神か悪魔か?ただの幽霊か?異世界にハマって脱出不可能な男の物語
今からお話しすることは、多分信じられない内容だと思う。だから信じようが信じまいが貴方の自由である。
まず、あまり怖くはないだろうが、お盆の時期なので、帰省中に渋滞の車中とかバス、電車の中で読んでもらえば良いかなと思って書いた。
お盆休みの時――いまからちょうど二十年前くらいになるのかなあ?そんな時のちょっと不思議でちょっぴり怖い体験を聞きながら、出口の見えない真っ暗な迷宮を彷徨いながら怖い恐~~い世界にズッポリとハマってください………………な。
なお、ここで書くことはすべて実際に体験し、現在進行形の話であることを理解して頂きたい。
音声は稲川淳二バージョンでよろしく。
準備は良いかな……怖……恐……幽……霊……
祖母が亡くなった。
(おっとこれはもしかしたらお盆とは関係ないかも知れない。記憶不詳)
――つらい時も悲しいときもいつも一緒だったおばあちゃんだった。
よく覚えているのが、祖母が慰安旅行に行って帰ってくると、必ず同じおもちゃの双眼鏡を買ってくることだった。最初は嬉しいが二年三年と続くと嬉しいわけがない。でも、おばあちゃんがちょっと照れくさそうに目をあっちの方向に向けてそれを差し出すと、要らないとも言えずに、ただ「ありがとう」と言って受け取った。幼ないながらもこれが祖母の精一杯の気持ちなんだなと嬉しくもあった。
今思えば、自分の小遣いを削ってなんとか工面した双眼鏡なのだから、その分気持ちが入ってんだなあと懐かしく思う。
その祖母が危篤状態になった日曜日のことだった。 俺と妻とネコ三人?で、何もすることもなく昼寝をしていた時だった。まったく夢の中だった。
いきなり部屋の空中で『パチーン』と、外にも漏れ聞こえそうな音がして「ハッ」となって目を覚ました。と言うか三人とも同時に跳ね起きた。俺も妻も猫でさえ目をまん丸くして、何が起こったのかとお互いに見合わせ辺りを見回した。
ネコの驚いたというか、この世の終わりのようなまん丸な目は、今でもハッキリ覚えている。
そして、たぶん俺も妻も同時にある考えが脳裏を過ぎったのだ。
「ばあちゃんだ!」二人そのまま大急ぎで家を飛び出した。猫に留守番を任せて。
実家は家のすぐ近くだった。もう死んだか?と、焦燥の思いで走った。
実家に駆け込むと真っ直ぐ祖母の寝ている座敷へ入った。
「お婆ちゃん!」生きているのか、死んでいるのか?
間にあった。祖母は一瞬目をぎょろりとさせ、おそらく最後のこの世の景色だったのかも知れない。おばあちゃんもきっと最後に俺を見たかったに違いない。
妻もいっしょに最後の老人をのぞき込んだ。もう、顔も満足に動かせず、笑うこともできなかったのかも知れない。そのまま目を閉じ二度と開くことはなかった。
あのラップ音を発して私たちに知らせてくれた存在が誰であったのか、今になってようやく解ってきたがそれはあとで話すことにしよう。
俺はほとんど霊感がなく、ラップ音を聞いたのは、あとにも先にもこの時と、かなり前になるが神主時代の除霊のお祓いの時だけだ。
これも今から数えれば四十年ほど時を遡るだろう。
僕はあのころ神主をしていた。ちょっと変わった経歴ではあるのだが、その日、変わった依頼があって、電話を受けた巫女さんが言うには、とある家で何かがあったらしく、怪異現象が続いているので困り果てた家人がお祓いして欲しいと言うことだった。記憶がすでに欠落していて、何かその家に事件があったらしく死者が出たらしい。
僕はもちろん神主の格好で迎えに来た車に乗り、祭壇やらお供え物を積み込みその家へと向かった。もちろんまだ新米神主で経験も浅く、いきなりこの厄介なお祓いだ。しかしいやだとも言えない。緊張する面持ちでその家に着いたのだが、何のことはないただの小さな平屋のアパートだった。
しかし中に入ってみるとやはり異様な雰囲気と、言いようのない空気がに満ちた空間だった。
