悪役令嬢?
「いいの、アンリわたくし達は姉妹ですものね。どうして落ち込んだのか聞いてもいい?」
「はい。わたくしラルフ様との将来を考えてみたのですが、第二夫人を娶るだろうと思うとどうしても気になりまして。」
(もう一つ気になることはここが乙女ゲームの世界だということ。わたくしを模した彼女を排除したことによってゲームの強制力が働いてわたくしがヒロイン枠に戻ってしまったのでは・・・。こうも立て続けに声がかかると不安になります。)
「アンリ、政略結婚だとしても第二夫人・愛妾はなかなか受け入れられることではないわ。 貴女の心のままに進んだほうがいいと思います。」
「そうですね。お断りしました。宰相職を司る一門の方ですもの。わたくしの我儘を聞いて欲しいとはいえません。お姉さまは殿下とはその後どうですか?」
「え・・・?」
お姉さまの白い頬にぱっと赤みがさし、動揺しているようです。
「あのね、またお昼をご一緒しているでしょう。今まで家族のように小さい頃から顔を合わせていたのに、雰囲気が違うの。だから正直戸惑っているわ。」
「雰囲気がですか?」
お姉さまの髪がさらさらと肩から滑り落ちるほど動揺していますか・・・。
「甘い雰囲気のような。アンリとお昼を一緒していたとき、ご友人の婚約者の方達も交えたでしょう。殿下がその話を聞いたとき穏やかでいられなかったそうなの。」
「それは嫉妬なさったからでは。」
わたくしはにんまりと口角を上げてお姉さまを見つめます。
「アンリ、貴女悪い表情になってますわよ。」
お姉さまがふふふと小さな笑い声をあげました。
「殿下の近くに女性が寄ってきてたことがあったでしょう。あの時わたくしも胸が苦しいときがありました。 それは殿下を思う心があったから苦しくなったのですね。それをあの方も感じたからわたくしにこれからは女性を近づけないと申してくださりました。」
(殿下、進展してますね!お姉さまいい顔してますわ。)
「あの日あの女性とお話ししたのです。領地から出てきて、学園に通いながら結婚相手を探していたそうですの。わたくしを模してあの姿をしていたそうですのよ。ひどいですわね。」
「そうなの。いろいろ思うこともありますが、殿下は上にいる方として人々の話を聞いたつもりだったと言われたのでわたくしも信じてついて行きますわ。」
「わたくしと彼女が二人並んだとき、ピンクが二人!?みたいな顔をされていたから、そのくらいの認識だったのと思いましたわ。」
「アンリ、不敬ですわよ。」
お姉さまと二人顔を見合わせて目だけで笑いました。
※※※
次の日学園に行きましたら、 「アンリ嬢。」と呼び止められました。
振り返りますと、短めの赤い髪が煌めく麗しの方がこちらを見つめていました。
黒いドレス姿がとってもよく似合う、男装の麗人のようなパンセ様。
「アンリ嬢、ちょっといいだろうか。」
「パンセ様・・・。」
パンセ様は目が蕩けるほど美しい顔を向けて、ついてきなという風にくるりと翻ると歩き始めました。 周りに声が聞こえない庭園までくると、にっこりと笑ったパンセ様が・・・
「あのさ、ラルフと恋仲になったんだって?」