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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第32章
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第5部32章『滅亡のとき』6

アイアスは笑顔で頷いた。ますます、この国とこの女性とを守らなければという気持ちを強くする。そして思った。ここまで不思議なことを経験している自分は天使で間違いないであろうから、そうなると伝承通りであれば自分は子孫を残せない身体をしているはずである。そんな自分と結婚していたら、この女性は子に恵まれなかったであろうから、やはり違う人と結婚してもらって良かったと。

 アイアスは改めて彼女を抱き締めた。段々と砕けた笑い声を上げられるようになる。昔のように。

「まるで……自分のことのように嬉しいです! 貴女の子は私にとっても特別です……! できる限り、貴女も貴女の御子もお守りいたします! ああ……今日お会いして、こんな事を知れるなんて……! 国王陛下とセイル殿下を失ったばかりのこの国に、またとない吉報となりましょう」

フェリシテも、泣きながら笑った。

「貴方が生きて無事であることの知らせもまた、国民にとっては大変喜ばしいものですよ」

 身体に障るといけないからと言い、アイアスは今日の所はこれで去ることにした。名乗りを上げた暁には正式に会談を求めて参りますと約束して。フェリシテは笑顔でそれを見送った。

 彼女は、これまで見方によっては不幸な女性であった。だが今宵はそれまでの哀しみを一掃するかのような慶び事が重なって、自らの人生が息を吹き返したかのように感じられた。

 心から求め、望んで手に入れた訳ではない成り行きの人生を生き、仕方なく王権を継ぎ、義務感から女王として立派に治世を行わなければならないと考えていたのだ。生き甲斐や、やり甲斐を感じるというのではなく、それをただ生きる理由にして。

 だが、今宵は自分の生き甲斐がいっぺんに2つできたのだ。1つは復活し、もう1つは新しく誕生するものだ。どちらとも、彼女にとっては愛しくてならないものである。

 そして彼女は心の中でセイルにも報告した。彼はきっと喜んでいることだろう。また、アイアスが現れ、彼女と我が子を守ってくれることも喜んでくれるに違いない。彼女がまだアイアスを愛する心を持っていると知っていても結婚した、セイルとは、そういう寛大な人だったから。むしろ、今度こそアイアスと結ばれることを望み、応援さえしてくれるのかもしれない。だが、それは難しいだろう。あの人は特別過ぎる人で、こんな一つの国に縛ったりしてはならない存在だから。

 フェリシテは部屋に戻ると、早速王室付きの医師を呼んで、自分の体を診断させることにした。母と祖母には、医師のお墨付きが出てから報告するつもりだ。医師の診断が下るのには今少し時間がかかるのだが、フェリシテは確信していたし、パンザグロス邸に戻ったアイアスも逸早くこの事を両親に教えたものだから、両親も疑わずに大いに慶んだのだった。

 それが王子であれ王女であれ、このアルファブラの未来を担う王家の後継者となる。パンザグロス夫妻はアイアスのことといい、女王の懐妊といい、人に話せぬ素晴らしい物事を自分達ばかりが知っていることが何ともむず痒くて、一日も早く人々に言えるようになりたいものだと願った。

 アイアスが会わねばならぬと思っている人物は、あと1人である。名乗りを上げたら、今度こそソニアに会いに行こう。両親とフェリシテとの再会は今のところ素晴らしいものであるから、きっとソニアとのそれも素晴らしいものになるに違いないと思い、アイアスは胸膨らませた。

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