だいたい除霊なんか初めてやるし、神主学校でも習ったことはなかった。基本、神社というものは神さまにお供え物を供えて毎日、氏子・崇敬者さんに代わってお祭りを行うというものなので、形相凄まじく怨霊退散とかやるのとはちがう。やれと言われればただ祝詞を読んでバッサバッサとお祓いをするだけである。特別な修行とかやり方などあるわけがない。
〈また当時、ここだけの話ですが、神さまとか信じてなかったんです。なのでお祓いが効くかどうかなどまったく自信が無く、ええいままよ、という感じでした〉
僕は逃げるわけにもいかないし、こうなれば意やるしかないと、一番長ったらしい大祓と言う祝詞を読んだ。後ろには当事者のご家族の方も座っている。
その時だった。僕の真ん前の宙空で、まったく同じように『パチーン』と言う大きな音が鳴ったのだ。
心臓が止まるかと思うほどだったが、怖いと言うよりも何かこう、清々しい感じがしたのだった。しかし実際、見えたわけではないが、見えないことが恐怖であり、その限りなく長い時間の戦いが終わった時、喉はカラカラで全身冷や汗つゆだくの状態だった。
――心のどこかで、終わったのかな、もしかしたら成功?と言う思いがあった。不思議であった。
またお盆にもどる。
この体験は『お婆ちゃんパッチン事件』と相前後する数年間での出来事だ。あの当時は結婚もして子供も生まれて、人生で一番充実していた頃だった。
やっぱりお盆の時期で――
二階の寝室で書き物をしていると、玄関のドアを開けて誰か入ってくる音がした。
お客さんかな?と思って玄関に行ってみると誰もいない。妻に聞いてみると、やはりその音が聞こえたと言うので、自分だけの幻覚ではない。おかしいなと思ってあちこち部屋を探して見たが、誰も来た形跡がなかった。
不思議だなあと思って部屋に戻りしばらくしていると、今度は浴室でシャワーをする音がした。
間違いなく誰か来ているな、でも一体誰なんだ?と浴室を覗いてみるとまたいなかった。
「今シャワーの音がしたよね?」と問いただしてみると、妻も確かに聞いているのだ。
これ以上なにも起こることはなかったが、まったく首をかしげるばかりだった。
なんだかホラー話のようだが、夏の昼間のことでもあり不思議と怖くはなかった。きっとご先祖さんが帰ってきて、汗ばんだ身体を流したんだなあと、不思議に笑みがこぼれたのだった。お盆は不思議なこともあるもので、それが日本の夏であるのかも知れない。
書きながら次々とかつての思い出がよみがえってきて、時間軸があっちゃこっちゃ跳ぶ。ご勘弁を……。
俺は今、実家から離れて東京にいる。実家は伊勢神宮のある三重県だ。あれこれバレてしまうが、実体験なのである程度しかたがない。伊勢であるというのもキーポイントであるし。
さて、仕事がなくなり生活に慣れた伊勢とも離れ、東京に行くことになった。はじめはなかなか仕事が見つからないのでマックでアルバイトをする羽目になった。そこである大学生の先輩ともめることになった。こちらのほうが年上だが、仕事上ではあきらかに勝ち目がないので悪いのは自分なのだが、当時はカッカ来ててぶっ殺してやるとか思った。昔から中国拳法をやっていて、本気になるとちょっとヤバいんです。ヤバい技を知っているので。
その感情がピークに達したある夜――心底ぞ~っとする恐い夢を見た。
ちょうど寝ている宙空にお婆ちゃんがいた。それも普通にいるわけではない。葬式の時に今生の別れとして最後に見たその時の光景そのままだった。
祖母の顔だけが空中に浮かんでいた。あまり安らかな顔とは言えなかった。しかも、鼻には真綿が詰められ医療用のチューブが出ていた。それがかえって痛々しく、もう死者の国の人なんだなあとつくづく思い悲しくなった。
目は開いていないが、その祖母が宙空より見下ろしている格好だった。それが凄い恐かった。
みなさんも感じたことがあるだろうか?普通に怪談話を聞いてぞ~~っとする感覚よりももっとリアルな。心底からゾッとして、まるで死者の国にいてこの世には二度と帰れないあの感覚。
次の日からは仕事中もずっと頭から離れなかった。恐ろしいことが迫っているような、どうしようもない恐怖の感覚。
なんでお婆ちゃんが――なんで――どうして?多分何かを伝えようとして――警告?
