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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第32章
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第5部32章『滅亡のとき』2

 こうして人間世界の者達が生き延びるべく様々なことに尽力している間、皇帝軍でもまた着々と動きが進んでいた。一時休止は、やはり皇帝軍そのものの活動停止ではなかったのである。

 皇帝に一応の断りを入れてからアルファブラのパンザグロス邸を襲って両親を攫い、アイアスを誘き出して対面することに成功したヴォルトは、そこでアイアスから聞けたことを皇帝に報告していた。

 自分も含め、天使と言われている人物が2人も世に居り、しかも片方は奇妙な復活を遂げた。これは完全に普通ではない。しかもナマクア大陸のテクトにアイアスはいなかったようであるから、バル=クリアーの使い手が人間側にまだ他にいるはずなのだ。

 それら新事実を合わせた結果、まずアイアスをどうするのか決めるのは先送りするということになって、ナマクア攻めにより、もう1人の天使を焙り出そうという動きになったのである。そしてバル=クリアーに弱いヌスフェラートの部隊は除いて、天空大隊、虫王大隊、獣王大隊、竜王大隊のいずれかで、それを請け負うようにとの命を皇帝は出した。

 各大隊それぞれの事情と思惑によって、結局その中から竜王大隊が立つことになった。元の担当である魔導大隊との折衝に少々の時間はかかったものの、最終的にそれで誰も異論を唱えなくなり、納得したように思われた。

 皇帝軍側に人間のスパイはいないものだから、このことを当時知り得ていたのはトライアのソニアとアーサーのみであった。ルークスから得られたこの情報が他国に関することであったら黙っていられなかったろうが、自分達の国に関する情報であるから2人は沈黙を守っていた。

 おそらく皇帝軍最強であろう竜の軍団が進撃準備を始めているなどと知ったら、世界中の国が恐怖に怯えたに違いない。

 だが、その進軍も結局なしになってしまった。ヴィア=セラーゴに一時終結した竜の軍勢を、噂のマキシマが撹乱して妨害したからである。しかもその戦いで、ヴォルトの片腕であり、対決させたことがないから正確な番付はできないものの、皇帝軍の上位有力戦士であったことは間違いないルークスが倒されてしまったものだから、皇帝軍に激震が走った。この事を知っていたのもまた、人間世界ではソニアとアーサーだけだった。

 竜王大隊は痛手を負って一時解散し、皇帝軍は作戦を立て直すことになり、ヴォルトはマキシマへの復讐を今暫くの主目的とするようになった。これでまた、人間側から見れば皇帝軍の休止期間が伸びた訳である。アイアスでさえも、それを知らない。

 新たに会合が設けられ、皇帝軍は幹部同士で今後についてよく話し合った。大規模軍勢であるから、雑に扱って統率力に乱れを生じさせてはならないと皇帝はよく知っているのである。何処から結束に綻びが出るか解からないものだ。

 すぐに結論は出せない状態だが、ヴォルトはその途上で仇討ちに出発した。そしてウィナホル大陸のバワーム王国首都でその気配を宿す人物を発見し、その場で決闘を始めた。

 マキシマというのは、大した人物であった。正体を突き止めるには至っていないのだが、その鍵となる情報は幾つか得られ、長時間の戦闘の末にマキシマが自己崩壊してしまい、それでヴォルトが勝利した形となった。皇帝軍はこれでひとまず懸念が1つ消えたわけである。

 ヴォルトは今、魔導大隊とゲオムンドの関連を疑っている。決して気取られぬよう裏で調査を進めさせながら、同時に皇帝軍全体の今後の計画を組み立てているところだ。

 ここで一度、一斉攻撃を仕掛けてはどうかとカーン皇帝は提案している。一大隊一都市で何日か置きに攻めていたこれまでのペースを一度変更し、全軍で同時に各国を攻めるのだ。勿論これで全ての勝敗を決するつもりではなくて、それによりアイアス以外の天使が出現するのかを確かめようということが一番の目的である。だから、それらしき者と遭遇したら無理に戦わずに引いていいのだ。情報を得てそこに飛ぶのは選ばれた者達だけにするのである。天使であるヴォルト、将軍サール=バラ=タン、そして各大隊の副将。

 反対する明確な理由がなく、一斉攻撃の方が自軍が妨害される可能性は低くなるので、どの大隊もカーン皇帝の提案を概ね支持した。

 そして皇帝はこうも言った。これまで利用を控えていた兵器の使用を今度は考えていると。ヌスフェラートの科学力は随一である。それに優れた魔法力も加わった兵器であるから、さぞおそろしい威力を持つものなのであろうと皆は心の底で怖れた。特に虫族、獣族、鳥人族はそのような兵器を嫌っているので、明らかな動揺が見られた。

 皇帝の意図は、これ以上自軍の損失を増やさないよう兵器使用に切り替えただけであって、そう説明すれば他の者達もあまり反対はできなかった。

 遂に、皇帝軍の粋を集めた兵器を使用しての一斉攻撃だ。人間達はひとたまりもないだろう。これで勝敗を決するつもりはないと皇帝は言っているが、実行すれば結果的に、これで人間達は再起不能になるのではないだろうか。誰もがそう思った。

 確かに、ズルズルと皇帝軍に拘束される期間が長引けば、それだけ負担も大きい。早期に決着がつくのなら、それもいいかもしれない。それで全軍がそれを承諾することになり、準備に移った。

 このおそろしい決定を人間側で知る者は誰もいない。それは幸いなのか、悲劇なのか。

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