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ライバルの多い恋に勝つ方法

 友人の双葉が、「絶対に恋に勝つ方法があるの」と言って来た時から、わたしは不安を抱いていた。

 何か変な事を企んでいるのじゃないか?と。

 彼女は幼稚な発想で周囲を驚かせる事が度々あるのだ。

 わたしのクラスには、九条君というイケメンで金持ちのモテ系男子がいる。当然の事ながら狙ってる女生徒は多く、双葉もそんなうちの一人だ。

 ただ、どうして彼がそんなに人気なのか、いまいちわたしには分からない。確かにカッコイイとは思うのだけど、少なくとも女生徒達はあまり彼と話した事がないはずだ。男生徒の間では、(まぁ、これは仕方ないのかもしれないけれど)それほど人気はない。

 彼をそんなに知らない女生徒達が、外見からの想像だけで勝手に理想的な九条君像を作り上げ、その幻のような九条君に恋をしてしまっている…… わたしにはそのように思えていた。

 つまり、実態がないのだ。

 だがしかし、わたしの友人の双葉は並々ならぬ執念をこの恋に燃やしていた。あまり話した事がないのだから、九条君自身に執着するのはおかしい訳で、だから多分、彼女のその執念は「他の女生徒達に勝って、自慢がしたい」とか、そんな想いからきているのじゃないかと思う。

 

 「黒宮さんを頼ろうと思うの」

 

 “ふふふ”と笑いながら彼女はそう言った。黒宮さんというのは同じクラスにいる女生徒で、呪いが使えるという噂があるのだ。

 「彼女に呪ってもらって、ライバル達に彼を諦めさせるようにしてもらうのよ」

 わたしはやはりそんな事かと頬を引きつらせた。

 そんな馬鹿な事ができるはずがない。私はそう思っていた。そもそも、黒宮さんが呪いが使えるというのは飽くまで噂で、そんなものが存在しているはずがないのだから。

 ところが、どっこい。

 「できるわよ。

 でも、お金ちょうだいね」

 と、黒宮さんはあっさりとそう応えたのだった。

 「できるの?!」と、それにわたし。はっきり言って信じられない。

 「そんな便利な呪いがあるの?」

 ところがそれに彼女は「呪い?」とクエスチョンマークを伴った声を上げたのだった。

 「呪いなんかかけないわよ。てか、呪いって要はネガティブキャンペーンよ? “人を呪わば穴二つ”って言うけど、そんな事をしたら、こっちが悪者になっちゃう。絶対に嫌よ」

 それにわたしは「なら、どうするの?」と問いかけたのだ。

 すると彼女は「んー 多分、こーいうのは憑き物を落とすってのに近いと思うな、私は」などとそんな謎の返答をしたのだった。

 なんだかよく分からないけど、双葉は「やったー」とそれに喜んでいて、前金まで黒宮さんに支払ってしまった。

 もし上手くいったら、残りも支払うから、と。

 多分、バイト代とお年玉なんかを使ったのだろうと思う。けっこー、馬鹿にできない額だ。

 

 それからしばらくが経って、九条君を好きだった女生徒達は、本当に彼を諦めてしまった。

 双葉はそれに無邪気に大はしゃぎで喜んでいる。

 ただ、わたしは不思議で堪らなかった。一体、どんな術を使ったのだろう?

 ところが、そんな風に不思議がっているわたしに対し、黒宮さんは面白そうにしながらこんな事を言って来るのだった。

 「別に不思議な事なんて何もないわよ」

 「不思議はない?」

 「そう。だって私、彼の本当の姿を女生徒達に教えてあげただけだもの。あなただって知っているでしょう? クラスの女の子達は、彼とほとんど話した事がないのよ?」

 わたしはそれを聞いて、口を一文字に結んだ。

 それって、つまり……

 「双葉はそれを知っているの?」

 わたしは大きく溜息を洩らしながら、そう言った。黒宮さんはカラカラと楽しそうにこう返す。

 「知る訳ないじゃなーい。

 でも、そのうちに気が付くと思うけどね。ま、良い薬になるでしょ。呪いで恋に勝とうなんて邪な事を考えちゃダメよ。あのお金は授業料みたいもんってことで」

 確かに、自業自得みたいなもんかもしれない。

 

 しかし、一気にモテ系男子の座から滑り落ちる九条君の本当の姿って一体……

 

 ちょっとだけ、わたしはそれを知りたくなってしまった。


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