そしてハタと気がついた。確証はないがアレしかないと思った。あの先輩との確執で行動に出るな!と言うことなのだ。それを是が非でも警告しようと出てきたに違いない。
祖母はあの晩一度しか出てこなかったが、あれだけで予は万事を察した。
祖母と言えば祖父についても似たような話がある。肉親、あるいは親しい人で死んだ人は他にはいないので、最後に孫の顔を見に来たのだろう。
祖父は高校の時に亡くなったので随分と昔の話だ。
当時実家は長野にあった。それで祖父は山小屋を経営していた。僕にとっても数々の思い出の詰まった場所だったが、山男は山で死ぬというのだろうか?ごく自然に山小屋で息を引き取った。人知れず死んで発見されたのは、数日たってからアルバイトの娘が出勤した時のことだった。
すぐに山を下ろされ――と言っても三合目なので小一時間も歩けば家に着く距離だ――お通夜となったのだが、その日の夜だった。
夜遅くまで大人たちが酒を呑んでいるし、通夜の食事はあまり豪勢ではないので、すぐに食べ飽き寝室へと下がった。
疲れていたのか三十分もたたないうちに夢うつつの世界を旅していた。
いや、完全には寝ていなかった。そのちょうど境目と言えばわかりやすいだろう。
いきなりバシッという衝撃で金縛りになった。
うわなんだ!と思っているとどうも幽霊がいて僕の上に乗っかっている。当時はこういうことに慣れてなかったのでパニック状態となり――しかしまったく身体が動かないし声も出ない。端から見れば苦しそうに身をよじって僅かにうめき声を発していただろう。
「うぅぅ……」僕の声のほうがよっぽど恐かったに違いない。
とにかく怖いし何とかしなければならない。こんな時、昔から攻撃的で決して守りに入ることはなく、攻めに出る性格だった。
全身全霊の力を振り絞って(大したことはないと思うが)念力らしきものを霊にぶつけ、腕相撲に似たような念力合戦となった。
飼ったと言うより、苦しまぎれに無理やり霊の束縛を振り解いて、現実の世界に逃げ戻ったという方が良いだろう。
そしてその時、僕を苦しめていた霊の正体を見てしまったのだ。
それはおじいちゃんだった。僕はおじいちゃんを追っ払ってしまったのだ。
おじいちゃんは苦しそうに顔を歪め、上の方へと消えていった。
その時の様子を冷静に描写すると――まず、霊体は死人というのとはほど遠く、血色が良く肌色のように見えた。全体に上半身を丸めて引き延ばし、そのなかにおじいちゃんが見えるみたいな感じで、苦しそうに僕の身体から離霊界る所だったので、もちろん顔もゆがんでいた。ゴム人形を歪めてさらに捻ったように――とにかく生きているように健康的で明るかったのを覚えている。もちろん部屋の中は真っ暗だったが、祖父だけは明るく昼間のように見えた。
そのころから良く金縛りに遭っているが、まさかおじいちゃんが来るとは思ってもみなかった。
その後、幽体離脱であちらの世界にいった時、祖父は家の裏の畑で一生懸命畑を耕していた。その隣にもう一人いたが誰なのかよくわからなかった。
そういえば、また思い出してしまった。こんどはおばあちゃんだ。
その時、祖母が亡くなって一年たってのことだった。
〈いや、これは大事なことだが、三年くらいたっていたかも知れないし、実はハッキリしない〉
ちょうどこのあたりで、ひとしきりの霊界での修行というか研修が終わるのか、一度この世界にひょっこり現れるらしい。
その時ちょうど工場で夜勤をしていて、昼間暑くて眠れずエアコンが欲しいなあと思っていた。
しかし結婚してはいたものの、収入が少ないしどうしたものかと悩んでいた。
そんなある晩、夢におばあちゃんが出てきた。
俺が寝ているその横におばあちゃんがいた。そして、ななんと、いつの間にか寝室にエアコンが取り付けてあってガンガンに回っているではないか。
祖母はニコニコと、そして嬉しそうに俺の顔を見、とおいうか目があるのかさえわからないほどの笑顔でそこにいた。
そして直感したのだ。そうなんだ、おばあちゃんがエアコンをつけてくれたんだ。そう思った。実際に霊がつけてくれるわけではないのだが、見えないところで大きく動いてくれているのではないだろうか?
実はエアコンを買うのに、まず妻を説得し、お金を持っている義理の父母に頼み込んで買ってもらうしかなかったのだ。
そこでようやく決心して買うことができたのだ。
霊の力は、何もできないようだけど、けっこう大きな力があるもんなんだなと、しみじみ思う。
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