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31 王様、こういうの困る。

その日の晩御飯は、じゃがいもじゃない料理だった。

なんか色々ごった煮になった料理で、それはそれでおいしかった。パンの屑みたいのが、汁気を吸ってふわふわで、お肉の欠片が付いた骨とか、腸詰の端っことか、あたしの知らない色んな野菜の欠片が入ってた。

そして塩気がちゃんとあって、あったかい。

部屋の中に何があるのか、を確認している時に、入口が開かれて、壺が置かれたのだ。

その壺の中身が、今日の晩御飯だったわけだ。

これは温め直せという事だな、と思って、あたしはさっそくかまどの具合を確かめるべく火を起こし、それを湯気が出るまで温めた。


「これはおいしいな……こんなの毎日? うわ、お城っていいもの食べてる」


大匙で、壺を抱えて食べるあたし。これは明日の朝も食べられるな、と言う事は外に出しておけば凍って保存ができるというわけだ。

よし、どこか窓を開けて、出しておこう。出せなかったら窓辺において凍らせよう。

食べきれなかった分を確認して、あたしは部屋中の窓が、小さくしか開けられない事に落胆した。

そう言えば、陛下はあたしを閉じ込めるって言っていた。

なら、大きく開く窓はないんだ。脱走されたら問題があるし。


「きっとここは……お貴族様用の牢屋?」


あたしは自分で考えて、きっとそうに違いないと思った。お貴族様用の牢屋なら、こんな立派な造りでもおかしくない。

たぶん召使がいたりして、そのために部屋数が三つもあって、寝室だけ鍵がかかるんだ。


「とはいえごちそうさま」


窓を小さく開けて、そこから壺に外の冷気が入るように置く。そしてあたしは、陛下に言われてしまったから、暖かいかまどの上と言う物に未練を残しつつ、寝台に入った。

寝台は羊の毛皮がしいてあってふわふわで、これ高級品だよな……と思う物だった。やっぱりお貴族様仕様に違いない。

おじさんの家だって、羊の毛皮は寝台に敷かれていなかったもの。

そんな風に考えつつ、あたしはあっという間に寝入ってしまった。





朝起きて、土間になっているかまどのある一番大きい部屋にある井戸で顔を洗って、あたしは火を強くしてから、もう一回壺の中身を温めた。

何度も煮込んだ野菜の屑は、やっぱりおいしい。

こんなにおいしいという事は、かーちゃんにも食べさせたい。どこかのお店で、野菜のこういうの貰えないかな。

そんな事を思いつつ、今日きっと来るだろう木の根っこを洗うため、色々準備をしていると、外から扉が開いた。

そして呆気に取られているうちに、どやどやとやってきた集団が、泥まみれの木の根っこをどさっと置いて、ぱっと去って行った。

突風みたいだった、と思いつつ木の根っこを見て、何度も見て、あたしは思わず突っ込んだ。


「全然違う物混ざってんじゃん……」


泥まみれの木の根っこのなかには、明らかにあたしが使わない、つまり食べられない木の根っこが混ざってた。

それもたくさんありそうで、もしかしてあたし、これをより分けるところから始めるの?


「そりゃあ毒にだってなるわな……」


「何がです?」


「あれ、一人残ってた」


問いかけられて、声の方を見ると、そこには昨日の案内してくれた人が立っていた。


「私は、あなたがどうやって作るのかを監視する、役割を命じられましたので。手伝いませんよ」


「より分けるのは、他の人に頼めるものじゃないからいいよ」


「より分け……?」


「うん。これとこれ、食べられない木の根っこ。こっちは食べられる。今から、いつも食べてる木の根っこを選んでいくの」


「同じ植物ではないと?」


「全然違うんだ。匂いとか、手触りとか」


言いながら、あたしは木の根っこの山の前に座り込み、いつも食べてる木の根っこと、そうじゃない物を分けていく。

そこで知ったのは、医者の連中が、殆ど食べられない根っこを持ってきた、と言う事だった。

まさか根こそぎ持って行くときに、見分けがつかなかったんだろうか。

きっとつかなかったんだ。

それで、中に毒が入ってる木の根っこも混ぜたから、薬が毒になったに違いない。


「そう言う理由とか、本当に擦り付けすぎる」


ぶつぶつ言いつつ、あたしは分けていく。やっと分け終えたら、使える根っこはちょっぴりだった。


「こちらが使えるものですか?」


高く積まれた方を指さす男の人に、こっち、と少なすぎる方を指さす。


「……これだけ、間違った物が混ざっていたと?」


「素人判断で、見分けがつかないのに持ってきちゃったんでしょ、時々ある話だよ。ここまで大ごとになる前に、だいたい薬師の所で止まるんだけど」


言いつつ、使える方の泥をこそげていく。

そしてべきべきと、これまでの理不尽に対する怒りをぶつけるように折っていく。

まずは何回か、あくを抜くところからだ。

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