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白い旋律と黒の魔獣  作者: ノイノイ
始まり
7/9

第七話 ギルド「赤風」

大聖堂での仕事以外に、もう一つ請け負っている仕事がある。

所属しているギルドのお手伝いをする....野球部でいえばマネージャーのような立場の仕事である。

まさに、今、私はスーパーでギルド全員の胃袋を満足させるべく、食材を調達している。


「今日は、おっ!海鮮コーナーが特化セールなのかー、よしっ買いだね!他には....」


配属されてから大体半年程度過ぎている、仕事も慣れてきて、料理の腕前も上達したし、家事は一通り卒なくこなせるようになった。

最近は料理のレパートリーが増えてきて、調理中の楽しさ、というものが理解できるようになってきていた。

今日は海鮮丼を振舞おうではないか!

いいね私、女子力上がってきてるよ!


一通り買い物を済ませて、スーパーを後にする。

スーパーからほど近い場所、2階建ての少し小さめの洋館の前に到着した。

黒曜石に似た材質で作られた看板には「ギルド 赤風」と刻まれている、サナの所属しているギルドだ。

少し嵩張った食材を抱えながら敷地へ立ち入る所で、後ろから声をかけられた。


「おいおい、大丈夫かよサナー、ほら、持つから全部貸しなよ」


振り向くとギルドのメンバーである、カイルが居た。

いつも周りに気を配れる好青年で、笑顔が素敵な人。

体は毎日鍛えてるのであろう、引き締まった無駄のない体系をしている。

腕を組みながら、ニコニコと無邪気な様相のまま、私に手を差し伸べてくれた。


「おっカイルありがとー!じゃあお願いしようかな....今日も依頼来てないんだ。」

「ああ、まったく平和なもんだぜ!こうも仕事がないと、いい加減体が訛ってくるっての」

「あはは、元気だね!平和って良いことじゃない......」


平和の単語をトリガーに今日の出来事を思い出す

少し不安な表情をしてしまったかもしれない


「そうだけどよー......ん?」


溜息を漏らすカイルに対し、苦笑しながら諭すサナ。

平和なのは良いことっていうのは本音ではある。

けど、それだと成り立たない仕事もあるというのはわかっている。

ギルドも、全部とまではいかないが、魔物討伐や用心棒、防衛戦線の協力等、戦闘全般の仕事が結構な割合に含まれている。収入という意味では今は厳しい状況なのは間違いない。


「お前、今日何かあったか?」

「顔に出ちゃってた?」

「声色、あとは顔だな」

「さすがカイルだね。ちょっとね....今は言わないでおくよ。後でマスターに報告するつもりだから」

「ああ、なるほど。」


苦笑する私に対し、少し心躍っているように見えるカイル。私が聞いたあの言葉....

もしかしたら重要な事件と結びついている可能性がある。


私の言葉から察したのか、そこまで深入りはしてこなかった。






カイルと談笑しながら、館内へ向かっていく。

先ほどまでの荷物がない分、楽になった足取りでギルド赤風の本拠地、洋館前に着く。扉を開けた先、館内入口近くに設けられた憩いスペースに、ギルドマスターのローゼンさんが待機していた。

マスターも私に気づきこちらへ目を運ぶ、眼が合ったタイミングで軽く会釈をして、挨拶をした。


「ローゼンさん、お疲れ様です。今から食事、準備しますね」

「ああ、宜しく頼むよサナ。」


威風堂々な外見とは裏腹に、人に優しく、周りに気を遣ってくれる第二のお父さん的な人。

かなりの実力者で、巷ではローゼンさんの剣撃で海が真っ二つに割れたとか、天候を操った所を目撃した人がいるとか、根も葉もない噂が飛び交っている....噂だよね?本当だったら人間やめていると思う。


「それと、今日も演奏お疲れ様。心に響く良い音だった。」

「ふふ、ありがとうございます。今日はここ数週間の中でも一番調子が良かったですからね。この子の機嫌が良かったのかも。」


そう言いながらフルートを取り出す。

あくまで厨二病ではない、ということだけ伝えておく。

楽器を見せながら「こいつは俺の相棒だ」とか言っちゃうタイプの厨二タイプは私もNGである。

実際に楽器にコンディション、つまり調子があり、調整を怠ると音色が変わってしまうので、毎度気を遣っているのだ。

そんな私を見るや、ローゼンさんは苦笑しながら私の頭を撫でてくる。


「....全く、お前というやつは」


撫でてくれる手も、顔も、声も優しい。

でも、なんか呆れられてる感じがすごい。

.....私、何か変な事言ったかな?


「まあ、いいさ。今日の料理、楽しみにしてるぞ。」

「あ...はい!任せてください!」


マスターと話し終え、軽快な足取りで調理場へ向かった。

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