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Sonja〜ソニア〜  作者: 中島Vivie
第21章
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第3部21章『孤島の聖堂~帰還』6

 トライア城にその使者が到着した時、フィンデリアは王夫妻との朝食を終えて早速勤めに就き、主城にある見張り台に立っていた。ここはぐるりと三方が見渡せるので、流星術者専用のテラスに人の出入りがあるとすぐに判る。既に滞在4日目で、各国を巡り帰って来る魔術師の姿格好は覚えており、国務の術者は腕章をしているので見分けがつくのだが、そんな見なれた装束の者とは違う術者が入ってきて、テラスに待機している兵士に慌てた様子で何かを伝えているものだから、気になってフィンデリアも降りていった。

 急いで階段を下り、ちょうどテラスから中に入ってきたところのその使者と鉢合わせる。それ

は年配の女性魔術師だった。フィンデリアは歩きながら話をした。

「何かあったのですか?」

「国軍隊長のソニア様がデルフィーにお戻りになったのです! 間もなくこちらに見えるでしょう! 何やら大きくて白い竜を伴っているので、敵だと思って攻撃しないようにご注意を促しに参りました!」

「――――あの方が帰って来たのですね?!」

フィンデリアはパッと顔を輝かせた。カルバックスも喜んでいる。そして姫に言った。

「ほぅら! あの方はやはりご無事だったのですよ! しかしまぁ……今度は竜を従えていなさるとは……!」

姫と2人だけの秘密にしているが、妖精の守護があった彼女のことだから、竜と聞いてもこの2人は受け入れられた。

「――――では、私が国王陛下にお伝えします! 貴女達は近衛兵隊長様を探して知らせてあげて下さい! 軍の方に先に伝わっていないと大変です! 手分けして連絡を!」

兵士が「お願いします、姫君!」と言い、軍部への連絡を請け負った。

 フィンデリアは王室へと急ぎ、小走りになって廊下や階段を突き抜けていった。途中、行き合う人々に「どうかされましたか?」と聞かれるので、「ソニアさんがお戻りになりますよ!」と言いながら更に先へと走り続けた。言われた方は本当か? 本当か? と騒ぎ始める。そして、フィンデリアの通った道にいた者からジワジワと情報が伝わっていった。

 魔術師と兵士の方も同じように急ぎ足で城内を巡るのだが、近衛兵隊長の姿はなかなか見つけることができなかった。

 近衛兵に出会う度に訊いても「ついさっき会ったばかりで、その後何処かに言った」としか言わない。ちょうど巡回している彼の後を追うように回ってしまっているようだ。

 とにかく見張り兵は「竜が来ても攻撃するな」とだけ言い残して行くのだが、上司からの正式命令でないものだから、伝播に少々の遅れが生じる。通常なら、指示を与える将は決まった場所にいて情報のやり取りを行うものだが、今はたまたま彼が小巡回を行っているせいで、最短の連絡ルートが使えなかった。

 そんなことを知らぬフィンデリアは王室を訪れ、つい先程長めの朝食を共にした王夫妻に改めて拝謁した。

「――――――失礼します! 王様! ソニアさんがこれからお戻りになるそうですよ!」

国王も王妃も、あまりに待ち続けた知らせだったから、聞いた時は一瞬顔を強張らせた。フィンデリアがもたらした生存の知らせのように、その後に付帯して悪い知らせがあるのではないかと思ってしまうのだ。

