスフェラートの欠片もない、何処から見てもハイ・エルフの姿をしているから、混血と気づかれずに迎えられたのだろうか? 本当のことを知られたら、自分も拒絶されるのだろうか?
いずれにしても、彼が望みを叶えられなかったことが、とても憐れに思えて悲しくなった。
「……だが、母上の村だ。今も母上が眠る墓があるのなら……オレの生きているうちは誰にも荒らされたくないから、これまで陰ながらあの村を守ってきたよ」
酷い待遇を受けていながらも、そう思える彼の優しさと母への強い想いに、ソニアも胸が温かくなった。自分があの村に行けたことを彼に教えるのは何だか忍びなくて、ソニアはそのことを当分は伏せておこうと決めた。
そして、より触れ難い問題に入っていかねばならなくなった。
「あなたが双子のお兄様だということは……私にもヌスフェラートの血が入っているのね」
2人の目がバチリと合った。彼の顔はとても慎重に思案していた。母がエルフだということは美しく飾り立てられた夢物語のようなもので、語るに何の躊躇いもないが、このことはそうはいかなかった。何せ、世界中の人間は今、必死にヌスフェラートと戦っている。彼女は人間側で生きており、先日ヌスフェラートの1人を葬ったばかりである。彼女はヌスフェラートを敵とみなしているはずだ。その種族の血が己の中に流れていると知ったら、どんな気持ちになるだろう。自分を責めたりするのではないだろうか。
それでも、答えない訳にはいかないから彼は答えた。
「……ああ、そうだよ。父がヌスフェラートだ。お前にも半分、ヌスフェラートの血が流れている。オレとは逆で、お前の方は母上の血が強く出ているらしいがね」
答えが出れば出るほど、彼女の足取りは重くなった。そしてここで立ち止まった。
「……あなたは前に言ったわ。あなたのお父様が皇帝軍の重要な地位にいるって。あなたは1大隊の長の息子だって。……では、お父様は皇帝軍の人で、大隊の1つを率いているのね?」
ここが決裂の境界、断崖の縁だ。
彼女を失いたくない。絶対に。何を失っても彼女だけは……
彼は、あまりに鋭い刃先の上に立った気分で緊張に体を震わせた。彼女の瞳もまた、早くも苦しみに支配され、星が溺れかかっていた。
「その人がナマクアを請け負ってて……テクトを攻めさせたのね……?! これから……トライアを攻めるのね……?!」
辛過ぎて言葉にできず、彼はまた彼女を抱き締めた。
逃げないで……! 行かないで……! 苦しまないで……!
「どうしたらいいの……?! 私……どうしたら……!」
彼には何も言えない。人間を忘れろ、なんてことをこの妹が決して受け入れる訳がないと存分に知っている。だが、父を止めることもできない。軍そのものを止めるなんてことは、もっと無理だ。