黒いハサミ
ちょっと前に見た夢。
朝起きてテレビをつけると、変なニュースが流れてた。
何者かに鋭利な刃物で、首を切り落とすと言うものだった。
被害者との関係を捜査中とのこと。
「うわー、やだやだ、怖いね~」
家の近くでもないしと、そんな感じで仕事へ行く用意をする。
次の日、テレビではまた首切断事件の報道をしていた。
どうやら新たな被害者が出たようだ。
今回は家屋での犯行らしい。
警察は昨日の犯行と関係がないか捜査中とのこと。
「ようやるわー」
仕事へ行く用意をする。
所詮は他人事。
今一つ興味がわかない。
次の日、テレビではまた首切断事件の報道をしていた。
昨日と一昨日の被害者の遺体の切断面を鑑定した結果、同じ刃物で切断された可能性が高いとのこと。
被害者同士の関係等捜査中だそうだ。
「警察も大変だねー」
テレビを消し、仕事へ行く用意をする。
身に降りかからなければ皆そんなもんだろう。
次の日、テレビではまた首切断事件の報道をしていた。
だが、以前のニュースとは少し違った。
他の県でも首切断事件が発生したようだ。
警察は急いで関連があるのか捜査中とのこと。
「まじか・・・」
仕事へ行く用意をする。
場所が変わろうと、こちらには関係ない。
次の日、テレビではまた首切断事件の報道をしていた。
昨日起こった事件は、同じ切り口や犯行から、同一人物ではないかと推測されているらしい。
「犯人どこにいるんだろう。早く捕まれば良いのに。」
テレビでは、前警視総監と言う肩書きの人間が、犯人のプロファイリングをしている。
興味がないのでテレビを消し仕事へ行く用意をする。
次の日、テレビでは首切断事件の報道をしていた。
また、違う県で被害者が出たようだった。
ニュースキャスターが頻りに、安全確認を促している。
それと同時に警察へのバッシングも行っている。
「こっちに来るとかないよね?」
少しだけ不安にはなるが、仕事へ行く用意をする。
そんな事が一月たった頃。
仕事が終わらず、終電間際で帰宅する。
「はぁ~、疲れた。」
帰路に着いている途中、変な物音を聴いた。
なんだと思い音のした方をみると、黒っぽいローブ姿の人間が何かをしている。
何をしているんだ?
警察へ連絡しようと、カバンの中からスマホを出そうとした矢先。
ーーージャキンーーー
一際大きく響く音に硬直する。
ローブ姿の人間が、こちらを振り返りそうになって慌ててその場を立ち去った。
一瞬目が合った気がした。
「何だアレ、何だアレ、何だアレ!!!」
ローブ姿の人間がこちらを振り返ろうとした時、そいつが何を持っているのかが見えた。
真っ黒な大きなハサミのようなものだった。
そんな事よりも気になる事が一つ。
「見られてないよね?」
次の日、家の近くで首切断事件が発生したと報道された。
信じて貰えるかわからなかったが、直ぐに警察へ電話をかける。
わかりました。警察署へ来て下さい。
そう言われて、会社を急遽休み警察署へ行った。
色々聴かれた。
時間は何時頃か、どうしてそこを通ったのか、犯人の顔はどんな顔だったか、凶器はなんなのか等々。
全部答えられる範囲で答えた。
もろもろの確認等をしていた聴取は昼を大分過ぎてから解放された。
「かなりかかったなー」
んーーーと言いながら、背を伸ばしてコンビニに寄ってから帰宅した。
後は警察に犯人を捕まえて貰えればOK!
その時はそんな楽天的に考えてた。
その日の夜中。
私は人の気配がして目が覚めた。
ベッドの前では昨日見たローブ姿の人間が立っていた。
フードを目深まで被り、手には人の体程大きく真っ黒なハサミを持っている。
それを向けられ、とっさに手で首を隠した。
その後は何故か、一切体が動かなくなってしまった。
そいつは何を思ったのか私の首ではなく、脇の下の肋骨辺りに大きなハサミを開きながら向けた。
へ?そこ切るの!?
叫びたかった。
しかし、口が縫い付けられたように動かず、悲鳴すらあげられない。
ハサミを良くみると、刃には乾いた血や肉片が着いていて赤黒く見えた。
ローブ姿の人間が迷いのない手つきでハサミを閉じようとした。
ぎゃぁぁぁぁ
一度で切断されると思っていた肋骨はなかなか切断出来なかった。
何度も何度も同じ所を切断しようとしている。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
意識を飛ばし、気絶出来ればこんなに痛くなかったのに。
大体、いつも通り首にしないからこんなに痛い思いをしているんじゃないかとローブ姿の人間への怒りがフツフツと沸いてくる。
どうせなら一思いに殺して!と思った。
その瞬間、今まで刃が通らず苦戦していたローブ姿の人間が、にたぁと笑うと、勢い良くハサミが閉じた。
ーーージャキンーーー
昨日聞いた音を聴きながら、私は意識を手離した。
と言う夢を見たのじゃよ。
起きたとき、脇の下の肋骨が痛いのと、不整脈じゃないかと思わせる程心臓がバクバクしていました。