「ま……まことかね?」

「たった今、流星術でデルフィーから使者が参ったのです! 今はデルフィーにおられるようですよ! これから竜と一緒にこちらに戻ってくるそうです!」

「竜?!」

王も王妃も目を見開いて顔を見合わせる。聞き間違いかと、もう一度フィンデリアに確かめもした。

「なんでも、竜と一緒だから敵と間違われる恐れがあるので、先にこうして知らせを送ったのだそうです。もうじきにこちらにいらっしゃるでしょう!」

王の頬に赤味がさしてきて、目を潤ませた。

「デルフィーということは……南の方から来るのじゃな? では……見なければ! 見なければ!」

王が南に面したテラスに出て行こうとするので、王妃が慌てて付き添った。侍女も後を追う。

「――――私はもう少し知らせて回りますので、これで!」

フィンデリアとカルバックスは王室を後にし、再び城内巡りに走った。


 その頃、噂の近衛兵隊長は1人、人目の少ない見張り台で束の間の小休止をしていた。東南にあり、ニ方を警戒できる場所なのだが、もっと高い位置にある見張り台の方が敵襲警戒には適しているので、平時のここには兵士が配されておらず閑散としている。この場所はむしろ敵が城に迫ってきて、城壁を越えた後で役に立つ場所だ。

 彼は巡回の際、ここにもよく立ち寄る。昨夜の水辺と同じように、ここでならほんの暫く偽りの気丈さを捨てて息を抜くことができるのだ。今は、強い近衛兵隊長として午前の指示を与えるという仕事を終えてきたばかりである。一日の中でも朝は人々に活力を与える大切な時間なので、こちらも完璧な安定感を持っていなければならない。そんなエネルギーの要る役割を果たしたばかりだから、この場所が必要になるのだ。

 彼は森を見渡しながら、心休めた。他の見張り台からは彼の姿が見えるが、こうして壁際に寄っていれば背中だけで顔は見られない。

 彼女が去った当初は、ただ、ただ、毎日が辛かった。今も苦しいが、辛いという表現の域は既に通り越している。正直、もうこれ以上心配し、考えに考え、想い続けるのは疲れていた。希望があるうちは、激しい恋は生きる活力となる。だが、失われた時、それは心を蝕む猛毒となるのだ。命を奪うことだってあるだろう。

 だが、これ以上自分は心を痩せ細らせてはならない。守らねばならぬ家族と国がある。だから、そうならないように、考えないことを体に覚えさせたのである。決して逃避ではない。彼女を忘れられない以上、2つに1つなのだ。始終彼女を想い続けて身を削っていくか、生きる為に想いを時々凍結させるか。

 そして彼は、後者を選択したのだ。

 彼女は戻ってくるかもしれない。マーギュリスの占いでもそう出ていた。ならば、生きて強く待たねば。少しでもこの国をより良い状態で守りながら。そうでなければ、彼女が帰って来た時に会わせる顔がないではないか。彼女を想うあまり仕事が手につかず国の守りが疎かになったりしたら、そんな弱い男を彼女は決して選ぶまい。それに、彼女に値しまい。

 彼は、自分自身で道を見出すことのできる人間だった。

 しかし、やはり、それでも、心の奥底で炎は揺らめき続けている。彼にもそれは解っていた。強くあろうと思い、そうしてきたつもりだが、いつ終わりが来るとも知れないこの不安の淵で、後どれくらいの間、自分は耐えてゆくことができるのだろう。

 そろそろ、自身がなくなり始めている。

 見渡す風景は美しいのだが、どれもこれも、それを好きだった彼女のことを思い出させた。城壁に止まる小鳥達の囀り。緑広がる森に白い星となって点々と輝くクローグの花と甘い香り。一年中で最も美しい乾期の始まりだ。

 この乾いた青い空を、宝石のように輝く森を、お前はもう一度見られるのだろうか?

 そう思いながら、アーサーは青い空と森の境界に浮かぶ白い雲を見た。

 あの雲……

 アーサーはふと、雲の一つが妙な動きを見せていることに気がついた。見張り台の壁に乗り上がってよく見ると、その姿はもっと鮮明になってきた。白い雲かと思ったものは、蛇のように波形を描きながらこちらへと向かってやって来る。

 瞬く間に彼の心は戦士に立ち戻り、生気を甦らせて外壁をヒラリと飛び移った。そして最も高い見張り台を目指す。

 その見張り台にいたのは4人の衛兵で、彼が来た時にはもう白い魔物に気づいていた。ここにはまだ魔術師の連絡が届いていなかった。最も高いだけに、最も遠い位置にあるのだ。

