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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第32章
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第5部32章『滅亡のとき』20

 フィンデリアがホルプ・センダー本部に戻った時、そこにはまだアイアスがいた。久々の登場であるから人々への連絡事項が多いし、メンバー達に指南すべきことが多々あるので、今回は長めに滞在することにしているのだ。

 彼女はタイミングを見計らってアイアスを呼び出すと、トライアのことだと言って2人きりにさせてもらった。彼女が浮かない顔をしているから、察しのいいアイアスも顔に不安を過らせる。彼が直接行ってこの事を知るよりは、自分が行って間接的に伝えられて良かったのかもしれない。

 白い外壁が美しいエクセントリア王国の王族別邸であるこの建物のテラスで、人目を憚りながらフィンデリアは切り出した。

「ソニアさんのことなのですが……実は……」

アイアスの顔が曇った。


 ハニバル山脈沿いにジタンを進めるソニアは、そうして日がな一日その辺りの村々がいつも通りの平穏な生活を送っていることを遠巻きに眺めたり、現れ出てきた魔物を軽く追い払ったりして、陰ながらこの国を守る旅をしていた。

 そして、その周りを青い小鳥と大きな猟犬と灰色の猫がいつも纏わりつき、彼女の側を付かず離れずに追ってきた。セルツァだけでなく、デラとアルスラパインも動物に姿を変えて護衛をしているのだ。

 セルツァはいつも通り青い小鳥に、デラは白と茶の斑模様で毛並みの美しい猟犬に、アルスラパインは青い目をした丸顔の灰色猫となって目立たぬように行動した。

 デラの猟犬は騎馬しているソニアの姿に合ってるし、狩猟者に見えるからいいのだが、猫が付き纏うというのは何となく不思議である。だが、その辺りの感覚は少々ずれているらしい。特に気にしなかったので、敢えてソニアは何も言わずに放っておいた。不自然は不自然でも、この様な変身術の芸当にかけてエルフ族は実に優秀であると改めて驚かされ、感心することの方に気を取られていたせいもある。

 そのうち、彼等が動物になり切っているせいで彼女も存在を煩わしく感じなくなり、いつの間にか動物連れの行動が馴染んでいった。

 彼女がジタンから降りて休んでいる時などは、彼等も元の姿に戻って休憩するし、動物姿のままの時は側に来て訴えるような目でジッと彼女を見たりした。青い小鳥の円らな黒い瞳も、猟犬の潤んだ上目遣いも、灰色猫の扁平な顔も可愛らしくはあったので、そんな彼等と目が合った時にソニアも済まない気持ちを表して微笑んで見せた。

 そうして過ごす間、他の事も考えたりする。ディスカスは、自分の所へ戻る気になった時の為に、今も何か自分に対して目印のようなものを施しているのだろうか、とか、今頃ビヨルクのゼフィーはどんな風にして生活しているのだろうか、といったことなどをだ。

 これまでのように時間単位で色々な務めがあって、人々に指示を出したりそれを人に報告したり、という忙しない生活パターンから急に解放されてしまったものだから、こうして旅をしているのは謹慎室の中にいる時と然程変わらなかった。頭がとても自由で、幾らでも考えられるし、幾らでも悩める。

 ゲオルグが滅茶滅茶にしてしまった、あの町は大丈夫だろうか。夢の中で見た風景だから、何処の国の何という町なのかも判らない。自分がもう1人いて、あの場所が判っていたら、行って人々を助けたいくらいだ。だが、今の身ではそれもできない。被害が少ないことを祈るばかりだ。

 ルークスが死んだのも、ゲオルグが死んだのも、全ては自分を守ろうとしたことに端を発している。この自分なんかを守る為に、あんなに大切な人が2人も死んでしまったのだ。それを思うと居た堪れなくなってくる。しかも、その自分は今やトライアから追放された身だ。もっと早くからこうしていれば、あの2人が死ぬこともなかったのだろうか。だが……全ては後の祭りだ。

 今でさえ、こうして自分を守ろうと3人もの優秀なエルフが周囲を固めてくれている。それも心苦しい。きっと、今の世の娘達は、何時でも自分を見守り助けてくれる存在に憧れを抱いているだろう。こうして自分の守護者が何人もいることは有難いことのはずなのに……。だが、今は逆に1人になりたかった。もう、自分を守るという名目で誰がか傷つくのは耐えられない。自分のことは放っておいて欲しい。

 ソニアはなるべく自分のことは忘れて、守るべき人々のことだけを思うようにした。

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