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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第22章
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第4部22章『暗黒騎士』13

 それからソニアは、妖精ポピアンを含めてのディライラ襲撃事件を語った。戦模様の全容は概ね姫が語った通りであるものの、撤退する虫軍に巻き込まれて辿り着いた先は虫達の王国だった。しかも、それは地下にある全く別の世界に存在している。

 彼女が次々と語るとんでもない展開ににも関わらず、アーサーは彼女の願いに精一杯応えようとして、質問を挟まなかった。ただ、どうしても驚きの声を上げたり驚愕の表情が顔に出たりしてしまうのは抑えようがなく、度々そうしては懸命に引っ込めようとした。

 ソニアは彼の様子を見つつ、続けた。

 そんなとんでもない場所に連れて行かれたソニア達は囲まれてしまい、逃げることなどできないから、その国の都市キル・キル・カンに行って女王と面会することになった。

 ポピアンがいたお陰で魔法の守りがあったから危害は加えられず、女王とも普通に話ができた。そしてポピアンの策で自分がハイ・エルフの姫ということで通し、たまたま遭遇してしまったソドリムの襲撃にて恩ある人間を助けようと戦った立場を理解してもらい、虫軍そのものには敵意を持っていないことを認めてもらえ、負傷した将軍のことも村の土産である神秘的な実の力で癒したので良好な関係が築けた。

 だが、人間も一緒に無事に帰してもらう為には、ある交換条件を飲むことになり、何と皇帝軍の本部であるヴィア・セラーゴに赴いてハイ・エルフの姫として証言台に立つ役目を負わされた。隠れて潜入したのではなく、変装をして堂々と乗り込んでいったのだ。しかも、皇帝軍の各大隊幹部等が居並ぶ報告会に出席したのだ。

 この時のアーサーの驚き様といったら、目を大きく剥いて、手で押さえていないと言葉が出てきそうだと言わんばかりに口をギュッと覆った。誰が聞いても、この話はおそろしいだろう。

 キル・キル・カンでの出来事で、フィンデリア姫もカルバックスもポピアンのことを知り、ソニアの出生の可能性に関する微妙な事情も知った。だから今回トライアに滞在した際も、ソニアに気を遣って多くの事実を伏せていてくれたわけだが、その2人はこの時エルフの姫の付き人としてエルフに扮した。

 先日彼にも話した通り、皇帝は以前、自分のことを見て后に似ていると言った。だから試す価値はあると思い、その人物だと思われてもいい曖昧な台詞を言って皇帝と対峙した。幸い皇帝は――――――その人物だと思って疑わなかったようだった。

 一大決心をして臨んだのは、この大戦を止めるよう、皇帝に直接会って願いたかったからだ。そうしてみたが……結局互いの要求がかみ合うことはなく、2人は静かに別れた。

「……とてもおそろしい人だった。この戦のことについて自分の信念を語っていたけれど……私には意味が全く解らなかったわ。人間に理解できるような感覚ではないのかもしれない。諦めるというのはとても悔しいことだけれど……話し合いで止まるような戦ではないということだけは骨身に染みたわ」

その対面の際、虫軍の兵士達に頼んでフィンデリア達は無事にこの都市を発たせてもらえることになり、先に行かせたのだが、対談を終えて城を出ようと上階に行くと、そこではフィンデリアが獣王大隊の将を襲撃して大変な騒ぎとなっていた。

 彼女はあくまでエルフとは無関係に潜入した人間として振る舞い、ハイ・エルフやソニアに危害が及ばぬようにしていた。ソニアもまたエルフの装束は捨てて人間として変装し、救出に向かった。

 そこから先の救出劇は姫の証言通りであるが、ソニアの方の脱出は実は異なっている。自分はソドリムでも目撃した戦士に何故か助けられ、その人の流星術でヴィア・セラーゴを後にした。人間世界の何処かに彼女を送り届けると、その戦士はまた何処かに消えてしまった。

 全く訳が解らなかったが、それで自分は助かったのだ。姿を消したポピアンも一緒だった。

 そして、その直後に会った人間と道を共にし、流星術者を求めて大きな街を目指したのだが、その男と話すうちに段々と正体に気づき、確かめてみれば、それは先日別れたゲオルグだった。そして、それまでハイ・エルフの村の誰もが教えず、ポピアンも語らなかったソニアの素姓について彼が教えてくれた。

 自分と彼はやはり血の繋がりがあり、実は双子だったのである。姿が違うのは、それぞれが父母の影響を強く受けたからだ。父はヌスフェラートであり、母はハイ・エルフなのである。誕生してから分かれ分かれで暮らしていたのには、いろいろと事情があったからなのだ。

 だが、後に判明することになるのだが、これは彼が父から教え込まれていた偽りの真実であり、2人は双子ではあるのだが、実は父親をそれぞれ異にしている。

 ともかく自分を守りたい一心の彼は、トライアに何としても帰ろうとする自分に対して遂に強硬手段に及び、気絶する毒を使って拉致し、彼の住まう絶海の孤島の宮殿に連れ去った。そして、そこでずっと暮らすことを望んだ。流星術の使えない彼女には決して出られないはずの環境なのだが、姿を消してついて来てくれたポピアンのお陰で脱出の糸口が見えてきて、途中で入れ替わり、自分は宮殿内を探索した。

