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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第31章
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第4部31章『堕天使』70

 翌早朝。

 珍しく朝霧に包まれたトライア城都。

 城郭に居並ぶ国王、幹部、有力者、兵士、官吏、女官、その他大勢の城勤めの者達に見下ろされ、見守られながら、稀代の国軍隊長だったソニア=パンザグロスは旅立った。

 本人の願いでもあり、また罪人として相応しく、小さな裏門から。

 次代の国軍隊長であるアーサー=ヒドゥン近衛兵隊長より譲り受けた栗毛色の愛馬ジタンに乗って。

 旅立ちの道具として所持することを許された精霊の剣を腰に差し、背に奇跡の護りを杖状にして負って。

 旅行着の上にマントを羽織り、短く整えた髪をフードですっぽりと覆い隠して。

 ジタンに乗る都合上、流星術で異大陸へいきなり送られる措置は免除されたので、これから北上し、ペルガモン領の港から船でガラマンジャに渡るという約束になっていた。道中の監視役を付けない代わりに、これから一週間の内にトライア領を出なければならない。それ以降に領土内で姿を目撃された場合は、強硬措置が取られることになっている。流星術者によって異大陸に強制的に連れて行かれるのだ。まあ、そんな世話になることはないだろうが。

 彼女は一度だけ馬を止め、城郭に並ぶ者達を見上げた。

 霧の中で霞んでいたが、国王の姿を認めて最後の敬礼をし、真紅の近衛兵服が目立つアーサーも見つけて視線を送った。ハンカチを手に顔を背けたり、涙を手で拭っている者も多い。

 徹底した緘口令で民は今朝の旅立ちを知らないから、偶々通りかかった者がいても、今ここで何が行われているのか解らなかったし、そこにいるマント姿の人物がソニアだとは気づかなかった。

 この霧のお陰で、どうやら静かに旅立てそうだ。

 ソニアは、これが生きた国王を見る最後とも、この城が形を持っていたのを見る最後とも知らずにキッパリと背を向け、ジタンを進めさせた。

 そして馬と共に霧の中に白んで溶け込んでいき、消えていったのだった。

31章『堕天使』終章

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