「――――――あれは何だ?!!」

「――――――わかりません! とにかく大きい!」

アーサーの指示で警報弾が発射された。各見張り台に設置されている花火で、筒から放たれた玉は城の上に昇ると弾け、3度爆発した。音を発する為の花火なので、よく響くヒステリックな破裂音が城下に轟いた。聞き慣れぬ音であるが、これが全軍警戒態勢を促す合図である。

アーサーはその見張り台から身を乗り出し、目に付く衛兵達に指示を与えた。

「――――――魔術師と弓兵を配置させろ!! 空から来るぞ!!」

デルフィーからの知らせを間接的に受け取っていた者も、あの警報弾を聞いて上官直々に命を受けると、本当のところは危機にあるのではないかと思い、すぐに警戒体制に入った。やはり、慣れの方が優先されてしまうのだ。


 城内でも、連絡の達している所と届いておらぬ所が斑になっており、そこに警報弾が響いたものだから、騒然とした。

 通路を走りながら警報弾を聞いたフィンデリアは、知らぬ兵が警戒したのだと思い、慌てて見張り台のある上階へと方向転換して駆けていった。


 白いものはあっという間に近づいて来た。さすが空を往く者の速さだ。そして、魔物の正体が見たこともない竜であることも判った。この大陸に竜はいないから、皆が息を飲む。

「あれは……竜……!!」

しかし、その竜はふいにこの城への直進を止めて少し速度を落とし、城下街をぐるりと回った。そして旋回を続ける。

 この距離では矢も魔法も届かないから、アーサーは配置についた者達に待機命令を出した。

「一匹か……! 来れるもんなら来てみろ……!!」

そして旋回を続ける竜を見ているうちに、その頭に騎手が乗っていることに気づいた。

「誰か……乗ってます!」

「あれが……竜騎士ってやつなのか……?!」

見張りの衛兵は明らかに肝を潰していた。世界各国から魔物の情報はいろいろと入ってくるし、過去の被害例から魔物の中でも恐怖の対象に序列があるのだが、ヌスフェラートを除外すると、竜と竜騎士というのが両方とも特に恐れられていた。つまりは、竜が恐ろしいということだ。

 最悪最恐の敵が自信満々に単騎で乗り込んできたのかと思い、アーサーは怒りを感じた。

 いくら竜騎士だからって、たった一騎でこの国が落とせるとでも思ったのか? ナメるんじゃない!

 彼は肩を怒らせ、国の守りを剣に誓った。だが、いくら意気込んでも相手が攻撃の手の届く範囲に入ってこない。

 今では旋回の速度を更に落とし、騎手がジッとこちらの様子を窺っているのがよく見えるほどにまでなっていた。

 ふと、白い風が流れてきて彼の頬に触れた。光の粒子を含んだ、白い風。懐かしい風。

 彼の呼吸は止まり、振りかざした剣がゆっくりと下げられていく。その様子に、他の衛兵も注目した。

 皆が緊張して静まり返っていたから、そこにフィンデリアの声がよく響いた。

「――――――待って!! 待って!! あれは敵じゃないわ!! ソニアさんよ!! 攻撃しないで!! 攻撃しちゃダメ――――――っ!!」

それが裏付けとなり、彼は剣を取り落とし、見張り台の縁に歩んでいった。フィンデリアはこの最上の見張り台に現れ、尚も叫び続け、目につく限り他の見張り台の兵にも弓や杖を下げるよう言った。

「ああ! 連絡が遅れてしまったのね! アーサーさん! 先程使者が来て、ソニアさんが竜に乗って帰って来るという知らせがあったの! あれはソニアさんよ! 早く警戒を解いて!」

アーサーはブルッと体を震わせて、それから下に向かって叫んだ。

「――――――武器を下げろ――――っ!! オレが命ずるまでは体制に入るな――――っ!!」

部下達は戸惑いつつも、了解して弓や杖を下げていった。

 それを認めるとフィンデリアが自身の杖を天に掲げて、その先に照明の星を生み出し、右に左にとゆっくり振った。伝わるかどうか判らないが、もう安全だということを示したかったのだ。