 ここでのエピソードがソニアにとって最も話すのが辛い内容であり、アーサーに話せるか悩みあぐねていた部分でもあるのだが、彼女はそれをどうにか話した。あんまり辛くて、ここに来て彼女の声は度々途切れ、息遣いが苦しくなっていった。

 ふとアーサーが見れば、ソニアは止めどなく目から涙を流れさせている。見るに耐えかねた彼は彼女の肩を抱き、その腕を擦った。話があんまり酷いから、実は彼の手も震えていた。それを彼女が行ったのだと思うと、苦しみを察するあまり居堪れなくなる。

 哀れなエルフの娘を解放した後の脱出劇も苦しいものだった。結局ゲオルグに捕まり、対決せざるを得なくなった2人。そこでポピアンが語った2人の出生の真実。

 自分の存在だけが生きる縁だった彼は、真実を知って心乱し、おそろしい変貌を遂げて力ずくで自分を捕らえようとした。その姿は、ソドリムで虫軍の将と戦い、ヴィア・セラーゴにおいては自分を助け出してくれたあの謎の戦士だった。どんな秘儀を施しているのかは知らないが、あの戦士の正体は彼だったのだ。

 この悪夢のような追跡と逃走は辛うじて終わり、ポピアンの流星術でソニアは脱出した。しかし、無事に逃げられた後で、ポピアンが語った真実にも嘘があったことが発覚した。それは彼だけでなく、母をも傷つける許し難いものだった。

 そこでソニアはポピアンときっぱり別れ、許しを願うのであれば、彼に本当の真実を語って贖罪するよう言ったのだ。それ以来、彼女とはまだ再び会ってはいない。

 彼はまた自分の所に来るかもしれない。その時は、これまでと全く違った戦いになることだろう。だが、会うことができれば自分の口から真実を伝えてやることができるので、母のことについてだけは教えてやりたいものだと思っている。

 とにかく自分が目指すのはトライアだから、それからまた旅を再開し、次はトレスという街に着いた。ここから先の、グレナドに至り鳥軍と戦うエピソードはそのままである。

 ゲオルグに連れ去られて宮殿で過ごして以来、自分の力を削ぐ為の術を施されたか薬を飲まされたかで力が出せないものだから、風だけでどうにか対処しようと、かつてない極限域にまで高めてみた。結局そのせいで気を失ってしまい、鳥軍の撤退には役立ったようなのだが、鳥軍の兵士に捕まり、危うく皇帝軍本部に連れて行かれるところであった。

 そこを、幸運にも負傷した鳥軍兵士が取り落とし、セ・グールの偵察隊が救助してくれた。その先、セ・グールについてはかなり伏せている事がある。

「ただ助けてくれたと言っていたけれど……本当は違うの。鳥が『風使いを捕まえた』と言っていたらしくて、それで偵察隊が私のことをハイ・エルフだと思い、ハイ・エルフに用事があるから確保したのよ」

 目覚めると既に自分は海の下で、対面したセ・グールの人に彼等の要望を説明された。かなりの誤解と行き違いがあったようだが、自分には彼等の要望に応える能力がないことを理解してもらい、トライアへ連れて行ってもらえることになったのだが――――――事態の解決に必死で手段を選ばなくなっていた兵士の1人がソニアを奪い、問題の起きている現場に強引に連れて行き、放り出した。

 何もできるはずがない自分は慌てて身を守る為に場所を探し避難するだけなのだが、その兵士は力の出し惜しみをしていると思ったようで、決して助けてはくれない。

 海底の危険域に1人取り残されたソニアは、そこで突如として現れたハイ・エルフの助っ人に出会う。他人の記憶を通して既に知っている人だったから、ソニアも安心して彼に任せ、セ・グールの問題解決に力を貸した。

 彼が行った魔法は大したものだったが、中に例の兵士が残ってしまい対処に困り、そうこうしているうちに竜が術を破ってまた外に出てしまったのである。そこで今度は、ソニアが身を呈して竜を止めようとしたのだ。

 大変なことではあったが、その竜にも事情があることが判り、2人は心を通わせることができて友達となった。そして行き場のない可哀想な子供であるから、ソニアがトライアで一緒に生活することを提案したのである。

 その竜こそ、あのゼファイラスなのだ。

 やはりアーサーですら、ゼフィーの前科を知ると険しい顔をした。そうと知らずにあの子を見てきて、子供らしい可愛いところがあるのを知っているから良かったが、そうでなかったら批判しそうな様子である。

 その後、ハイ・エルフの助っ人には被害域の修復の為に残ってもらい、自分とゼフィーは一足先にトライアを目指して出発した。

 夜になったので、とある島に降り立ち休憩していると、その島で不思議な体験をした。白い竜に乗ってやってくる人物のことを予言され、20年ほど預けられていた鎧があり、ソニアこそが持ち主となるべき人物だと言うのだ。そこで得たのがあの鎧であり、作り主も送り主も全くの不明で、答えをくれることなく聖堂そのものが消えてしまった。

 そこでの追求は止め、ソニアはトライアを目指した。そして帰還に至るのだ。

「……これで全てよ。私自身がまだ受け止め切れていないことが沢山あるの。だから、話に聞くだけのあなたが理解できないことがあっても当然だと思う」

シーンと、静まり返った。彼女からの話が終わったわけだから、アーサーも話して良いのだが、彼は聞いたことを咀嚼するだけで精一杯で、まだ喉にも通っておらず、ずっと頭を抱えていた。

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