第八話 幼馴染と調理
調理場へ到着したサナ。
彼女以外にもう一人、料理の準備をしている者がいた
「あっフーゴ!準備してくれてたの?」
「おう、そろそろ来る頃だと思ってよ。」
「流石、気が利くね。今日は海鮮丼作るよ」
「ゲッ......生魚かよ」
「嫌なら食べなくていいよ?すっごく美味しいのにな.....勿体ないなぁ」
「ごめんなさい、謹んで頂戴致します。料理もいつも通り手伝わせていただきます。」
「よろしい」
彼はフーゴ。
私とは、前世界でいう小学校くらいからの同級生で、今に至るまで一緒にいる幼馴染というやつである。
昔から周りの人のために無理をして、生傷が絶えない類のお人好しである。
2年前くらいだろうか、私も魔物に襲われたときにフーゴに助けられた事があった。
その時は彼も戦う力を持ってなくて、私を逃がすため、つまり身代わりになるために身を挺して守ってくれたのだ。結果、彼は魔物に一方的に蹂躙されて、もうダメだ.....と思った所で、偶然、赤風のギルドマスター、ローゼンさんに助けられた。
あと少しでも助けが遅ければ死んでいただろう、という状態にまで陥ったフーゴを、ローゼンさんが治療を施してくれた。今では体も、五体満足で完治している。
その事件以降、フーゴがマスターの事を「俺の英雄なんだ、あんな人になりたい」と言いながら、健気に追い続け、結果努力が認められて、今では赤風のギルドメンバーとなっている。
私はフーゴが心配で一緒に入団した。マスターからは荒事からは離れる、関らない、といった約束の元ではあるが。(少しだけど、戦闘訓練はフーゴにつけてもらっている。といっても護身術メインで教わっている状態だけど)
そんな過去を思い出しながら微笑ましいやり取りをしながら、魚を捌いていく。
米は予めフーゴが用意していてくれたので、ご飯の上に海鮮物を載せていくだけだ。
私自身、料理は下手ではないけど、上手といった類ではない。そつなくこなせる程度のものだ。
ただ、この世界では私の作る料理は珍しいものに映るらしく、驚かれることも多い。
まさに今、文化のギャップというものが起きている。
「うわー。見た目やばいな」
まるで危険物を見るような視線を海鮮丼に送るフーゴ
「そうかなー、海の宝石箱やーって感じだよ」
「なんだそれ」
「うふふ、こっちの話」
前世界での決め台詞なんて、通じるわけがない。
鳩が豆鉄砲食らったような顔をしているフーゴを見て、少し微笑んでしまう。
「たまに変なこと言うよなサナ」
「一言多いよ。.....一先ず完成かなー。醤油は各々好きな量かけれるようにテーブルに置いておこう」
「了解!」
「あとは昨日作っておいた味噌汁をセットで出すよ。よし、これに海鮮丼を置いて.....フーゴこれ運んで!」
「よしきた!」
完成した4人分の食事をテーブルに運ぶようにフーゴに頼み、食卓に全員分の食事が並べられる。
無事、簡素ではあるが夕飯は完成した。後はみんなを呼ぶだけだ。