 そうすると、距離を開けて旋回していた白い竜が徐々に近づいて来て、それでも様子を見ながらゆっくりと距離を詰めてきたのだが――――――やがて、最上の見張り台の脇にやって来た。もう、飛べば移れる距離だ。

 竜という生き物のなんと大きいことか。それに圧倒されつつも、アーサーは騎手の方ばかりを見ていた。

 青白い輝きを放つ鎧を全身に纏っている騎手は、白い竜の頭を撫でてから頭上で立ち上がり、それからジャンプして見張り台に飛び移ってきた。鎧のパーツが噛み合う金属音をさせて騎手は軽やかに着地した。

 呆然と人々が見守る中、ソニアは兜を脱いで顔を出し、ルピナス色の髪を風に靡かせた。

「ああ……ちょっと早かったみたいね。ゴメンなさい、警戒させちゃったね」

ソニアは城の上空に警報の煙が上がっているのが見えたのでそれを知り、暫く距離を開けて様子を見ていたのだ。

 そして、すぐそこにフィンデリア姫がいるのに気づき、ソニアは顔をパッと輝かせた。

「――――フィンデリア姫! どうしてここに!」

姫は息を切らせながらも笑顔で答えた。

「長いお話は、まぁ後で。何はともあれ、ご無事で何よりですわ! 知らせはちゃんと来たのですが、ちょうどゴタゴタしていたみたいで……」

「私も、貴女が無事で良かったです!」

先に見知った女同士の会話をしていたので、その後でソニアはそこに硬直しているアーサーに気づいた。信じられないあまりそこで立ち尽くしている。トライア兵は皆そうだった。

「ただいま! やっと戻れたよ!」

アーサーは目を涙ぐませ、そして唐突に飛びついてきた。あまりの勢いにソニアの方が驚き、「ワッ」と言った。

 アーサーは絞め殺す気かというくらいに強く強くソニアを抱きしめた。フィンデリアも思わず頬を染めて「まぁ」と口元を手で覆った。

 抱きしめると、見知らぬ鎧の波動に阻まれても彼女の香りと生気が伝わってくる。これは確かに、彼の知っている待ち人のものだった。

「本当に……本当に……お前なんだな……! ソニア……!」

「うん。私だよ、アーサー。ただいま。長いこと留守にして悪かったね」

見守る兵士達も、徐々にソニアの帰還を信じられるようになっていく。

「ソニア様だ――――っ!」

「本当にソニア様だ――――っ!」

アーサーだけでなく、多くの兵が感極まって男泣きを始めた。まるで戦に勝ちでもしたような歓声が城を包んでいく。ゼフィーはそんな人々の様子を興味深げにキョロキョロと眺めていた。

「よくご無事でございました……!」

「お帰りなさいませ!ソニア様!」

「守護天使のお帰りだ!」

 この騒ぎはあっという間に城下街にまで広がっていった。なにせ、城下から見上げても白い竜の姿が見えるし、警報が上がった事実、そしてそれでも戦闘が始まらなかったことが普通の民にも見て取れたからである。こういう吉報を人に教えたくてたまらない人間が城から飛び出して触れ回れば、後は放っておいても尾ヒレがついて広がるのだ。

 ソニアは、ようやく頭を離して顔が見られるようになったアーサーと面と向かい、その顔を両手で包み込んだ。彼の顔はやっと笑顔になり始めているが、まだ酷い顔をしている。上官としてあまりこんな姿は部下に見られない方がいいのではないかと心配になるほどだ。しかし見守る部下の方は甚く共感して、ますます彼に親しみと信頼を覚えていた。

「ずっとずっと、早く帰って来たかったのに、こんなに長くかかっちゃったよ。随分心配をかけただろうね。本当に済まなかった。私がいない間……この国を守ってくれてありがとう」

