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69 漆黒に染まる、偽りを許さぬ紙

「じゃあいっそうあたし無関係じゃないか! ルフィア姫以外全員死んだんでしょ!? 確かにとーちゃんはあたしみたいな髪の毛で、桃色の目をしていたってかーちゃん言ってたけど、つじつまが合わないじゃないか!!」


話を最後まで聞いた結論はそこになった。おかしいじゃないか。

あたしも途中までだったら、ルフィア姫と何かしらの関わりありそうだな、と思ったよ。

山猿のようだったと言うとーちゃん。

山奥で暮らしていたというルフィア姫。

どっちも桃色の髪の毛に桃色の瞳。

とーちゃんはかーちゃんが山奥で出会ったって言っていたし、もしかして親戚かな、とか思ったよ。

でもルフィア姫以外の村人、流行り病で全員死んじゃったんでしょう。

そうしたら、とーちゃんの存在がとてもあり得ない存在になってしまうじゃないか。

でもあたしは、その娘としてちゃんと生きているんだし、幽霊でも何でもない。

あたしの主張は彼等にとっても理解できる物だったみたいだ。


「でも顔がそっくりなんだよな……」


「眼の色だけ変えたら、ルフィア姫そのままなのよね……」


「だが、あんな登るのも馬鹿らしいほど険しい山奥の村から、どこかに婿に行く男がいるわけがないだろう、男手が足りないなんて、ああいった山では問題だ」


「……やっぱり、ここは詳しい事情を、この子のお母様に聞いてみる方が早いんじゃないだろうか」


腕組みして考えていた人が言う。


「この子の母親に? 確かに、夫との出会いとか詳しい事情とか、いつ出会ったのかとかによれば、その男性は村に病が流行る前に、こっそり出て行ったとかもあり得そうだからな」


「とにかく、あなたはその足の怪我がちゃんと治るまでは、ここできちんと治療を受ける事。それが出来ないんだったら、魔法の枷をつかってしまいますからね!」


「魔法の枷まで使う人がいるの?」


「苦い薬が嫌っていう人が一定数いるのよ、おかげで枷で動きを封じて、口を開かせて飲ませるほかない人とかね」


女の人が、困ったものだ、と言いたそうに肩をすくめた。

そして、机の上からいくつかの用紙を持ってきて、あたしの前に座った。

他の人はと言うと、仕事があるとか呼び出しを受けたとか言って、次々と部屋から出て行く。

あたしと女の人の、二人きりにされたのだ。


「これは偽りを書く事が出来ない魔法が込められた用紙よ。あなたが喋ったことが正しかったら、文字がそのまま浮かび上がるわ。でもあなたが嘘を喋ったら、その部分が焼けこげるようになっているの。……あなたのことを聞いておいてほしい、と言われているの。協力してくれる?」


「あたしの事を?」


「ルフィア姫を見た事がある貴族とか偉い人の一部が、ルフィア姫の再来だ、とか盛り上がってしまっているらしいのよ。だから上司が王へ報告するために、あなたのことを聞いておくように、と私に言ったの」


「じゃあ、出来る限り協力します」


どうせ紙に全部真実が出るのだから、女の子の事情を聴かない配慮をしてくれたのかな。

他の人は男の人だったからな。


「ありがとう。それじゃあ、あなたの名前からね……」


あたしは彼女に問いかけられるままに、あたしが知っている事を正直に話した。自分の名前と家族構成、それから両親の名前と今までの事。

最初は優しい笑顔で聞いていた彼女が、次第に怪訝そうな顔になっていく。


「ええと、あなたのお母様はヴィザンチーヌさんで、お父さんがルウィさんなのよね? お姉さんがヴィオラ」


「はい。そう聞いています」


「……お母さんは、北の国で結構なお嬢様で、薬草学の留学に言った経験があるのよね? そちらでお父さんと知り合ったと」


「運命みたいな出会いだったって」


「……」


彼女はしばし沈黙して、あたしの、その、嘘の部分が焦げる紙を見せてきた。

あたしは何も嘘は言っていないのに、知っている事しか話していないのに、あちこちが焦げて穴が開いていた。

信じられなかったから、あたしの口はぽかんと開いた。

なんで焦げるの?


「……非常になんとも言えない物なのだけど……あなた誰かから嘘を聞かされていたのではないかしら……?」


「かーちゃんが嘘を言うもんか!」


「でも、用紙の魔法に例外はないのよ」


「自分の親が嘘を並べていたって言われる方が信じられるか!! かーちゃんが嘘を言うなんておかしいし、実際にここの、かーちゃんが北の国で結構なお嬢様って言った部分の、お嬢様って本当だよ、親戚の家すごく立派だったし、親戚の家たくさんの部下が行き来していたんだから」


もしも親戚じゃなかったって言うんだったら、かーちゃんを従姉だといって、かーちゃんに助けられたって言って、かーちゃんを助けようとしてくれたおじさんは、何者って事になるわけ!? 


「親戚じゃなくて、お母様が愛人だったとか……っ!」


あまりな言い方に、あたしは女の人に掴みかかった。


「言っていい事の限度ってものがあるんじゃないの、お姉さん」


掴みかかった拍子に、その用紙にあたしの指がかすった。そうしたら。

用紙が、一面真っ黒に染まってしまったのだ。

それを見た女の人は、息をのんだ。

あたしを見て、紙を見て、嘘でしょう、と言った。


「これは、魔法が分解された印……。あなた……ルフィア姫と同じ力を、持っているというの?」

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