アーサーはもう一度深く彼女を抱きしめ、彼女にしか聞こえないよう、耳元で「オレは死ぬかと思った」と囁き、笑った。

 あまり長いこと抱き合っているものだから、フィンデリアまで笑い出す。

「さぁさぁ! 国王陛下にお早くご報告なさいましよ! お待ちかねですよ!」

兵士達もそうだ、そうだと促した。あれほど心痛めていた王を早く喜ばせたい。

 ソニアは、目についた兵に飛竜ゼファイラスのことをよく説明し、まずはこの飛竜が休める場所の確保と誘導を願った。この問題がきっちりと解決できないと、王室にも行けないのだ。そしてゼフィーに、彼等の指示に従って移動し、案内された場所で休むように言い、納得してもらった。

 それから、アーサー、フィンデリア、カルバックス等と共に王室へと向かった。

 その時である。何処からともなく青い小鳥がやって来て、ソニアの肩に止まった。

「あら?」

青い鳥は暫くジッとソニアの顔を見つめると、やがて離れて窓辺の方に移った。その視線や仕草から、ソニアはあの小鳥の正体を察し、ニコリと笑った。どうやらセルツァも到着したようだ。あんな可愛らしい動物に変化するなんて、いかにもエルフらしい。いきなりずっとくっついていると人間に怪しまれるから、距離を置いて見守るつもりなのだろう。

 進む通路の先々で、ソニアは熱狂的な歓迎を受けた。

「――――お帰りなさいませ!」

「――――お帰りなさいませ! ソニア様!」

彼女のファンであった女官達も大泣きだ。この分では、逸早くお祭騒ぎとなるだろう。誰もが仕事の手を止めて彼女の姿を拝むことに夢中だった。

 城下街でも、神に感謝の祈りを捧げ、祝杯を上げ、歌えや踊れやの湧きかえりぶりだ。城の上で浮かびながらそんな様子を眺めているゼファイラスは、人間とは小さくてやかましい生き物だなぁ、と思っている。悦びのパワーが伝わってくるので嫌な気はしなかったが。

 新聞屋が早くも城の門を叩き、情報を得ようと躍起になっている。あんな巨大な竜との帰還というセンセーショナルな出来事の真相を、一刻も早く国民は知りたがっているのだ。それを叶えてやる使命が彼等にはある。

 我等が守護天使は、竜を従える騎士になって戻って来た。我が国は安泰だ。人々はそう喜び、皇帝軍への恐れがこの時ばかりは何処かに吹き飛んでしまった。

 ソニアは人々の歓声を受けながら、王室への道を歩んだ。どんなに彼女と言葉を交わしたくても、皆が、まず国王に引き合わせてやらなければという意志を持っていたので、彼女の行く道を塞ぐことなく先へ行かせた。

 ソニアも、ようやく国王に会える喜びで胸が膨らんでいた。どんなに心配し、会いたかったことだろう! やっと、やっと、願いが叶うのだ。

 大きな旅を終えて祖国に辿り着き、ゆっくり休みたいところであるが、この分では当分の間はそういうわけにもいかないだろう。皆に、沢山話して聞かせなければ。フィンデリアにも、カルバックスにも。

 まずは国王だ。国王に会って、それから全てが始まる。国王に……

 ソニアは無事の帰還をトライアスに感謝し、この城独特の石の香りを噛み締めながら、慣れた回廊を進んでいった。

今回で長い第3部が終了しました。

第1部が成長物語、第2部が大戦開始後の対応、そしてこの第3部は『已む無い事情で彼方に飛ばされた主人公が懸命に帰還を目指して旅をする』という内容でした。


その昔、この第3部を書いていた時に「凄く帰りたいのに、なかなか帰れないって面白くない?」と思いながらやってましたが、遥か昔にホメーロスさんがやってらしたと後で知って「これが『日の下に新しきものなし』か~」と笑ったのを思い出します。

いや、別に新しいことをしようと思ってたんじゃないですけどね。

逆にあんまり昔の人だから「すんごいな」と感銘を受けました。

この第3部の思い出に纏わる余談です。


次からは第4部です。

お楽しみいただければ幸いです。

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